クレメント・フロイスとその息子2
鶏小屋に案内してアラネペレが入ったのを確認し、今度こそキッチンに向かう。今度こそ、今度こそ。
「お?おおお?!」
キッチンには裏口が存在する。そっちには流石に気を惹かれるものなんてないだろうと思って行ったらあった。物凄く目につく大きな蜂の巣が。
「すごい…。いつの間に…。」
スズメバチだったら怖いな、と思いながら遠巻きに眺めていたら巣からはメリアキリサが出てきた。
「なんだ、ビックリした。そっか、同居人になったんだ。」
ブーンとこちらによってくる1匹に籠を差し出してみるとそこに止まってからこちらを見てきた。
「今お庭に私の家族がいるの。危険じゃないから刺さないでね。」
こちらが話し終えると触覚をヒクヒクしてから飛び立った。私の周りを一周してから巣に戻って行ったのをみて、きっとわかってくれただろうと思いようやくキッチンへたどりついたのだった。
花を置いて走ってボーリスのところに戻ったら既に別の作業に移っていた。
「何してるの?」
「おや、おかえり。お嬢。」
木で何かを組んでいるボーリスが顔を上げて返事をした。先ほどフワフワな蜘蛛を捕らえていた木箱と同じものを椅子にしている。
「藤棚でも作ろうと思ってね。この庭には紫が足りないだろう?」
「そっか~。裏庭にはナスがあるけどね。」
「確かにな。ナスの花もそういや紫だな。」
「おじいちゃん、指示ちょうだい。私もやる!」
「そうだな、こりゃ力仕事だからクレメントから部下を1人もらっておいで。そのついでに鍬と水を持ってきておくれ。」
「はーい。」
結局大変なお仕事の手伝いは出来ないらしい。でも人手の補充も大事な事だろうから小走りでクレメントの元へ許可を取りに向かった。
「クレメント―!」
「はい?」
「あ、さっき息子さんに会ったよ!雰囲気似てるね!」
「そうですか。何か失礼な事をしませんでしたか?」
「全然。若いクレメントって感じだった。」
「はははっ!あいつは嫌がりそうだ。」
そうなのか、気を付けよう。でもクレメントがお父さんなのにそんなに嫌がるだろうかと思ってからまた脱線している事に気付く。
「お願いがあってきたの!」
「はい。」
「部下の人を一人貸してください。」
頭を下げてお願いすると流れるように頭を撫でられる。ふむ、とうなずいてから何の作業に必要か聞かれたので説明すると、作業中の部下に視線を移した。
「お前たち、体力の余っている奴は」
「はい!」
「はいっ!」
「はい!」
「いや、俺が行きます!」
「何でだよ!お前自分の腕の細さ自覚しろよ!」
「はぁ?!どっこいどっこいだろーが!」
「俺さっきまで休憩してたので行かせてください!」
「だったら俺休憩がてら行ってきます!」
「いや休んでろよお前は!」
「わぁ~…」
すごい勢いの立候補者に圧倒されて、そっとクレメントを壁にしてみる。魔導師は頭を使う職業だから、みんな気分転換が欲しいのだろう。挙手をした時にバキッボキッという音が肩から鳴ってびっくりした。
「……全く恥ずかしい。ボーリスにみっちりこき使うように言ってください。」
「ははは…」
「戻りました。あ、イヴ様。先ほどはありがとうございました。」
「あぁ、じゃあお前行け。」
「…はい?」
行きがけに説明してくれと言われたので移動しながら話すとクレメントの息子さんは快く引き受けてくれた。名前はクレイグだと言われ、そこでようやく自分も自己紹介をした。




