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新たな住民は苔人形


「…害獣駆除はこの屋敷が完成した際に行ったのでこの屋敷に巣があるとは思えません。やはり外部から入ったと考えるべきでしょうね。けれど、アラネペレは魔物は食べないし…。…少し席を外します。」

 そう言ってクレメントは再度外に行ってしまった。


クレメントを待つ間、私たちは先日捕まえたシカを調べてみることにした。

「あ、あった。フルルフォーンっていうみたい。その個体によって角に咲かせる花は異なる。キリアメリサと共存する個体もいる。メリアキリサは索敵の能力を、フルルフォーンは高純度の花の蜜を提供しあっている。素材ランクと遭遇ランクSだって。すごい子たちなんだね。」


 他にも寿命を終えた花は結晶化し、装飾品として高値で売れるとか、生え変わりで落ちた角はフルポーションの材料になるとか書いてある。花の咲く角というより金の生る角って感じだ。

「あの蜂は?」

「メリアキリサね。えっとね。」


 以前読んだことのあるページを開いて読み聞かせてあげた。

「じゃあ僕が襲われたのは縄張りに入ったからかな。」

「火事で気が立ってた所為もあるかもね。今まであんなの見たことないもの。」

「それはイヴ様の許可なく入ってきた人がいなかったからでしょ?警備兵なんだ、きっと。」

「なるほど。そうかも。」


 アリエルは字が読めないので記載されている写真と読み聞かせた内容で図鑑を楽しんでいた。アラネペレのページをちょうど読み終えたところで、クレメントがバタバタと足音を立てて戻って来た。


「どうしたの?」

 クレメントらしくない登場の仕方にビックリしながら問いかけると、息を切らした彼は手の中の緑色の物体を突き出してきた。

「…苔人形?」

「そういえばそんなのもいたな。あれも生きてるの?」

「え?小屋の中にいたの?」

 呑気な私たちの会話に「エルブエルバっ」とクレメントが言った。


「エルバ…?」

「ちがうよ、エブ、エブルエブバ…?」

「エルブ、エルバ。森の妖精と呼ばれる生き物で、幻の魔物とまで言われてます。イヴ、あなたこれどこで捕まえました?」

「え?小屋の中に入ってたんでしょ?私が捕まえた物なんて入れてないけど…。」

 そこで、はたと気が付き、クレメントの手から解放を求める小さい生き物を受け取ってよく眺める。


「これ、花から産まれたんじゃないかな?」

「なんですって?」

 クレメントが食い気味で聞いてきた。

「一昨日くらいにメリアキリサからもらった種が蕾をつけてたの。中に胎児みたいなのが透けて見えてたから、鶏小屋に入っていたならそれじゃないかな?」


 掌の上にのせてあげると動く苔人形はクレメントに握られて剥げた部分の苔を撫でていた。グッと力を入れて力むと剥げた部分から苔がまた生え、満足そうにしている。可愛い。

 身だしなみを整えると、今度は私と目を合わせて観察しだした。と思えば人間でいう耳の部分を手で揉み出し、そこから新芽のようなクルクルの葉っぱを出して満足そうにしている。か、可愛い。


「エルブエルバは個体によって形状が異なります。人型のものを見たのは初めてです…。」

「へぇ~。…君も我が屋敷に住むのかな?」

 こちらの声に反応はしても何を言っているのか分からないようで、人の指で遊びだした苔人形を窓から出してやる。クレメントが「あ!!逃げますよ!」と声をあげるので思わず笑ってしまった。


「あははっ、居心地が良ければまた来るよ。」

「イヴ、これはすごい事なんですよ…?学会で発表出来るレベルの話です。」

「発表出来るだけの学もコネもないし、それにメリットもないもん。」


 クレメントに鶏小屋に閉じ込められている他のエルブエルバも出してあげるように頼んだ。

再度外へ出て、戻って来たクレメントはエルブエルバのことは取り敢えず置いておくことにしたようで、結界の設計図や作業工程などを見直していた。わたしとアリエルはその作業にくぎ付けになった。

クレメントが手をかざすと文字列や図式、動画までもが空中に浮かび上がるのだ。SF感がすごいが、これも魔法の成しえる技だというのだから素晴らしい。


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