『ロックロック』いざ、仲間の為に
「アンタがこの屋敷の主か?」
「共存している彼らの所有権は彼らのものです。ですが、敷地と建物の権利は私にあります。環境保護の為、放棄された無機物の撤去も私の責任です。」
金に興味がない事はこの一言で十分に理解できた。Sランク素材をゴミのように扱う只人など存在しない。
「なるほど、無機物ね…。いや、先ほどの態度を詫びるよ。明日また出直す。今度は正面の門から来るからよ。」
「その際はドアベルを鳴らしてください。勝手に侵入を試みると結界魔法で痛い思いをしますから。」
この屋敷の攻略方法は正面からの正攻法だったことがこの時ようやく判明したが、後の祭りというものだ。俺たちはすごすごとその場を後にした。
そして街に戻った俺たちがしたことは身支度を整える事。衣類を洗濯水に沈めてザブザブ踏みながら話し合いを始める。
「だいたいあんたたちのあの態度は何なのよ?!ホレイシオも大概だったけど、ルーサー、あんたまで情けない!」
「面目ない。子供として接するか、大人として接するか迷ってしまいました。」
「あのくらいの年の子なら大人として扱って問題ないわよ。背伸びする年頃だろうし。でも今回はイレギュラーだわ。実年齢が見た目通りだと思わない方がいい。」
マージェリーとクレアに糾弾され、ルーサーは大人しく反省している。けれど、それは今だから言えることだ。俺はお前の見方だぞ。
「それより何を手土産に持って行く?」
ダリルは洗濯水から足を上げ揉み洗いに切り替えた。ついでに話も切り替える。
「金に興味がないのが唯一の救いだったな。」
「救いかなぁ…。」
俺らには金がない。生きたまま満月の光に一晩あててから採取した夜光蝶の鱗粉、ヴォルカンドラゴンの逆鱗、青かびから採れる薬効、吸血鬼の灰など、自分たちが必要な分を確保し他を売りさばいた分の金は全てヒューバートの解毒医療につぎ込んでいる。いつまで続くか分からない医療費を削られなかったことは幸いというべきかもしれない。だが、金で解決できない事が救いと言い切っていいのかは疑問だった。
洗濯が済み、昼食をとり、男女別れて公衆浴場で汚れを落としてる最中も頭を悩ませたがやはり解決策は出なかった。
「労働力の提供しかないと思うんだよね。」
「俺らを敷地に入れると思うか?隷属魔法を使えるなら話は別だけどな。」
数十年前に禁止された魔法を口にするとルーサーが口元に手を当てた。
「……いや、出来るかもしれません。」
「は?」
「出来たらなら、降る覚悟はありますか?」
そうして翌日教会へ出向き、俺らは制約書を作成した。
「…でもさ、これで敷地内に入れればフルルフォーンの生態観察が可能になるし、悪いことばっかじゃないよね!」
道中、クレアの言葉に皆が顔を上げた。
「そうね。内側に入ればあの魔道具の構造も分かるだろうし!」
「人嫌いの魔女に嗜虐趣味があるとも思えないし、まああってもうちにはルーサーがいるから大丈夫だろう。」
「回復魔法はお任せください。」
「いや怖い事言わないでよ。終わらない拷問とか死んだ方がマシよ!」
そして俺らはたどり着いた屋敷のドアベルを鳴らした――――。




