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クレメント・フロイスとその息子


「おや、凄い量ですね。」

 歩いているとクレメントに声をかけられた。籠の花を見てほのぼの笑うクレメントと疲労困憊気味の部下達との対比がすごい。

「あれ?…誰か外にいるの?」

 クレメントの部下が外に向かって声を張り上げているのが彼の背後に見えた。少し距離があるので生垣の外からの声はボソボソとしか聞こえない。

「ダンジョン探索して帰ってきた冒険者だそうだよ。この屋敷の魔道具全てが魔素を動力としているのは知っているかな?」

「うん。騎士の人たちが言ってた。」

「よろしい。では魔獣が出来る要因は?」

「魔獣が母体の遺伝子によるものと、魔素が原因で起こる突然変異?」


 うん、と満足そうにうなずくとクレメントは講義を続けた。

「この屋敷の結界を作っているのは外周に立っている6本の柱です。この森の高濃度の魔素でのみ成り立つ高性能結界です。半径2メートルの魔素をごっそり使います。」

「え?!じゃあ屋敷の中に出入りしているキリアメリサに影響でる?」

「いいえ、生き物の中に蓄積された魔力が吸収されることはありませんよ。あくまで魔素のみです。」


 頭を撫でられながら否定され、安心した。話の腰を折ってしまったのを謝ってから続きをお願いする。

「では、先ほどの突然変異による魔獣の発生についてですが、人間にも起こり得ることだとは思いませんか?」

「は!!本当だ!影響するの?」

「はい。なので、この森に入る絶対条件として、魔素から身を守る専用の魔法障壁を発動できる魔導師を連れていくか、同様の効果がある魔道具を身に着ける等の対応をしないといけないんです。」

「つまり、私が今無事なのはこの敷地内の魔道具がグングン魔素を吸ってるからってこと?じゃあ外にいる冒険者が外の生垣近くにいるのは、魔素から身を守るため?」

「よくできました。」

「あ!でも私、ここに来た初日に魔法かけてもらってないよ?みんなもそうだったよね?」

「1日のうちの数時間くらいで魔人や亜人になったりしませんよ。」

「亜人?!」

「かなり少ない割合ですが、そういう報告もありました。」

「へ~!すごいっ!へー!!」


 でも一言で亜人と言ってもケットシーやルナール、鬼人などの種類がある。適正などがあるのだろうか?講義のお礼を言ってからまたまたハッとする。キッチンへ向かわなければいけないんだった!


「キッチン、キッチン、キッチン、キッチ…ん?」

 なんだあれ?馬車の積み荷に降ろされていない木箱があったのでフラフラと向かって見てみる。

「逆さま?」


 籠を横に置いてパカリと持ち上げてみるが何もない。だれか椅子にでもしていたのかな?元に戻しておこう。

「わあ!!え?なに?!」

「あ、おっと!危な~。こいつ捕まえてたの知らせしてなかったんですね。」


 クレメントの部下が足の生えた毛玉を捕まえてくれた。しかも逃がした私を責める事もなく。良い人そうだけど、プラスティラス家では同世代の異性との接触は禁止されていた。その癖で少し逃げ腰になって返事が遅れてしまう。


「これ、遭遇難易度Sランクのアラネペレ。作る糸が貴重なんです。」

「逃がし、ちゃって、ごめんなさい…。」

「いいえ。」


 なんだか、この顔見たことあるな…。にっこり笑った顔をまじまじ見るのも気まずくて、手元のアラネペレとやらに視線をうつす。目が4つに足8本。


「蜘蛛?フワフワなのに蜘蛛…。」

「触れても大丈夫ですよ。どうぞ。」

「……フワフワ。ッハ!あの、今日帰らないそうなんです!クレメントがさっき言ってて!」

「父さん、じゃなくて魔術師長が?」

「え?!クレメント息子さんいたの?!…違う!そうじゃなくて!鶏小屋があって、空っぽなんです!」

「あぁ、なるほど。そこにいれておいてくれるんですね。ありがとうございます。」

 にっこりされて今度はこわばらず笑顔を返せた。若いクレメントだと思えばそんなに緊張しなくてすむ。


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