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小屋の隙間から朝日の眩しさを感じ、目を開ける。

私の膝の上でまだ目を閉じ、すやすやと眠っているリツ。


「おはよう、リツ。」


静かに呟いたつもりが、リツにはしっかり聞こえていたみたいだ。耳をピクリと動かし、ゆっくり目を覚ます。


──ボンッ


起き上がったと思えば、すぐに人間の姿になるリツ。


「おはよう、麗。よく眠れたか?」


「うん。りつのおかげでね。リツはよく眠れた?」


「ああ。お前が撫でてくれていたからな。」


こちらを見て言ったわけではなかったが、どこか機嫌が良さそうだった。


「麗。支度ができたのなら早く行くぞ。」


「分かった。」


支度が終わり、私たちは第二の層、水龍の層へ向かう。


────────────────────


山道はそれほど険しくないものの、進めば進むほど白い霧で視界が奪われていく。


「麗、大丈夫か。」


「うん、なんとか…」


リツが手を握ってくれているからなんとか進める。

これがもし、私一人なら進めなかっただろう…


──ポチャン、ポチャン


鼻から香る湿った空気の匂いと水の音。


「…冷たい…」


「我慢しろ。」


足に感じるのは冷たい水。

層に近づいているんだと肌で感じた。


「麗、着いたぞ。」


「ここが水龍の層…でも、霧のせいでよく見えないよ…」


「人間と妖狐ではやはり視力、嗅覚、聴覚も違うからな。仕方のないことだ。」


「リツにははっきりと見えるの?」


「少し霧は見えるが、どうなっているのかも全て見える。」


人間と妖狐の違いは姿だけじゃなく、やはり五感も違うんだ。


「麗、お前は何も見えないだろう。だから決して俺の手を離すなよ。」


「うん…!」


強く握られた手を握り返し、層の中へ進んでいった。


──ピチャ、ピチャ


歩いていくたびに水面が揺れる。

水の冷たさが背筋を凍らせ、不気味な雰囲気が余計に恐怖に陥ってしまう。


──ピチャ、ピチャ


…?

足元から水の動きが感じた。

だけど、それは私たちが動いたからではない。

明らかに、私たちの向こう側からに感じた。


「麗、動くなよ。」


「う、うん。」


私たちはその場で足を止める。

するとやはり、向こうから何かがこちらへ向かってくる。


「来る。」


リツがそう呟いた瞬間だった。


──バシャン!


大きな音を立て何かが飛んだのが見え、水しぶきがかかる。


「リツ…!」


「どうやら人面魚のモンスターだな。お前が見れば悲鳴をあげそうな顔をしている。」


…人面魚のモンスター。

って、そんな風に言われたら少し気になるんだけど…


「やれ、狐火。」


リツが呟けば狐火が現れモンスターの方へ向かう。

狐火でモンスターの顔が見えたが、確かに悲鳴を上げたくなった。だけど、今は戦っているから。リツが集中出来るようにしないと。だけど、やはり事前に話していた通り、狐火は効いていない。


「やはり効かぬか。」


「どうするの、リツ。」


「封じられし我が力よ。我に力を…。」


そう言った瞬間、リツから水のように透き通った淡い青色の光が広がり、リツには人の姿では隠していた狐の耳と尻尾が現れていた。


「…リツ。」


「驚いたか、これが俺の隠された一つの力。蒼狐の力だ。」


「蒼狐の力?」


「まあ、説明は後だ。それに見ていれば分かる。」


するとリツは水面に手を当てる。

水面が光輝き、モンスターの姿が私にも見えるほどはっきりと映し出された。


(一体、何が起こるの…)


今から何が起こるか想像もつかない。

そんなとき、水面が動き出す。


(水面が波打ってる…これ、リツがやってるの…?)


リツを見ているけど、水面に手を当てているだけで何をしているかは分からない。


「…いでよ、我がしもべ達よ。」


先程よりも激しく波打つ水面。

そして水面から現れたのは…


──グォアアアアアアアア!!!


思わず耳を塞いでしまうほどの鳴き声。


「…水…龍…。」


なんと、三匹もの水龍が現れた。

真ん中の一匹はかなりの大きさで、一歩後ろにいる二匹は少し小さい。家族なのだろうか、それとも仲間なだけか。そんなことはあとだ。


(どうして妖狐のリツが水龍を召喚できるの…?それに、しもべって…)


「やれ、水龍よ。」


──グォアアアアアアアア!!!


走って向かっていく三匹の水龍。

一匹は目の前にいるモンスターへ飛びつき、体を噛みちぎっていく。モンスターは反抗することなく一瞬にして倒れていった。残りの二匹、一番大きかった水龍ともう一匹の少し小さな水龍が目の前のモンスターを無視して奥へと進んでいった。


「麗、こいつに乗れ。」


「え!?」


私はリツに手を引かれ、目の前のモンスターを倒した水龍の背中へ乗せられる。私の前にリツが居て、私は思わずリツの腹部へと腕を回した。


「しっかり捕まっておけよ、麗。」


「う、うん。」


「水龍よ、いけ。」


──グォアアアアアアアア!!!


鳴き声を上げた瞬間、動き始める。


(う、浮いてる…)


下を見れば水面に浮かぶ水龍とそれに乗るリツと私の影。霧で見えにくかった水龍の層もいつのまにか霧が消えかかっていた。これはリツの力のおかげなのかもしれない。


「ねえ、リツ。モンスターが出てこないけど、どうしてなの?」


「すぐ分かるさ。」


水龍が進んでいくと、目の前で待っていたのは先に奥へと進んでいた二匹の水龍だった。


「麗、捕まれ。」


「うん…。」


リツの手を掴んで水面へと足を下ろす。

一体、どういうことなのか。


「リツ、どういうことか説明して?」


「ああ、そうだな。ボスへ行く前に説明しよう。」


(…?ボス?私たちまだ、一匹のモンスターしか倒してないわよ?どういうこと…?)

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