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大嫌いな父親にドッキリをしかけて泣かしてみた

作者: やまおか

 わたしの記憶で両親が揃っていたことはない。

 母はわたしが小さいころに事故死したらしい。物心つく前のことだったので、仏壇に飾られている写真を見ても特に思うことはなかった。

 父からも母の話はあまり聞かなかった。毎朝仏壇を拝んでる姿を見るぐらいで、特に思い出などを語ったりすることもなかった。

 

 父の育て方はとても厳しかった。一人娘に対して甘くなかった。

 毎朝決まった時間に起こされ、すぐに身支度をととのえないと注意された。

 学校に行く前に弁当をもたされるが、その中身はお世辞にも上手とはいえない。出来合いの冷凍食品を詰め込み、唯一手づくりの卵焼きはボロボロだった。


「お父さん、無理してつくらなくていいから」


「文句いうな! 腹に入れば一緒だ」


 ケンカになった翌日も父は弁当を作った。父は意地でも卵を焼き続けた。それは一年、二年とたっても上達せずボロボロだった。


 ここから父と娘のケンカは歴史は続いていく


 授業参観の日のことだった。教室の後ろで見ているのはクラスメイトの母親ばかりだった。みんなお化粧して綺麗に着飾っているのに、工場から早退して飛んできた父の作業服姿はとても目立っていた。

 授業参観が終わって父を待っていると、他の親たちがひそひそ声で父のことを話しているのが聞こえた。

 

 次の年は来なくていいというと、ケンカになった。

 

 中学、高校と小さな衝突は続くが、一番の大ゲンカは二年の三者面談のときだろう。

 

「わたし、卒業したら働くから」

 

「子供が何言ってるんだ。学費のことなら心配するな」

 

 本当はかなり無理をしているのは知っている。

 先生をおいてけぼりに二人の大声が響く。廊下で次の番を待っていた友人が驚いた顔をしていた。

 

 結局、先生や友人まで父の意見に味方しだした。しかたがなく折れてやった。


 父とはケンカばかりだった。きっと馬が合わないのだろう。


 就職先でももめた。届いていた内定通知を見たらしく、中堅企業の方を選べといってきた。大学の先輩に誘われていたベンチャー企業と悩んでいたが、父は意見を曲げなかった。

 

 大学の友人に相談すると、先輩についてのいやな噂を聞いた。結局、中堅企業に就職した。父のいうことを聞いたみたいでいやだった。

 

 今も昔も頑固で厳しい父だったが、今はとても弱った姿でベッドに臥せっている。

 倒れたと聞いて仕事先から走ってきた。

 父はなんでもないからさっさと仕事に戻れと追い払おうとするが、医者からは腎臓の病気だと聞かされた。

 移植すれば快復するが、ドナーが見つからないという。子供である自分のものなら適合するというのに、父は頑として受け入れなかった。

 

「どうして、いつも自分を大事にしないの!」

 

「うるさい、子供が親の心配なんてするな!」

 

 病院で大声でケンカするものだから看護師に怒られた。

 

 それから、毎週病院に通い機械につながれて透析を受けるようになった。本人はなんでもないといった顔をしているが、日に日に弱っていくのがわかった。

 病院に行った日は、だるそうに「おかえり」というだけで小言もあまりいわなくなった。

 

 いつか見返してやろとしていたのにこれでは張り合いがない。だから、父に仕返しすることにした。

 

「ドナーが見つかった」

 

 それを聞かされたとき、父はとても驚いた顔をしていた。内心でほくそ笑みながら、父は見知らぬドナーからのものだと信じながら手術を受けた。

 

 手術は無事に終了した。

 

 同じ入院着のまま父の病室を見舞う。

 わたしの姿を見て、事故か病気かと心配しだすが違うというといぶかしげにじっと見る。それから、はっとしたよう目を見開いた。

 

 それから、父はひどく泣き出した。

 

 ざまあみろ。

 

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