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山火事の原因と鎮火の真実(1)

レグルス視点


 予定より2日遅れてダンジョンに出ると出入り口に騎士団が待ち構えていた。面倒ごとはもううんざりだ。ため息を飲み込み、ジェイビズが口を開くのを後ろで待つ。中々口を開かないジェイビズに仲間たちは怪訝な様子を示した。


「ジェイビズ・ヤソン、貴様を異端宗教団体ウェスペルリニウス信者の容疑で捕縛する。」

「な、何っ、はぁ?!あ、あ、ありありえなっ、何をバカな事をっ!」


 酷い狼狽えようだが仕方のない事だ。それが本当なら大問題だ。ウェスペルリニウス教、通称ウェスペル教は黒魔術や人の命を弄ぶ外法を行うことを是としている。この国では禁止されている奴隷売買も

一つの手段として行う宗教であるため、ファルクーガ王国では取り締まりの対象だった。


 索敵魔法を起動するとフォーマルハウトが木の物陰に隠れてこちらを窺っているのが確認できた。もちろん彼だけではなく、数名の騎士団が逃亡防止の為あちこちに身をひそめている。


 暴れるジェイビズを取り押さえたアルベルト・グラックスは部下に指示を出した後でこちらを向いた。

「悪かったな。ウェスペル教が動きを見せたんでそっちを優先させてもらった。」

「それだけではないでしょう。ヤソン殿の逃亡防止も兼ねてませんか?これ。」


 おかげでこっちは死ぬほどキツイ1週間を過ごす羽目になったのだが、アルベルトは喰えない笑みを浮かべて悪びれもしない。


「レグルスがいて死人が出るとも思えないしな。はっはっはっ!

 まあ、悪かったとは思ってるさ!ほら、ポーションだ。飲め!」


 力を驕るつもりはないが自分一人なら確かに大したことなかっただろう。だが他人の面倒も見ながらだと話は大きく違ってくる。


恨み言の一つでも言ってやろうかと思ったが、ポーションを渡した隊長の手が『注目』の形を作ったことで俺たちに緊張が走る。対面している俺たちにしか見えないように、自ら背で手を隠しながら隊長は『警戒。作戦実行中』と指文字を作った。


「う、ああぁぁぁぁ!!」

 突風が吹き、ジェイビズを取り押さえていた騎士の数名が吹っ飛んだのはその直後だった。急いで簡単な障壁を張ってそれを防ぎ、肉体強化で走り出したジェイビズの進行方向に魔法を展開しようとして踏みとどまる。作戦は実行中と隊長はいった。身を隠している騎士たちは走るジェイビズに捕縛魔法ではなく追跡魔法をかけたのが見え、肩の力を抜いた。


「はっはっはっ!」

「いや、はっはっはじゃないですよ。」


 つまり、泳がしてアジトを突き止めようという事らしい。

 

 ポーションを飲まされたということはこの捕物劇に俺らも参加させられるという事だ。ルーカスの声にならない悲鳴が虚しく響くなかで俺はただ天を仰ぐしかできなかった。


 追跡を行う事20分。普通に考えて騎士団がこれだけいて逃げ切れると思う方がおかしい。が、ジェイビズはおかしいやつだった。岩に見える幻覚魔法がかけられているその場所には地下へ続く階段があり、合言葉を大声で叫んだジェイビズはいそいそと下へ降りて行った。


「罠か?」

「いや、馬鹿なだけだろうな。」

「……否定できない。が、一応警戒するに越したことはない。」

「まぁ、組織の人間が全員あいつレベルの馬鹿ではないだろうしな。」


 フォーマルハウトの班の隊長を務めるロイド・バークリーとアルベルトで次の方針を決め為の会話なのだが、なんとも緊張感の欠片もない。


「眠り薬を焚いて数を減らすか。」

 アルベルトの提案で方針が決まり、魔法が得意な数名で薬草を燻す事になった。作業を始めた彼らを囲むように全員ばらけて配置につく。そこで、辺りを見回っていた数人の騎士が戻ってきて隊長達に報告を行っていた。距離があるため声は聞こえないが、肉体強化の応用で動体視力を底上げして読唇術を使い会話を読む。


『ここから30m程離れた場所に大型獣を入れる檻があります。中には子供が。』

『子供?人身売買の商品か?』

『分かりません。他国の者もいましたが、全員トップコートを纏っていませんでした。』

 トップコートとは魔素から身を守る魔法かその効果がある魔道具と指す。魔人でも作りたかったのだろうか?死霊魔術師が多く在籍している事でも有名な教団。何を考えているのかは捕まえて尋問すれば分かる事だが、禄でもない事は確実だろう。


 檻のカギを壊すか否かの話をしている彼らをしり目に眠り薬を焚いた出入り口から黒いローブで顔を隠した如何にもな奴らが出てきて戦闘が始まった。気付け薬でも服薬したのか眠り薬が効いていない。


「そんな簡単じゃねぇよなぁ!」

 ルーカスが物理攻撃で相手を落としていくのを魔法でサポートしながら全体に目を巡らせる。日が完全に落ちて悪くなる視野を魔法で補う事で、離れた場所から煙が出ていることに気付いた。


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