第28話 孤児院にて
ダンジョンを抜けた俺はアイリスにギルドへの報告を任せて急いで孤児院へと向かっていた。扉をかけての部屋へと行くと中には涙をこらえているバーバラと、プリーストのホフマンさんがいた。30歳くらいの髭の似合う清潔そうなおっさんである。
「アレイスターお兄ちゃん!!」
「バーバラ、安心しろ!! 俺はお前のお兄ちゃんであり、英雄だぞ」
心細かったのだろう、昔の呼び方に戻っているバーバラを元気づけるように微笑みながら、俺は、ホフマンさんに『ユグドラシルの葉』を差し出した。
「アレイスターくん、それはまさか……」
「はい、ダンジョンで採取してきました。これで助かりますよね?」
「ああ!! 任せろ!! 私のプリースト人生をかけてでも薬を完成させて見せる」
ホフマンさんはクレア姉さんを見て、力強くうなづくと大きな鉢に様々なものを淹れてすりつぶして調合を始めた。
俺とバーバラが息を飲んで見守っていると、すり鉢の中が輝く。これがホフマンさんのスキル『調合』だ。
彼は頬に汗を流しながらも必死に調合を続けている。スキルを使うのには集中力が必要だと聞く。俺たちがいても邪魔なだけだろう。
「では、ホフマンさんにあとはお任せします。何かあったら言ってください」
「お兄ちゃんでも……ううん、そうだよね……」
「ああ、彼女は絶対助けるから安心してくれ」
俺の考えがわかったのか、バーバラもクレア姉さんと一緒にいたそうだったが素直に従った。そして、扉を閉めると、同時に声を震わせながら抱き着きてくる。
「お兄ちゃん……お母さんは助かるよね?」
「あたりまえだ。ホフマンさんがすごい人だってわかってるだろ? 俺たちが風邪をひいた時もさ、あの人が作った薬を飲んだら熱がすーっと引いたろ?」
「うん……そうだね……そうだよね」
昔のように甘えてくるバーバラの頭をなでながら、元気づける。最年長として色々と頑張ってきていたようだが、こいつは昔っから甘えん坊なのだ。きっと心細くてつらかったのだろう。
「しょうがないな……今日は一緒に寝てやろうか?」
「え、アレイスターお兄ちゃんそれって……嬉しいけどこんな時だし、心の準備が……」
バーバラがなぜか顔を真っ赤にしてあたふたとしている。だから、俺は安心させるように微笑む。
「今日はさ、お前が寝付くまで話をしてやるよ。英雄譚とかすきだっだろ?」
「あーそういう……アレイスター兄さま、私はもう子供じゃないんですよ……」
今度はなぜか不服そうにほほを膨らます。ころころと表情が変わって可愛らしい。だけど呼び名も普段通りに戻ってきたし、少しは落ち着いてきたようだ。
「でも……せっかくだし、お言葉に甘えますね。アレイスターお兄さまの冒険の話を聞かせてください」
「ああ、任せろ。第三層にはサハギンっていう魔物がいてな……」
俺は最後にクレア姉さんの部屋を見て、心の中でつぶやく。「頼むぜ、ホフマンさん……俺の……俺たちの母さんを救ってくれ……」
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