10
水龍の背中から降りた私とリツ。
足に感じるのは再び冷たい水の感覚だった。
「ねえ、リツ。説明してくれる…?」
「ああ、いいだろう。」
リツはそう言って視線を足元へ向けて話し始めた。
「まずは蒼狐の力の話をしよう。蒼狐の力は俺が神に使えていた頃に授けられた力だ。お前が見た透き通った淡い青色の光が蒼狐の力の現れだ。それと同時に俺には狐の耳と尻尾が現れる。」
「蒼狐の力はリツしか使えないの?」
「ああ、俺以外に使える奴がいるなど聞いたことがない。」
蒼狐の力はリツが仕えていた神様がリツのために授けた特別な力なんだ。
「視界が霧で遮られていたのに、辺りが見えるようになったのは、その蒼狐の力のおかげ?」
「ああ、蒼狐の力は人間や動物たちの不自由なもの、怪我、不治の病などを癒す力もある。お前は視界が遮られ、移動するのに不自由だっただろう?だが、蒼狐の力で見えるようになったんだ。」
蒼狐の力は人のため、動物のための力…
神様らしい力を授けられたんだね、リツは。
「だが、この力を使うと同時に代償がある。」
「代償…?」
「蒼狐の力を使うたび、俺の寿命は縮んでいく。」
リツの寿命が…縮む…?
「ダメ!そんなの…ダメだよ…リツ。寿命が縮むのならもう…使わないで…。」
「麗…」
「私も力になるから…お願い。」
どうして必死に止める言葉がスラスラと自分の口から出てきたのか。それは多分、私の中でリツのそばにいることに幸せを覚えたから。視線を落としながら私が言えば、私の頭の上に乗せられるリツの手。その手が温かくて、落ち着く。
「麗、お前は嫌かもしれないが俺はいいんだ。」
「どうして…!」
そう言ったリツに視線を向ければ、優しく微笑むリツがいた。
「俺の寿命はかなり長い。長い間、人間が死ぬのも、世界が変わっていくのも沢山見てきた…。だか、俺はお前が死ぬのを見届けることだけはしたくない。人間と妖狐、寿命の長さはかなり違う。」
「だけど、私たちは契約したでしょ…?それなら私が死んだらリツも死んじゃうじゃない。逆も同じでしょ?」
「病気などで死ぬ場合は別だ。その契約はダンジョン内での話だ。お前の寿命が来て死んだとしても、俺は死なない。妖狐である以上、俺はお前の死を見届ける側だ。だが、俺はそれをしたくない。」
「リツ…」
寂しそうに話したリツ。
ずっと嫌だったのだろう。
人間が死んでいく姿を身近で見るのが。
「…私はリツに長く生きてほしい。でも、私はリツの願いも叶えたい。リツ、どれだけ一緒に過ごせるかは確かに分からない。リツに見守られながら私は死ぬかもしれない。だけど、今は今のことだけ考えようよ。今は一緒に居るんだから…!」
私は、この先のことなど何も考えたくない。
リツがそばにいない、リツと永遠の別れ。
そんなことを考えそうで…。
「そうだな。俺も今だけを考えるとしよう…。」
一度、二度と撫でられた頭はリツの温もりでいっぱいだった。
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