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──グォアアアアアアアア!!!
水龍たちの声が鳴り響く。
水龍たちの間を割るようにリツが光を纏いながら前に出る。
「リツ…気をつけて…!」
「安心しろ。俺は死なない。」
そう言ってこちらを振り向くリツは微笑んだ。
「お前がいる限りな。」
「…リツ…」
ドクンッと高鳴る鼓動。彼の言葉に反応する。
リツの手に持っている狐上の剣が光を取り込んだように光が広がっていく。ボスは牙を剥き、リツへと突進していく。だけど、リツは微動だにしない。
「やれ、水龍たち。」
レイヤ、ツクモ、シンが海獣を包囲する。
行き場をなくした海獣。
海獣は体が大きいせいで動くのは簡単ではない。
しかも包囲されている状況だ。
動きが鈍くなったところだった。
「蒼波・狐斬!」
リツの叫びと共に光を放つ狐上の剣が海獣の体へと振り下ろされる。
すると、さっきまで刃が入ることもなかった海獣の体に狐上の剣が突き刺さる。痛みに悶える海獣。リツは力を込めて剣を何度も振り下ろせば海獣の体を貫いた。
──ドォンッ!
大きな音と共に海獣は倒れる。
「今だ、水龍たち!」
──グォアアアアアアアア!!!
三匹が同時に声を上げれば、水面が揺れ、一つの波が押し寄せてくる。波に飲み込まれた海獣はそのまま、沈んでいった。
ボスがいなくなり、静寂が戻る。
辺りの霧も無くなり、この場所の元の景色を見た。
晴れた青空に澄んだ空気。
これほどまで綺麗だったのかと知れた。
(終わったんだね…)
私は崩れ落ちそうになる膝を必死に支えながらリツへと向かう。
「リツ…!」
「麗…!」
剣を収めるリツがこちらへ向かって歩いてくる。
遠くからでも分かった。リツの息が上がっていることが。かなりの体力を使ってる。
「リツ…!無事で良かった…!」
私は思わずリツに抱きついた。
リツは私の腰に腕を回し抱きしめてくれる。
「お前のおかげだ、麗。」
「私は何もしてないよ…全部リツと水龍たちが頑張ったからだよ…」
「それよりだ、あの力…一体なんだったんだ…。」
リツが呟くとレイヤが口を開いた。
「あれは水龍の加護の力だ。」
「水龍の…加護の力…?」
どういうこと…
「これは遠い昔、まだ俺たち水龍が人間と対立していた頃の都市伝説みたいな話しだ。とある水龍が人間の女と恋に落ちた。その水龍はその女と心を通わせたとき、その女は淡い青色の光を放ち、その水龍のそばで守り、共に戦った。そんな都市伝説みたいな話があったが…まさか本当にあるとはな。」
ということは私が水龍と心を通わせたということ…?
「おい、麗がお前たちに恋したとでも?」
「馬鹿か。そんなわけないだろう。俺たちはそこにいる人間、麗が俺たちを受け入れてくれたからだろう。俺たちを受け入れる人間は一人も見たことがない。だからだ。」
「この力は…どんな力を持つのですか…」
「その力は、守りたいものを守り、傷を治癒する。そして、力を与える。戦えるわけではないがその妖狐にとっては必要な力だな。妖狐の持つ蒼狐の力と水龍の加護の力が共鳴すればかなりの戦力になる。」
「…いつでも…使えるの…?」
「ああ。代償もないその力はいつだって使える。多分、その力が出てきたのは、俺たち水龍と心を通わせたことも関係しているが、それ以上に妖狐への守りたいという気持ちが力の本質を呼び覚ましたのだろう。」
確かにあの時、私がリツを守るって強く願った。
だからこの力が現れたんだ…。
これで私もリツの力になれる…
「リツ、私…やっとリツの力になれるんだね…。」
「麗…。」
リツは私の手を取る。
「お前は俺が守る。だがら、お前は俺に力をくれ。」
「…うん!」
願いが叶った。
リツを守るという願いが。
「妖狐、そして人間よ。俺たちは帰る。何かあればまた召喚しろ。力になってやる。」
「…ありがとう、レイヤ、ツクモ、シン!」
そして水龍たちは消えていった。
「リツ。」
「どうした。」
「私、もっと強くなるね。リツを守れるように。」
リツはニヤリと笑った。
「お前がその気なら俺が鍛えてやる。」
「手加減してね?」
「お前次第だな。」
私たちは二人で見つめ合い笑った。
静まった水龍の層を後にする私とリツ。
私はふと思った。
この力は沢山の人を守ることが出来るかもしれない。
リツのように守れる存在に、強い存在になれるかもしれない。
そう思えたとき、少しだけ自分が誇らしく思えた。




