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そうは問屋が卸さない


 私は空欄に署名をして、制約書を箱に戻た。結界の外へ出て、5歩離れた彼らの元へ歩みを進める。


「はい。」

「…いえ、フォレスト様、いけません。制約書は制約主か神殿で保管するのが通例です。」

「先日も少し話しましたが、私が嫌がった理由は特例を許す事で起こる面倒ごとの為です。『前はくれたじゃん』『また仲間が怪我したんだよ』って言えば提供が当たり前にされると思われる事、あと情報の流出です。私とこの屋敷の事と、フルルフォーンの素材がただで手に入るとうわさが流れることが、面倒なだけなのです。だから、あなた方に特別望むことがあるとすれば、そうですね。沈黙を守ってください。」

「……それだけですか?」

「国王にその角の入手経路を聞かれた時、同じようにそれだけと言えますか?」


 我ながら意地悪な事を言ってしまったが、吐いた言葉は戻ってこない。黙ってしまった彼らに誤魔化し笑いを浮かべながら言葉をつづけた。


「こっちもわけありなんです。もし、私の名前が外で広まったなら、改めてその制約書を行使します。そうならないように、あなた方の良心の片隅に私がひっかかる事をここで祈っています。それでは、さようなら。ご自愛ください。」


 言いたいことだけ言ってさっさと家に閉じ籠った私に、その後彼らがどんな顔をしていたかは分からなかった。でも金属の擦れる音が遠ざかっていったことでまたいつもの平穏を取り戻したのだった。



 2日前までは、そう思っていた。


 2日後、完全回復したヒューバートと共にロックロックは改めて挨拶に来た。鉄の門越しに回復へのお祝いの言葉を述べ、その場を去ろうとしたのだが、ここで食い下がってきたのはクレアだった。

 要約するとフルルフォーンの生態をまくしたてる様に話した後、どうやって定住させたのか等の質問を投げかけられた。

「フルルフォーンはストレスに弱く、肉は美味、そして角には薬効がある為人間だけでなく野生の魔獣、獣にも狙われやすいんです!もし飼育が可能になれば○◇*//~~~」


 傍らのメリアキリサがビビビと不愉快そうな音を立てている。彼らも私と似たり寄ったりの人見知りだなぁと思いながら、私は相槌を適当に打ち、ゆっくりゆっくり後ずさり。そのまま木の陰に隠れる様にして彼らの視界からフェードアウトしてアラネペレの糸の採取に取り掛かった。せっかく張った糸を回収される様子を見ているアラネペレの視線が冷たいような気がするが、そこは見ないふりをした。


 翌日、ドアベルを鳴らされたが知らんぷりして獣舎の掃除を続けた。今日はそんなに落ちてない花の結晶をポケットに入れていたら子供のフルルフォーンにじゃれつかれて前のめりに転び、まどろんでいた牡鹿に突っ込んでしまいそうになったところをメリアキリサに救出されるというなんとも格好のつかない場面を目撃される。襟首と肩口、後ろで結んでいるエプロンの紐をメリアキリサに固定されてつま先立ちになっている私に衝撃を受けたのは魔導師の二人だった。

「ど、どうしたらそうなるのよ?!」

「なんなんだあんた!!」


 いや、毎日人んちの外周グルグルしてるあなたたちが何なのよ…。


 もう面倒でしかない彼らより、フルルフォーンとの衝突を回避してくれたメリアキリサにお礼を言った。大分コミカルな絵面になってしまったが大惨事一歩手前だったのだ。私が頭から突っ込んだ場所はちょうど立派な角の先。下手したら失明していたかもしれないのだから、丁重にお礼を言った。


「何かしてほしいことある?」

 一言声をかけると彼らは一斉に結界の外へ飛んで行ってしまった。また珍しい共存相手でも連れてくるのだろうか。ポケ~っとメリアキリサの飛んで行った空を見上げている私に外の魔導師2人がまだ何か言っているが、こちらに雑談をしている暇はない。彼らにバイバイ、と手を振って一輪車をおこし、果実のパトロールへ向かった。


「いや、バイバイじゃないのよ!!!」


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