第一王子の親友の話(1)
飛ばしても特に問題ないです。
俺とレグルス・オリファントの出会いは幼少期の頃だ。第一王子として生まれた俺の遊び相手として用意された複数の貴族のうちの1人にこいつはいた。自己紹介の時、俺と自分は「遠い親戚」と言ったこいつの表現がなんとも詩的で美しく感じた。普通はこういう時「自分も王族の血を引いている」とか「祖父同士が兄弟」とかいう。
レグルスのそういうところが両親も俺も気に入り、実際遊んでみたら予想以上に一緒にいて楽だった為、今でもつるんでいる。
何よりこいつは大層面白い奴だった。育ちの悪さは感じさせないが、貴族としての心得が完ぺきではなく、時々ボロを出す。
例えば、貴族生まれの子供は誰でも衝突する壁に甘えが許されないというものがある。実際は出来ていなくても外でわざわざ口外したりはしない。それをこいつは会話の中でサラリと言ってしまうのだ。
一例として、レグルスの家にお忍びで両親と食事に行った時のことを上げよう。父がレグルスに歳のわりに落ち着いていて頼もしいと言った時。
「私は年相応だと思いますよ。悪夢を見たら兄と一緒に寝てもらっていますし。」
といった。レグルスの両親は慌てて息子の不作法を諫めた。
またある時、彼は自分の両親に向かってこういった。
「貴族として見る前に僕たちを息子としてみてください。父さんと母さんが僕たちを個人として見てくれなかったら僕たちは貴族社会のただの歯車になってしまう。」
これは兄であるアレキサンダーに対して厳しい言葉を発した父親に向かって言った言葉らしい。当時8歳の息子に言われた言葉にショックを受けた父君は、すっかり仲良くなった俺の父に悩みを話し、それを聞いて知ったことだ。
そして、レグルスの異常性はただの変わり者では止まらなかった。大多数の人は3歳~5歳で魔力が使えるようになり、魔力容量も図れるようになる。また、8歳~10歳のタイミングで大抵の貴族はスキルチェックを行う。
そこでこいつは平均の2倍の魔力量に加え、【経験値2倍】【デバフ耐性】という前代未聞のスキル2つ持ちであることが発覚した。更に、この世界に存在はするが見える者が限られている精霊を認知出来る【精霊眼】まで持っていた。
比較的新しい偉人が「チート」という言葉をよく使っていたらしい。おそらくこういうやつに使われる言葉だったに違いない。
そんなチートな友人は貴族の次男坊。外見も悪くないときた。人生楽しくてしょうがないに違いないと誰もが思っている。が、実際はそうじゃない事をこいつの家族と俺だけは知っていた。