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自慢の家族


「ここはいいですね。適度に不便で。」

「不便が良い事なの?」

「えぇ、創作意欲がわきます。」

 クレメントは隠し切れないワクワクで顔を緩めながら、そういえばと話を切り替えた。

「何か私に話があったのでは?」

 ん?首を傾げてなんだっけと頭を巡らせると、ボーリスとの言い合いをいつの間にか終えていたキャロルが「結界」と耳打ちで教えてくれた。

「あ!そう!お客さんが来たの!」

 そこで私は数日前にあった騎士団の急な来客と結界の作用の話をした。

「許可がないのに入ってこようとした奴らが悪いのでは?」

「でも結界の壁があるんだから警告がなくても入っては来れないでしょう?」

「痛い思いをすれば魔物はそれで退けられるでしょう?礼儀のなっていない人間には躾になる。」

「ん~?」


 そ、そうなの?でも、と言いかけて続く言葉がなくキャロルに視線を移してみる。特に意味もない行動だったが、キャロルは味方に付いてくれた。

「そんなに強い威力なの?」

「隊長さんがすごく痛そうだったから、パチッくらいじゃないと思う。」

「えぇ、神経系に直接痛みを与えます。飢えた野生動物への警告に容赦は必要ありませんが、死体が敷地の周りに積まれるのは避けるべきでしょう?なので、後遺症が残らないギリギリの痛みを設定しました。」

「や、やりすぎです!!」


 キャロルが顔を青くして叫んだ。私も首を縦に振って追撃を試みる。


「そうよね?そうよ!やりすぎなの!せ、せめて段階を踏んで、最終的にその痛みにしてよ!」

「なるほど…。それはまた面白い課題ですね。」


 やった!クレメントの研究魂を刺激できた!心の中でガッツポーズをとったら大人しくしていたボーリスが突然声をあげたので視線がそっちに流れる。

「こりゃあ美味い!菓子なのに甘くない!」

「あ!いつの間にこんなに減ってる!」

「お嬢、こりゃお嬢が作ったんだろう?」


 大喜びでつまんだクッキーは先ほど話題に上がった胡椒を使ったものだった。クレメントが甘いものが嫌いなのでチーズ味も作って出してみたんだが、ボーリスにヒットしたようだ。

「胡椒が手に入ったので、お客様ように作っておいたの。チーズより胡椒が好き?」

「「胡椒?!」」

「なんでキャロルまで驚くんです?あ、私はチーズの方が好きですね。お酒の共にもよさそうです。」

「じゃあお土産に持って行って~」

「このほのぼのコンビ!お菓子に胡椒なんてふつう考え付かないわよ!」

「イヴのビックリ料理は今更じゃないですか。あぁ、それと帰りは明日にします。」

「本当?!あ、でもおうちは大丈夫?」


 喜んでしまったが、プラスティラス家に私と関わっている事が知られるとマズいはずだ。あの家に住んでいた時、母親は使用人全員に私への過剰な接触、つまり親切や手助けを禁止していた。使用人の中には母に特別給金を貰って監視をしていたスパイまでいたそうだ。


「今回の外出は冬の蓄えの為の外出と言ってありますから。移動結界でショートカットしているのでむしろ宿代が浮いて有り難いくらいですよ。」

 

 移動結界は孤児院や教会の資金源だ。建造の際に設置してその都度使用者から利用料を一律同額低価格で貸している。国で教会と孤児院建設の際は格安で設置が義務付けられている。が、個人宅に設置すると10倍は下らない為、貴族も遠出の際は近くの教会か孤児院を使用している。ちなみにこれは寄付金の側面もあるため、お金に余裕のない者は食糧やまだ着れる古着などでも代用可である。


 食糧調達という事は、港町で1週間は滞在するという事だ。その言葉に戸惑いは吹っ飛んだ。晩御飯はちょっと贅沢しちゃおう!


それからクレメントは部下たちのところへメンテナンスの様子を確認しに行った。ボーリスは庭の手入れ。新しい花の種を持ってきたから植えていくとのことだ。子爵庭園は薔薇の花ばかりでつまらないからここで色々試したいんだとか。いろんな品種の薔薇で彩られたバラ園は美しかったけどね。


「さてと、私は屋敷の掃除でもしようかな!」

「どこか汚れ目立つ場所あった?」

「目につく場所以外の汚れも落とすのが本職のメイドなのよ」

 むん!と腕まくりしてキャロルも掃除道具片手にどこかへ行ってしまった。晩御飯の用意を今してしまうのは早すぎるので、みんなのところを回る事にした。


 ボーリスのところに行くとしゃがみこんで花を積んでいた。そういえば剪定という作業は全くしていなかった事に気付く。

「あぁ、お嬢。やれやれ、ここの庭は広いな。毎日水やりをしているようだが、大変だろう。」

「うん。午前中いっぱい使ってる。…ごめんね、剪定にまで気が回らなかった。」


 ボーリスは子供の頃から庭師一本でこの年まで来たと言っていた。植物を心から愛している彼からしたら私の手入れは酷い物だったろう。


「12歳のお嬢にそこまで完璧にやられちゃワシら庭師の立つ瀬がない。むしろやることが残ってて安心したよ。ほら、お嬢、ベゴニアの花だ。ジャムに出来るだろう?」

「うん!ありがとう!」

 ベゴニアって剪定必要なのか。知らなかったな~と籠いっぱいの花を持ちながら移動している途中でハッとする。手伝おうと思ってたのに、もらうだけもらってきてしまった。とりあえずこれはキッチンに置いてまた戻ろう。腰を落としての作業はきっとつらいだろうから、急がねば。


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