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【12歳終了】


 よいしょと身体を起こして鳥の身体を描いていく。あくまでスケッチだから、清書は後でゆっくりやる事にした。そして私が描き終えたスケッチを火の鳥はジーッと見つめ、どこかへ飛んで行ってしまった。方向からして竈に戻ったのだろう。


「やれやれ、疲れた…」



 翌日、雪の層が低くなっているように見える。溶け始めた雪の合間に回収し損ねたフルルフォーンの角が埋まっているのを発見した。ずいぶん立派な角の様で掘り出すのが大変だった。途中で火の鳥がやってきて角の周りの雪を溶かしてくれなかったら2時間は格闘していただろう。助かった。


 彼が私の肩にとまっているといつも小突いてくるフルルフォーンがやってこない。この屋敷の今までの住民は火が苦手な者ばかりだから仕方ないけどね。私は火の鳥の頬の当たりをマッサージしてあげた。


 春の月に入ると雪は随分解けて鶏小屋も姿を見せた。小屋はどういうことかぺちゃんこになっていなかった。考えてみれば、今までだって雪は降っていたのにここは無事だったのだ。何かしらの仕掛けがあるのかもしれない。アラネペレは当然無事だった。目が覚めた時お腹が減っていたら可哀想だから鳥の骨やエビのカラなどが出たら小屋の中に入れてあげようと思い、今夜の夕食のメニューを考える。


 そして越冬期を終えたメリアキリサが庭を飛び始めた頃、事件は起きた。


 ビビビビという音が聞こえて振り向くとメリアキリサがこちらに警戒態勢をとっていたのだ。


「え?え?」


 当然パニックになって思わず肩に乗っていた鳥を抱きしめてうずくまると、メリアキリサは余計に警戒音を出して寄ってくる。


 何故突然の敵対行動?今は育児の時期だから気が立ってる?でも巣には近づいてない。そもそも彼らは冬が来る前の彼らか?でもあのコロニー以外入る許可は出していないし…。


 頭は原因追及の為に動くのに、現状打破の案は出てこない。攻撃はまだされていないが、様子を窺う為に顔を上げたら刺されるのではないか。そんな恐怖で動けずにいると火の鳥が腕の中から無理やりに出てしまった。


「待って!ダメ、危ない!!」


 鳥はバサバサと羽ばたいて竈の方へ飛んで行き、メリアキリサも鳥を追いかけてみんな行ってしまった。


「え…?…ああ!」


 なんだ、つまり。彼らは知らない間に敷地に入っていた魔物を警戒していただけなのだ。


「いや!ああ、じゃないよ!」


 自分に自分でツッコミを入れながら飛んで行った彼らを追いかける。やはり竈の上に火の鳥はいて、メリアキリサ軍と向き合っている。火が嫌いなメリアキリサたちは距離をとってホバリングしていた。


 しばらく見つめ合っていたが、火の鳥は竈の中へ帰っていき、メリアキリサは私に気付いて飛んでくる。


「ごめんね。私が彼を招いたの。びっくりさせちゃったね」


 そう言う私に「やれやれ」というように首を傾げて彼らも各々飛んで行った。話し合いが終わったことは察しがついたが、一体どんな会話が成り立っていたのか。アリエルが修行を終えて帰ってきたら教えてもらおうと思い、私も今日の仕事に取り掛かる事にした。



 そして雪がまばらに残るくらい暖かくなったころ、待ちに待ったキャロル達がたくさんの物資を積んでやってきた。


 石畳の通路を駆け出す。


 ぬかるんだ敷地の外で泥が跳ねるのもいとわずそのまま馬車から降りたキャロルに飛びついた。


その暖かさと孤独の終わりに改めて私は春を実感するのだった。



【12歳終了】


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