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第26話

「くたばれ!! 魔帝の残滓よ!!」

「神よ!! 我らを守らん!!」

「きゃあ!!」



 ブリュンヒルデが召喚されて、結界を張るのとセーレが剣を振るうのは同時だった。そして、彼が県から風の刃が襲い掛かり俺たちを襲うと、結界は所々ひびが入り、今にも割れそうになる・



「はっはーー!! やるな、人間!! まさか、もう戦乙女を召喚し我が物にしていたとは!! だけど、そいつじゃ俺に勝てないぜ。レベルが!! 能力が!! 経験が違うんだよ!!」

「マスター!! くぅ!!」



 セーレが笑いながら接近し、手にもつ剣で結界を切り裂き、俺たちにふるわれようとした攻撃をブリュンヒルデが必死に槍で受け止める。このままじゃ、まずい。

 こいつの強さはおそらくガウェインと同等かそれ以上だろう。



「マスター!! ここは私が時間を稼ぎます。だからお逃げください!! 蝙蝠ちゃんが逃げ道をおしえてくれるそうです!!」

「きゅーきゅー!!」



 ブリュンヒルデの必死な声と共についでに召喚した蝙蝠が俺を導くかのように彼女の方から飛んだ。


 ああ、そうだよな。彼らは召喚した存在だ。また、召喚すれば運よく出会う事もできるかもしれない。だったら逃げでもいんじゃないか?

 


「ふざけんな!!」



 一瞬でもそんな事をかんがえてしまった自分に喝を入れる。この悪魔は俺を狙っている。その上、俺を命をかけてまもろうとした彼女を見捨てるだって? そんなことできるはずがないだろう!!

 そもそも、俺はまだ悪魔と戦ってすらいないのだ。何のために力を手に入れたって言うんだ? こういう時に戦うためだろうが!!



「ブリュンヒルデ!! 俺を信じろ。このままそいつの相手を頼む!! アイリス……悪いが力を……」

「わかっているわよ。アレイスター。あんたはこういう時にも逃げないで戦う男ですもんね」



 俺の言葉にアイリスが強い意志で頷いた。体は震えているし、色々とききたいこともあるだろうにだ。彼女に感謝しながら、俺はセーレを睨みつける。



「セーレ!! お前がなんで俺を狙うかなんてしらない、だけど、負けるわけにはいかないんだよ!!」

「はは、お前らに何ができるんだぁぁ? ここらへんにいる冒険者どもとも戦て見たがみんな雑魚だった!! まだ、ミノタウロスやサハギンロードの方が手応えあったぜぇ ああ、でも、お前ら人間が命乞いする様はみていてきもちよかったなぁ!!」



 俺の言葉にセーレが馬鹿にするように笑った。ああ、こいつのせいでミノタウロスやサハギンロードが表層に降りて来ていたのか……そして、犠牲になったであろう顔も知らない冒険者達の事を思うと、怒りが湧いてくる。

 こいつは、彼らを快楽のために殺したのだ。まさに、英雄譚に出てくる悪辣なる悪魔である。



「アイリス!! 全力で魔法を放て!!」

「でも……いえ、わかったわ!! 紅の炎よ、我が願いを持って限界せよ……」



 俺がセーレの方に駆け出すとともに、彼女の詠唱が始まりこれまで溜めていたであろう魔力が杖の先にたまっていくのを肌で感じる。

 上級魔法だ。これまでの初級魔法とは違い、比べ物にならないほどの魔力である



「全てを燃やし尽くせ!! 大爆発ビックバン!!」

「貴様!! 戦乙女ごと焼き払うつもりか!! そのやり方、まさしく魔帝の後継者だなぁぁぁぁ!! おい、女ぁ、どけ、このまま一緒に焼かれるぞぉぉぉ!!」

「うふふ、先ほどまでの余裕はどこに行ったのですか? 私はマスターの役に立てるならば本望ですよ。それに……この方は私を見捨てたりなんかしませんよ」

「当たり前だ!! 戻れ、ブリュンヒルデ!!」


 

 アイリスの放った圧倒的な熱量を持つ巨大な火の玉が俺を追い抜いて、ブリュンヒルデたちへと向かっていく。そして、セーレを押しとどめているブリュンヒルデの背中に迫ると同時に俺は、彼女の召喚を解く。

 ブリュンヒルデがカードにもどると、そこに残されるのは驚愕の表情を受けべているセーレだけとなり……



「うぐぁぁぁぁ!!」



 すさまじい爆発音と共に、悲鳴が響く。そして、俺は歩みを止めずにそのままセーレがいた所へと走り続ける。

 そして、煙の中から出てきた、羽は無惨にも焼け焦げて、右半身も炭のようになっているセーレにとどめをさすべく一撃を放つ。


「くそがぁぁぁ!! 人間ごときが……」

「雷光突き!!」



 何度も練習した突きが、上がったステータスも相まってそのまま威力と速度を増して、セーレの心臓をを捕らえ……ることはできなかった。



「その程度で悪魔を殺せると思ったのかよぉぉぉぉぉぉ!!」



 魔力による結界だろうか? あと一歩という所で剣がとまってしまったのだ。頼む、あと一歩なんだ……なんとか……



「殺せるさ、そのために僕がいるんだからね」



 蝙蝠が流暢にしゃべるとともにまるで吸い込まれるようにして、魔剣に吸収されていき、圧倒的な魔力を放つ刃がそのままセーレの心臓を貫いた。



「な……その力は……」


 そして、こいつは最後に俺をまるで先祖の恨みの主であるかのように憎悪に満ちた目で睨み……



「ああ、クソ……また歴史が繰り返されちまうのかよぉ……魔王様……ごめんなさい……俺は……」



 徐々に俺が剣を差したところから徐々に灰と化して風に流されていった。俺は大きく息を吐くと同時に、そのまま大きく息を吐いた。

 俺は深層の魔物である悪魔を倒したのだ。正直今回のはまぐれに近かった。ブリュンヒルデという切り札に、セーレは俺を……俺達人間を見下していた。だからこそ、あいつはブリュンヒルデと戦っている時も俺とアイリスを一切警戒していなかったのだ。そのおかげで意表を突くことができた。



「えへへ、やったわね……」

「アイリス!!」


 魔力を使い果たしたからだろう。フラフラと倒れそうになった彼女を慌てて駆け出して支える。柔らかい感触に少しどきりとしながらもちゃんと呼吸があるのにほっとする。

 もう誤魔化せないだろう。彼女がおきたら能力を説明しないといけないだろう。そう思った時だった。脳内であの時と同様に声が響く。



『悪魔を倒したためマイナス召喚のランクが上がりました。召喚できるものが増えました。また、スキル『限定召喚』の使用が可能になりました』



 なんだって? また新しい力を手に入れたのか?



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