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【3話】始まりの街

「ここがアルカディア、始まりの街か」


 周りを見渡すと既にちらほらとプレイヤーの姿が確認できる。それにしても大きい街だ。最大で十万人ものプレイヤーが集まる街だ、当然といえば当然か。


 いくつも目に入ってきている魅力的な商業施設を散策したい気持ちを抑え、右手人差し指を上から下に振り、メニューを開く。するといくつかの項目が表示された。上から順に【ステータス】【スキル】【装備】【インベントリ】【パーティ】【メッセージ】【オプション】となっている。まずは【ステータス】をタップする。


【名前】:カズト

【レベル】:1

【体力】:100/100

【武器】:なし

【防具】:なし

【筋力】:5

【敏捷】:5

【耐久】:5

【魔力】:5


「うーん、普通だ」


 ゲーム開始から何もしていないんだ、こんなもんだろう。次に【スキル】をタップ。職業ごとに分かれたアクティブスキルというものが表示されていた。


 アクティブスキルにはそれぞれ五つの職業が記載(きさい)されている。【剣士】【魔術師】【弓兵】【(ハンマー)使い】【獣使い(テイマー)】 どうやら、レベルアップ毎にスキルポイントを獲得することができ、ポイントを消費することでスキルツリーを育てていくシステムらしい。


「定番っちゃ定番だけどこれが一番分かりやすくて良いよな」


 次に【装備】をタップ、すると自分の姿をしたキャラクターがメニュー内に出現した。そういえばキャラクターの容姿を決めていなかったと気付く。このゲームでは現実の自分の姿をモデルにキャラクターが作成されているらしい。


 黒髪マッシュの至って普通の青少年、自分の容姿を客観的に評価するとこんな所だろうか。ゲームの没入感を高めるためだろうと納得する。


 次に、気を取り直して装備欄(そうびらん)を見る。【武器】【防具】【装飾品×2】の計四つ装備可能となっている。防具は基本的にシリーズ防具という、全身セットの仕様になっているらしい。


 特に気になる点も無く、次の【インベントリ】をタップする。既にいくつかのアイテムが格納されていた。装飾品を除いた防具一式と、五つの職業の初期武器だ。


 製作者の配慮(はいりょ)に心の中で感謝を告げ、インベントリ内の防具【旅人シリーズ】をタップし装備していく。武器は職業を一目見た時から決めていた。剣士専用武器【ロングソード】 俺が憧れた英雄達。その中でも特に心を奪われたのは剣を片手に勇敢(ゆうかん)に戦う戦士だった。


「遠距離武器なんて弱くて臆病(おくびょう)なやつが使う武器だろ」


 憧れが強すぎるが故に、思ってもいない悪口がつい口から(こぼ)れ落ちる。まあ思春期の男の子だし仕方ないよね。と心の中で軽く言い訳をし、次の【メッセージ】を開く。


 文字通り、他のプレイヤーとメッセージを送受信できる機能らしい。それぞれのプレイヤーにはIDが割り振られていて、IDを交換することでメッセージの送信が可能になる。使う予定はないからすぐにスキップする。


次に【パーティ】をタップすると、注意事項という項目が強調表示されていた。そこにはこう書かれていた。


『パーティを組むと、全てのアイテム、ステータスなどの情報は共有されます。また、パーティはゲームを通して一度しか組むことが出来ません。お相手は慎重に選びましょう』


「一度しか組めない? しかもアイテムも情報も共有だと? そんなのよっぽど信頼している相手じゃないと組めないじゃないか」


そう思い、さらに下にスクロールすると追加の情報があった。


『ただし、それは本パーティを組んだ時限定です。第四の国をクリアするまでは誰とでも、何度でも仮パーティを組むことが出来ます。もちろん仮パーティではアイテムなどの共有はありません。第四の国クリアまでに信頼出来るパートナーを見つけましょう』


「なるほどね。第四の国までは仮パーティを組んで二人でゲーム攻略するか、一人で攻略するか選べるのか」


 もちろん俺は知り合いなどいないので一人でプレイすることになる。可愛い女の子と組めたらいいなぁとは思うが現実的では無いことは自覚していた。


 頭を切り変え、最後の【オプション】をタップ。ゲームの基本的な進め方、設定の変更方法や、チュートリアルなどが記載されている。まずはゲームの進め方を確認する。


『国とダンジョンは一対になっています。国の中にはNPCが沢山いますが、(たま)にクエストを受注できるNPCも存在します。希少な武器や防具、スキルや情報もGETできるかも? 見かけたら積極的に交流していきましょう』


 なるほど。基本的には国でクエストをこなしてアイテムと情報を収集し、ダンジョンの攻略を進めていけば良いのか。

 次にチュートリアルの項目を確認する。お目当ての戦闘方法のページを発見した。


『スキル以外の戦闘は自力で頑張ろう! ただ武器で攻撃するんじゃなくて、地形やアイテムを駆使(くし)して有利に戦闘を進めよう! アクティブスキルは取得済みであれば、心の中でスキルを使いたいと思ったら発動してくれるよ! ただしスキルにはクールタイムが存在するから、連発はできないよ!』


 声に出さなくてもスキルが発動できるのは便利だな。今までのゲームでは声に出す必要があったため、戦闘中にスキルを叫ぶ自分をちょっと滑稽(こっけい)だなと思う時があったのも事実だった。



 これで今すぐに確認しておきたかったことは確認できた。チュートリアルによると、始まりの街の中央に転移陣が用意されていて、そこから第一層の街へ転移できるようになっているらしい。


 「行くか」


 そうつぶやき、始まりの街の中央へ向かって歩き始めた。


 


 ──正直なところ、俺は少しがっかりしていた。確かに国が開発に(たずさ)わり、最高峰の技術力で作成されたゲームだけあってグラフィックはとてつもなく綺麗だ。

 でもそれだけだった。システム面や世界観などはよくあるRPGと代わり映えしないし、俺の求めた理想のゲームだとは到底思えなかった。


 だがこの時の俺は何も分かっていなかった。このゲームの本当の凄さを。これこそが俺の求めた理想だと確信せずにはいられないほどの衝撃的な、ある意味では()()()()()()()がそこには存在していた。

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