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7

ダンジョンの洞窟を抜けた瞬間、私は思い切り空気を吸い込んだ。鼻に伝わる香りは自然の優しい香り。洞窟の中は生臭いような、血のような匂いもしていたから息をすることがキツかった。


「外の空気は最高だね、リツ!」


「そうだな。」


返事は短くて、愛想のないように思われらかもしれないけど、リツは微笑んでくれている。


──ボンッ


リツは狐の姿に戻ると私を見つめてくる。


「撫でてほしいの?」


「早くしてくれ。」


「はいはい、分かったよ。」


私はリツの前にしゃがんで頭を撫でる。

撫でられているリツは目を閉じて、気持ちよさそうにしている。


(あ…尻尾が動いてる…)


横に揺れ動く尻尾がかわいい。

一度手を止めれば「まだだ。」と言われてまた撫でる。リツは甘えん坊なのか、それとも愛情に飢えていたのか…それはリツにしか分からないけど、こうして甘えられるのは悪くない。


「ねえ、リツ。」


「なんだ。」


「私ね、ここに来て良かったのかもしれない。」


「…なぜそう思う。」


「私はずっと元の世界では一人だったでしょ?私はこの先、その孤独の世界からは逃げられないと思ってたの。」


誰かと楽しく話すことも、遊ぶことも、触れることもできない。私はその現実からは逃げられないと思っていた。いや、確信していた。


「私はリツが封印されていたあの狐の像だけは私の残された家族だった。だけど、返事はないし、頷くこともない。心のどこかでは話しかけても孤独なのは変わらないのに…って思ってた。現実を受け止めろって。寂しかった…ずっと。」


だけど、それが変わったんだよ。


「この世界に来てリツに初めて会ったとき、すごく嬉しかったんだよ。私が話しかけていた狐がこうして動いて、一緒に会話してくれてるって。だけど不安があったのも確か。いつかはリツに見捨てられるんじゃないかとか、リツは妖狐で私は人間。当たり前のように私はリツよりも先に死ぬ。そうなったらリツは私を忘れるんじゃないかって…」


不安だった。

また孤独になる日が訪れるのではないか。

そばにいる人に忘れられるのが。


「でも、それはリツも同じでしょ?私に言ってくれたよね。」


────────────────────


「誰も俺の存在をないものと扱っていた。人間たちに忘れられている間に俺も人間の言葉を忘れかけた」


────────────────────


「リツも私と同じように寂しかったんでしょ…?そして、私をここに連れてきても、離れられるんじゃないかって不安だったんでしょ…?」


リツは私に体を寄せると、頭をグリグリと押し付けてくる。


「リツ。私はね、リツと一緒にいたいよ。たとえ元の世界に戻ることになろうとも、私はリツと一緒にいる道を選びたい…リツ、一緒にいようね…。ずっと…」


「もちろんだ…。お前は俺の妻だ。そばにいると誓った以上、離れることも離すことも許さん。」


リツは私に体を寄せたまま、目を閉じている。

この温もりをずっと感じていたい。


「リツ、第二の層ってどこにあるの?」


「この山を超えた先にある谷だ。名は水龍の層。」


「龍…!?龍が出るの…?」


「知らん。だが、俺とは違い水を使うモンスターばかりだ。俺の狐火は通用しなくなるだろう。」


「どうするの…」


「安心しろ。策はある。」


自信満々に話すリツ。

本当に大丈夫なのだろうか…

水龍の層って言うらしいけど…

龍…いるのかな…

もし、いるとするならば確実にボスだろうね…


──ボンッ


人間の姿に戻ったリツ。


「麗。そろそろ行くぞ。第二の層に行くにはこの山を越えなければならないが、俺も少し疲れている。山のどこかで一度休んで、明日の朝に第二の層へ向かうぞ。」


「そうだね。リツはずっと戦ってたから…休める場所、探しに行こう。」


私たちはとりあえず、身体をしっかり休める場所を山の中で探すことにした。

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