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2度目の制約書


 昨日約束した通り、彼らは正面の門から現れた。昨日とは打って変わって無精ひげは生えてないし、髪もセットされている。服は同じものだが洗濯とアイロンがかけられていてこちらに敬意をはらっている事が感じられた。


「先日は失礼をした。改めて、戦闘ギルド所属パーティーロックロックの団長、剣士のホレイシオ。」

「副団長を務めてます。神官のルーサーです。」

「魔導師のマージェリー。」

「同じく魔導師のダリル。」

「テイマーのクレアです。以上、休職中の戦士ヒューバードを除く5名がご挨拶申し上げます。」


 いや、本当に昨日とえらい違いである。流石にそんなこと言えないので日本人お得意の誤魔化し笑いを浮かべながらこちらも自己紹介をした。

「イヴリース・フォレストです。それで、ヒューバード様というのが負傷しているお仲間という事でよろしいでしょうか?」

「はい。その通りです。先日も申し上げた通り、フルルフォーンの角をお譲りいただきたく参りました。」

「そうですか。でははい、どうぞ。」

「は?」


 布でくるんで木に立てかけておいた角を持って行き、彼らに5歩後ろに下がるように指示をして結界の外側に置き、今度は私が下がる。

 前のめりに確認をしたロックロックのメンバーはみんなどこか涙目で、何ならマージェリーと名乗った女性は泣いて崩れ落ちていた。


「あ、ありがとう…、でもなぜ、何があなたを心変わりさせたのですか?」

 ルーサーの言葉にみんな顔を上げこちらを見つめる。やめてくれ、人見知りは注目を集めるのが好きじゃないんだ。

 キョドキョドしないように気を付けながら、曖昧に笑って正直なところを話すことにした。


「実は私にはそれの活用方法がなくて、拾ってもオブジェにする以外使い道がないんです。」

「は?オブジェ…。まあ、確かに、そういう使い道もありますが…。」

「あなた方がお金欲しさに乞うていたとしても、結果的に薬の材料になって誰かの身体を癒すなら、私が飾っているより有意義でしょう?」


 みんなが奇妙なものを見る目でこちらを見ている。いや、分かるよ。だったら昨日すんなりくれよって思ってるんでしょう?でもこっちも人間だ。見下してくる人間に都合のいいように使われるのは癪に障る。多少の意趣返しは許されるだろう。


「一応、こちらも相応の覚悟をもってここへ来た。……これを。」


 そう言って細長い木の箱を結界の外側へ置いて彼らはまた5歩下がった。私は手首だけ外へ出し、箱をその場で開けた。この結界、物理攻撃は言わずもがな、魔法攻撃も跳ね返してくれる優れものなのだ。ちなみに物理攻撃は結界から手を離せばそれ以上の衝撃は返ってこないが、魔法攻撃は追撃機能付きとの事。どれくらい追いかけられるのかは知らないが、ビックリ箱みたいにトラップが発動しても被害が最小限に抑えられるよう気を付けるに越したことはない。


 箱を開けると見覚えのある用紙がリボンで筒状に結ばれそこにあった。

「制約書?」

「ご存じなんですね。」

 ルーサーがメガネを押し上げて言った。けれどべつに答えを求めていないようで、誓約書の内容確認を促された。


【我、ホレイシオ・ガネル並びにヒューバードを除くロックロックのメンバーは、主に対し一年間の従属を約束し、その契約を記す事とする。

代表、ホレイシオ・ガネルは、本契約書の記載の趣旨に合意し、ここに署名する。

ホレイシオ・ガネル

以上、本契約の成立を証するため、制約主がここに署名する。

_________】


「従属?」

「奴隷禁止法が制定されてから、それが我が国の限界だ。けれど、きっと失望はさせない。」


 本気の目というのは苦手だ。母親の本気で私を憎む目を思い出す。意思の強さはそれだけで強力な盾で刃だ。なにより居心地が悪いのは、彼らの本気は誰かの為のものなこと。母とちがって。理不尽で自己中な感情をぶつけられたなら、もっとドライに切り捨てられるけど…。あぁ、やりづらい。


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