保存食を作りましょう
ここ数日お客さんがたくさん来たので作り置きの食糧が一気に減った。午後はパンやクッキーなどを作っていく事にする。それとボーリスのくれたベゴニアのジャムも。砂糖は胡椒ほどではないが高級品なので蜂蜜で作ってみた。空っぽになったハニーポットを洗ってからいそいそと勝手口に向かってお目当ての隣人を訪ねる。
「こんにちはー!」
声をかけると巣から出てきたメリアキリサに交渉を持ち掛ける。このハニーポットに、あなたたちの生活に支障がない程度のハチミツを分けてほしいというと、快く了承してくれた。…多分。
誘導されるがまま、巣の近くの枝の股にポットを置き、キッチンへ戻った。
過去訪れた異世界人の偉業の中には国を3つ滅ぼしたアンデッドの軍勢を屠ったものとは別に、文化の発達貢献がある。このフワフワの食パンが作れるのも彼らの豊富な知識によるものだ。
特別な趣味もない一般的な女子高生だった葉月にはそんな知識ないので、本当に良い仕事をしてくれた。焼きあがったパンを急いでケースに収め、食糧庫に保管しながら強く思った。しかし、何故日本人でありながらパンに力を入れたのだと!!
という事で、先日補充された食料の中にある魚から手ごろな大きさのものを選んで魚醤をつくる事にした。ちなみに作り方は小学校の頃、理科の授業で作ったものを参考にしている。作成過程で物凄い臭いを発していた事と、半年間という時間を要したことで強く印象に残っている授業の一つだった。
まず、鰯っぽいこの魚をぶつ切りにする。血抜きが済んでいるのがありがたいね。魚に対し塩20%の割合で瓶の中に入れる。魚の上に、ラップをかけたいところだが、空気が触れなければいいのだろう。手ごろな布巾を熱湯消毒してから魚の上にかけ、蓋をしてあとは保存。
瓶から臭いが漏れない事を祈りながら、何となく目のつくところには置きたくないので食器棚の下の戸棚に入れておく。半年後開封を忘れないように戸棚にメモ紙を張って完了だ。
この国は夏がない。春秋冬を繰り返すのでうっかり1年放置してもまぁ問題はないだろうが、冬にはお鍋を作りたいので今から準備が必要なのだ。
でも、日本酒がないのにおいしくできるだろうか…。誰か麹作ってくれないかなぁ…。
夕方に鶏小屋へ向かい、鉢植えの様子を窺うと昼間より蕾が光っている様子がハッキリ見えた。朝よりも蕾が大きくなっているようだったが、朝よりも不思議と不気味に感じなかった。多分中の胎児が三等身なのが透けて見えたからだと思う。このサイズで三等身の化け物って想像つかないし、何よりアラネペレも警戒していない。野生動物が警戒していないのなら大丈夫だろう。
次にメリアキリサの巣へ様子を見に行こうとしたところで一匹に遭遇した。朝お願いを聞いてくれたのと同じ個体かは分からないが髪を一房持たれて誘導され、引っ張られるままついて行くと予想通り巣の傍だった。ハニーポットを確認したら溢れそうなくらいいっぱいに入っていたので、お礼を言って家にもどり、零さないように注意しながら小分けの瓶に蜂蜜を移していく。メリアキリサの蜂蜜は美容と健康に効果があると本に書いてあったし、キャロルたちが来たら分けてあげよう。
作業が終わるころには日は完全に落ちていた。異変が起きたのはお風呂を済ませ、寝支度を整えていた時だった。




