12歳は年長者に転がされる
「すみません、魔導師長の呼び名が移ってしまって。イヴリース様とお呼びするべきでした。」
「いいですよ、イヴで。仲良くしてくれた使用人の人たちはみんなイヴって呼んでました。」
「では、俺とも仲良くしてくれるんですか?」
「え?だって、クレメントの家族だし、仲良くしないほうが変でしょう?」
なんだか、意味深な言い方をされてしまった…。でももしかしたら深い意味はないのかもしれない。だとしたら何だか感じの悪い返しをしてしまったかもしれない。
一秒にも満たない時間でグルグル考えているのが分かったのか、クレイグは口元を拳で隠して笑った。
「っふ、すみません。では、よろしく、イヴ。」
「んん?……うん。よろしく、クレイグ。」
からかわれている。そのことにモヤッとしたが、細かい事だ。気にしない事にした。途中で汲んだ水と鍬の両方を持たせたのは腹いせではない。全然違う。
「おじいちゃーん!助っ人連れてきたー!」
「どうも、クレイグです。」
「お、来たな。それじゃあ、お嬢、何か飲み物を貰えるかい?じじいは喉が渇いた。」
「はい。冷たい飲み物でいい?」
「あぁ、頼むよ。」
せっかくだからみんなに配ろう。レモンとミントと苺を入れたデトックスウォーターの作り置きがあったはずだ。以前ハーブがモリモリ生っていたので見栄えが悪くならない程度にと思って採ったら量が思ったより多くなってしまった為、余った分で作ったのだ。お風呂上りにでも飲もうと思ってたのだが、長年の粗食の反動で牛乳ばかり好んで飲んでて忘れてた。
「キャロルー」
「はい?」
「お水どうぞー。」
「わ、嬉しい~。…っん、おいしい!レモン水じゃないよね?」
「んふふ~見て!」
「かわいい~っ!絞らなくても味出るの?」
この世界でもレモン水は普通にある。が、デトックスウォーターのように気長な製法ではない。搾り機でレモンの果汁を絞って水と混ぜるのだ。
褒められてルンルンしながら2リットルのピッチャーとコップを持って外へ向かう。
「来たよー!」
「おお、重かったろう。ありがとう。」
重たいピッチャーを持っていながらだとコップは2つ持つのが限界だった。ボーリスとクレイグに一杯ずつ飲んでもらってから魔導師たちのところへ向かう。もちろんピッチャーの中のデトックスウォーターも褒めてくれた。中の水が減って見栄えは悪くなってしまったが、味は変わらない。クレメント達にも飲んでもらいキッチンへ戻ると晩御飯の支度をするのにちょうどいい時間だった。
「あれ?結局おじいちゃんの手伝いしてなくない……?」




