第43話 アレイスターの策
「あいつらが狩人と合流する前にさっさと叩く。じゃあ、アイリス……頼んだぞ!!」
「ええ、任せて。二人とも気を付けてね」
「はい、マスターのことは私が必ずや守ります! そろそろ近づいてきましたよ」
作戦を決めた俺たちは即座に行動に移る。狩人と合流されたらもう手が付けられなくなるからな。アタランテを召喚してとある指示を出してから、路地から姿を現すと、こちらに向かってくる魔法使いと、騎士が目に入った。
「こっちだ!! かかってこいよ!!」
「……!!」
そいつらは俺たちに魔法を放とうとしてきたので、急いで射程範囲外に逃げ出だすと、一瞬何かを考えるように止まった後に追いかけてくる。
「ゴーレムさんこーちらってな!!」
「マスター、遊びすぎです」
「……!!」
ブリュンヒルデにしかられながらも、俺は魔法の射程外ギリギリの距離をキープし続ける。そして、相手がある程度進んだところで勝利を確信する。
「な……」
「……!!」
俺が驚愕の声を漏らすとそいつらはにやりと笑った気がした。そいつらは俺たちが出てきた路地の方に方向転換をしやがったのだ。
そこでは、潜んでいたアイリスが魔法で奇襲をかけようとしていたというのに……
「……!!」
「いまだーーーー!!」
騎士が結界を張ろうとした瞬間だった。その俊足を活かして回り込んでいたアタランテが猛スピードでやってきて、騎士の胴体に見事のけりをぶちかます。
「……!!!」
あの俊足から繰り出される一撃はすさまじいものだ。本来だったら金属すらもへし折り、その代償に彼女の足は大けがを負っていただろう。だがここ普通のフィールドではない
「……!?」
結果、騎士はアタランテの一撃で吹き飛んでいき結界どころではなくなる。そして、魔法を使おうとしていた魔法使いを、路地から放たれた魔法が火の玉が包んだ。
結界されなければあんなやつはアイリスの圧倒的な破壊力をもつ魔法の敵ではないのだ。
「次は騎士だ!! ブリュンヒルデ!!」
「お任せください、マスター!!」
俺が指示をする前にブリュンヒルデは騎士の方へとか駆け出して行っていた。そして、そのまま槍による突きを相手の胴体へと放つ。
それは物理攻撃のため、騎士が咄嗟にはった結界を貫いたが、相手にダメージは通らない。だけど、彼女の槍が騎士の胴体に当たると同時に、神の雷を放つ。
「……!!」
槍を通して結界の中から放たれた雷によって、騎士の体がビクンビクンとはねてそのまま霧散していく。
「これで二体か……」
俺が一息ついていると、アタランテと目があって……彼女は不満そうな態度で自分の持っている弓を軽く叩いてカードに戻っていった・
まあ、狩人の彼女に矢ではなく蹴りをさせたのがプライドを傷つけたのかもしれない。今度は気を付けるとしよう。
「アイリス、いい魔法だった。あと二体だな。頑張ろう……アイリス……?」
路地の方へと戻ると杖を構えたアイリスが気難しい顔をして、立っていた。せっかく敵を倒したというのに、一体どうしたのだろう?
「ねえ、アレイスター……魔力の濃いここに来たからかしら。私もアレイスターみたいに新しいスキルに目覚めたの」
「そうか……それは、よかったな……」
ただならぬ雰囲気のアイリスに俺はそんな言葉しかかえすことができなかった。だって、新しい力に目覚めたというのに、とてもではないが喜んでいるようには見えなかったからだ……
そもそも俺の時のように元々持っているスキルが進化したり、新しいスキルを覚えることはあるが、自分が望んだものを手に入れることができきるかは完全に運なのだ。
現に……俺が今『エンデュミオンの影』を倒して、召喚できるようになったアイテムも、彼女の役にたつかは微妙だしな……
「ねえ、アレイスター。私は……やっぱり魔力を制御できたほうがいいのかしら……」
そういって、アイリスは制御の杖の入っているアイテムボックスを見つめるのだった。




