新たな住民は火の鳥
雪が止んだのは冬の月があと5日で終わる日。厚い雲が心なしか薄くなっているように見え、それは冬の終わりのカウントダウンだった。とはいえ、この分厚い雪はいったい何日で溶けるのか。
「せっかくだし、遊んじゃおっかな」
まだ雪は柔らかい。これから溶けたり凍ったりしてサラサラを楽しめるのは今だけだろう。今生では雪遊びなんてほとんどしたことないから、ちょっとワクワクしながら外へ飛び出した。
雪だるまをつくって門の横に衛兵みたいに2つ作ってみた。3段重ねの雪だるまは一番上に積むのが大変で、途中サイズを小さくしたが、中々の出来だ。バケツを帽子にしてほうきを槍のように身体の横につけて完成。
「よし!次!」
雪遊びついでに通路も開拓していく。たくさんの雪玉を作ってスノーランタンを道沿いに並べて見たら、周りの雪の壁も相まって幻想的な道が出来た。1日中雪遊びをしていたが、2メートルを超える雪の壁に対し、手動で屋敷まで道をつくる事は出来なかった。けど、これはこれで秘密基地みたいで素敵。まだ日が短い為スノーランタンに火を灯すと十分火の明るさが映えて見えた。
「素敵!」
パッと振り返って誰か探すが、当然誰もいなくて。それが少し残念だった。
「キャロルにも見せたかったな」
独り言は雪が吸収して響きもしない。メリアキリサも冬眠中。火のゆらゆらと揺れるそこに腰をおろして空を見上げた。月も星も見えないと本当に真っ暗だ。段々と汗もひいて寒くなってきたけれど、スノーキャンドルが綺麗でまだ見ていたかった。
ぼーっとしていたら門の前から物音がして振り返ると、不思議な鳥が地面にたたずんでいた。
「火の鳥?」
日本のファンタジー作品を思い出してつぶやくが、鳥は反応せずにトントンと跳ねる様にして近づいてきた。冠羽や翼、尾羽の先端から火がチロチロしているが、この分厚い雪を解かすほどの火力ではなさそうだ。
そういえば、SSランクの魔物にゴッドラプタという記述があった。絵や写真などはなく、文字のみだったのですぐに思いつかなかったが、火の鳥を連想させるものはそれしかなかった。
「……もしかして、入りたいの?」
ジーッとこちらを凝視するだけの鳥に尋ねるが、人語は理解できないのか時折するゆっくりとした瞬き以外は何も反応を示さない。
「まあ、今燃える物ないし……。いいか」
一応「悪い事しないでね」とだけ言ってから許可を出すと火の鳥はトントンと門をくぐってきた。そしてスノーキャンドルの傍に来て大きく口をあけたかと思うとキャンドルの火を吸い込んでいったのだ。
「え?!カー○ィ?!」
思わず前世の食いしん坊スアマの名を口に出してしまうほどの吸引力。6個あったキャンドルの火を全て食べ終えると火の鳥は元気になったと言いたげに翼を広げてこちらを見上げる。
「確かに、先端の火が少し大きくなったかな?……取り敢えず家に戻るか」
火の消えたキャンドルを回収してソリを押して雪の壁を登ると、火の鳥はソリのバスケットに乗ってきた。物凄く焦って前に回り込んでみたが、鳥から出る火がソリを焼くことはないようだったので、そのまま屋敷まで付き合ってもらうことに。光源がこの鳥だけになった今、それはとてもありがたいことだった。
言葉が通じない火の鳥を家の中に入れるのは流石にはばかられたので、出入り口の屋根の下にカットしたフルーツを置いてその場にとどまってもらうことにする。彼はソリのバスケットが気に入ってしまったようで、毛布や別の籠を用意してもそこから動こうとしなかった。
「それ、大切なものだから燃やさないでね。おやすみ」
相変わらずジーッとこっちを見るだけの火の鳥にそう声をかけて、家の中に入る。後は寝るだけになって暖炉の火を消す前に、ふと思い至って松明を作り暖炉の火を移して、火の鳥の元へ行ってみた。カットフルーツは綺麗になくなっていたので火だけが彼の食事ではないようだ。が、松明の火を見た鳥は物凄い食いつきを見せてヒュオッと火を吸い込んだので、やはりデザートを用意してよかったみたい。




