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第45話 エンデュミオン

その空間はひたすらの闇だった。まるで俺がマイナス召喚を使っている時のような漆黒の闇。だけど、かたわらにいるブリュンヒルデと、アイリスの存在がいつもとは違うことを教えてくれる。



「ここは……」

『まずはおめでとう、私の試練を無事乗り越えた君たちに祝福の言葉を授けよう』



 いきなり目の前に、豪華なローブを身にまとった男が現れた。その姿は半透明で生きた人間ではないという事がわかる。



「これは……幻術かしら……?」

「いえ、伝言魔法の一種ですね。あらかじめ映像と音声を保存しておき、何らかのきっかけで、発動する魔法です。おそらく、あの四体を倒したのがトリガーとなって発動したのでしょう」

「な……声だけじゃなくて、映像までできんのかよ。すげえな……」

「そんなのパパでもできないわよ!?」



 ブリュンヒルデの言葉に俺とアイリスが驚く。見たこともない高度な技術だったからだ。そして、そんな俺たちの反応を予想していたかのように、目の前の男……エンデュミオンは嗤う。



『ふはははは、どうせ、お前らは俺様の天才的な魔法に驚いていただろう? そして、お前らはこう思っているに違いない。「僕は……私たちは……偉大なるエンデュミオン様の試験をクリアできたんだ。これでやっと一人前になったのだ」と……だが、それは勘違いである』

「こいつむかつくわね……」

「まあ、性格は終わっているんですよ……」

『ここからがようやく始まりなのだ。あの魔帝は魔王を使役し、その配下の強力な悪魔を従えている。お前らはそいつらと戦わねばならんのだ。この試験はようやく、一歩を踏み出したものにすぎない……やつらの力を見るがいい」



 エンデュミオンがキザっぽく指をぱちんと鳴らすと世界の景色が変化する。漆黒の闇に映像が映し出される。

 それはかつてあった魔帝と勇者の戦いの映像なのだろう。異形の悪魔と、人間たちの戦いの光景だった。



「何よこの魔法……レベルが違いすぎる……」

「悪魔もやばいぞ……セーレはただの雑魚だったのか?」

「……」



 その戦場では先ほどアイリスの放ったレベルのビュンビュンと飛んでいき、戦士たちがすさまじい絶技でぶつかり合う。

 これがかつての戦争のレベルで……おそらく、深層ではこれが当たり前になるのだ。



 フリーレンはこのレベルについていっているのか?



 そう思うと自然と俺は生唾を飲み込んだ。戦争は終わったが悪魔はダンジョンに生息している。おそらく、これと同じような戦いはいまだにおきているのだ。



『これからがスタートだといった意味がわかっただろう? お前らはこのレベルにならねば即座に死ぬだけだ。選別をくれてやる。だから、我が配下として魔帝と戦う、このままあきらめるのかを決めるがいい』



 その言葉と共にエンデュミオンの手が輝いて、映像と共に闇が再び砕け散る。そして、最後に彼はどこか遠くを見てこういった。



『人にはその人の道というものがある……別にここで逃げた貴様らを馬鹿にする権利など誰にもなかろうよ。命を無駄にするなよ』


 

 それはかつての弟子たちにエンデュミオンが語った言葉だったのだろう。彼はどんな思いでここを作り、弟子たちを戦場に送り出していたのだろうか? そう思っていると世界が光につつまれて……



「ここは……」

「屋敷の外の様ね……」



 目を開くとそこはゴーレムたちが、庭の植物に水をやっており、俺たちの前に二枚の紙が置いてあるのに気づく。



「これは……魔力を感じるな」

「これがエンデュミオンのメモかしら……」



 確かな魔力を感じるメモを手に拾った俺は遠くを見つめているブリュンヒルデに声をかける。



「なあ、エンデュミオンとは知り合いだったのか?」

「はい、彼はかつて魔帝と共に戦った英雄の一人でした。彼は自分の死後も悪魔と戦う人のためにこんなところを作っていたのですね……まったく普段は、他の人間の事なんか知るかとかいっていたくせに……」


 

 悪魔は狡猾だという、この館のギミックの陰湿さはそんな悪魔と戦うことができる人間を探すために作られたのだろう。そして、今は冒険者たちの力を見極めるための施設になっているのだ。

 不思議な縁だ……いつか、俺が彼を召喚する機会があれば、真意を聞いてみたいと思った。彼は本当は弟子たちを戦わせたくなんかなかったんじゃないか、そう思えてしまったから……



「アレイスター、私の力を信じてくれてありがとう。さあ。あとはパパにこれを見せつけにいくわよ!!」

「ああ、そうだな……」



 今回の試練で新たな力を手に入れたアイリスが自信に満ちた表情で言う。あとでダークフレイムさんを探して、お礼も言わないとな。そんなことを思いながら俺たちはダンジョンをあとにするのだった。



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