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第33話 アイリスの家族

あの後、俺は詳しい事情をきくためにアイリスとそのお父さんとギルドの個室にやってきていた。



「だから、私は冒険者をやめないって言ってるでしょ!! 大体何よ、婚約者って!!」

「聞くんだ、アイリスよ。彼は爵位も持っているし、人格者としても有名だ。しかも、彼はお前の魔力を制御することのできる杖を譲ってくれるとまでいっているんだ。それさえあれば危険な冒険者をやめて、憧れだった宮廷魔法使いになることだってできるんだぞ!!」

「だからって私は自分の身を売ってまでそんなもん欲しいわけないでしょ。パパの馬鹿!!」

「馬鹿……娘に馬鹿と言われた……」



 そんな風な口論がさっきからずっと続いている。そして、ヒートアップしていた二人が落ち着いたタイミングで口をはさむ。



「すいません、アイリスに婚約者がどうのこうのっていうのは一体どういうことな何ですか?」

「ああ、すまなかった……自己紹介もさずに本題に入ってしまったね……まず、私の名前はデュナミス=クレイン。この国で宮廷魔法使いをやっている。もう、察しているとは思うがアイリスの父だ」

「クレイン……ですか……?」



 彼の言った家名を聞いて俺は思わず聞き返す。クレイン家というのは有名な魔法使い一族であり、エリート職である宮廷魔法使いはもちろんのこと魔法関係の要職についている名門貴族だ。

 俺のような冒険者の端くれでもしっているくらいだなのだ。少なくともこんなところで冒険者をやっていていい存在じゃない。



「ああ、そのクレインだよ。彼女はわが一族の中でも優れた魔力を持っていたのだが……パーティーを組んでいる君ならわかるだろうが、制御することができないんだ。危険だから、彼女には魔法使いとしてではなく、貴族令嬢として生きてもらおうとしたのだが……」

「そんなの嫌よ。私は魔法と一緒に生きるんだから」



 デュナミスさんの言葉にアイリスはプイっと首をふって顔を逸らし、それを見た彼が悲しそうに涙目になっている。



「家出をして、冒険者になったってわけですか……」

「ああ、確かに不満に思っているのは知っていたが、まさか家出をするとはね……」



 俺の言葉を肯定したデュナミスさんは大きくため息をついた。どうやらアイリスの行動力を甘く見ていたようだ。まあ、流石に貴族令嬢が家出をして、冒険者になるなんて物語でもなければありえない話だもんなぁ……

 そんな風に拗ねた顔リンゴジュースをチューチューしている彼女を見つめると、なぜか睨まれた。



「何よ、アレイスターも、私に帰れっていうの?」

「いや、俺はお前の意見を尊重するよ。だって、仲間だからな。だけど……お前を心配するデュナミスさんの気持ちもわかる。冒険者は命がけだからな」



 もちろん、俺としてはアイリスにいてほしい。だけど、デュナミスさんの今の顔を見ると俺が冒険者になるって言ったときの不安そうなクレア姉さんの顔とかぶるのだ。宮廷魔法使いがどんな仕事かわからないが、冒険者よりは安全だろう。



「デュナミスさん一つだけ聞いてもいいでしょうか? アイリスの婚約者はどんな人なんでしょうか?」

「ああ、オゴラサレ=フラーレ男爵という人なのだが、私も一回あったが礼儀正しくて素晴らしい青年だったよ」

「あいつかよ……」



 サハギンの宝玉の依頼主じゃん。てか、プレゼントした女の子はどうしたのだろう? おごらされて振られたのだろうか? まあ、この感じだと悪いやつではないのだろうか?

 それはともかくだ……



「とりあえずいきなりのことでアイリスも俺も混乱しているので二人で相談させてもらってもよいでしょうか?」

「ああ、そうだね。私はしばらくここにいる。何かあったら来てくれたまえ。あとアイリス……お土産を買ってきたんだ。よかったらこれを受け取ってくれないかな?」

「……もらうわ」



 拗ねた顔をしながらも、彼女の好物らしきジュースの入ったガラス瓶を受け取ってアイリスを見て、二人の関係は決して冷たいものなのだなと思い俺は思わず笑顔を浮かべる。

 そして、何かできることはないかなと思うのだ。




 デュナミスさんと別れた俺はアイリスと一緒に街を歩いていた。貴族だとわかると不思議と気品のようなものを感じるから不思議なものだ。



「巻き込んじゃったわね……ごめんなさい」

「別に気にするなよ。俺たちはパーティーメンバー……仲間だろ。それを言ったら、パーティーメンバーでもないのに力を貸してくれたお前に俺はどれだけ謝ればいいんだよ」

「もう……ばか……」



 俺の言葉に彼女は嬉しそうに笑って、少し遠慮がてら言った。



「色々話したいから、私の部屋で話さない?」

「ああ、別に……ってお前の部屋!?」


 俺とて、男である。異性の部屋にはいるというのはドキドキするものだ。しかも、今のアイリスはちょっと弱ってる感じがして……



「いや、それはどうかと……」

「ダメかしら?」



 普段は気の強い彼女のすがるような言葉に俺は断ることができなかった。



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