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ホラー・・・

もういいかい?もういいよ

作者: 馬 stallion

ホラー初挑戦です。


「たまにはラジオでも聞いてみない?」

ワンボックスカーの助手席に座る女は前屈みになって男にそう言った。



「うん、もういいよ 一通り聞いたし、マイベスト 笑」

男はいい雰囲気でドライブデートをしたくて、選りすぐりの曲を流していたのだが、

女性の言葉に頷き、慣れた手つきでラジオに車内BGMを変えた。


そして車を交差点を通り過ぎて、左に車を寄せて止め、サイドブレーキを引いた。

車通りの少ない場所のようなので、辺りには信号機の光が、黄、赤の点滅、そして街灯の明かりが一つだけ。

正面には月が見えていて、人気が無い。 


ラジオからは、しっとりとした優しい声の女性の朗読が流れていた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「じゃあ100数えたら、探していいよー!」


無邪気なユウキの声が、風にのって聞こえる。


ユウキは6歳 小学校1年生のやんちゃ盛りの男の子 習い始めた空手に一生懸命。


強くなって警察官になる、だって。 まだたまにお漏らししちゃうのにね。



「オマエ、そんなに大きな声出すなって!バレるだろ!?」


ユウキに怒っているのはお兄ちゃんのトウタ 10歳 4年生


サッカーが大好きでいつも真っ黒。 勉強も運動も得意だからユウキにとっては


自慢のお兄ちゃん



「ねぇ?お母さん、こっち、もう・・・・アイツらはお父さんと遊ぶから・・・こっちで遊ぼうよー!」


実はまだまだお母さん子のミユキ 12歳 6年生


運動は苦手だけど、しっかり者のお姉さん。 弟たちと遊ぶのはちょっと恥ずかしい年頃になったのかな・・・。


身長も伸びて、もう私とそんなに変わらないぐらいね、素敵な女性になって欲しい。


「おい、ちょっと手伝ってくれよ お母さん! アイツら見つからないんだ・・・ほら ミユキも一緒に」


40歳になって息切れするようになったのね、アナタも。


いつまでも子供達と一緒に走り回って遊べるように!ってダイエット始めたのに、


一人だけ汗だくじゃない。


でもいつも家族をその笑顔で支えてくれる、私の素敵な旦那様



「99・・・100! もういいーかーい?」


私は目一杯大きな声で、2人が隠れている方向に問いかける

辺りは静かで、反響する建物もない広い所だから、音はすぐに闇に吸い込まれる。


「まーだだよーーー!」

元気なユウキの声が返ってくる

「だから!言うなって!」

トウタの声も、ふふ。


「あっちの方だな、俺は回り込むから、お母さんとミユキはそのまま真っすぐ、な?」

子供みたな顔してアナタも必死になって。


「もう・・・他の遊びにしよ?」

ミユキは私に腕組みして付いてくる



8月14日・・・・深夜0時 私はこの交差点の真ん中に3年間 毎月14日 立っている。


3年前私から家族を奪ったこの交差点・・・そしてあの大型トラック・・・犯人は未だ見つかっていない。


田舎の道は真っ暗で、虫の声が聞こえる、その中からみんなの声も聞こえて来る。


昼間の熱を帯びたアスファルト、そこに立つ信号機の柱、その横の街灯の下に一輪だけ花を添えて、目を閉じる・・・。 そうすると皆を感じる。


また目を開いて白線が消えかかった横断歩道を踏み出すと、少しだけ私より背が高くなった娘の存在を感じる。


交差点の真ん中・・・あそこから息子達の声が聞こえる。


真ん中・・・・・・。


そこには何もない、白線もない、ただの黒くて、少し剥がれたアスファルトだけ。


生温い風が頬を撫でる、髪がなびく。


私はゆっくり歩いてそこに立つ、だれも居ない、車も通らない。 そしてまた目を閉じる・・・声が聞こえる。


「僕ね、足がもっと上がるようになったよ!ホラ! こんなに!強くなったでしょ?」

ユウキが得意げに足を上げてる。 そうだね、もう4年生だもんね・・・。


「お母さん、今度サッカーの選抜に選ばれるかも・・・俺、だから新しいシューズ・・・いい?」

トウタ・・・大きくなったね。中学生か・・・。もう私よりもお姉ちゃんよりも大きいじゃない。


「お母さん、私・・・好きな人、できた。 どうしよう・・・」

ミユキ、女は笑顔よ。 笑って、そう・・・。

貴女らしくしなさい、大丈夫よ。


「おい、お母さん? 元気か?そんなに痩せてしまって・・・髪も伸び放題じゃないか? 子供達の事は心配するな、俺が付いてるから・・・」

それが一番心配なんじゃない・・・もう・・・。 なんでアナタが泣いてるのよ。


「もういいかーい?」

私は小声で呟く・・・ それはまた闇に吸い込まれていく。


「もういいよーー!」

ユウキとトウタの大きな声が聞こえる。


「もういいかーい?」

私はもう一度呟く・・・


「もういいよー・・・お母さん」

優しく呟くミユキの声


「もういいかーい?」

私は堪えきれず、泣きながら小声で呟く


「もういいよ・・・」

アナタの低くて暖かい声・・・


「この間まではまーだだよー!じゃなかったっけ?」

と言いながら目を開けると、

トラックのヘッドランプの光が目の前にあった、眩しくて世界が真っ白になって、光の世界に私は包まれた。


「あ・・・見ぃーつけた!」

光の中に私は、大切な・・・大切な家族を見つけた・・・。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

いきなりの朗読に息を呑んでいた二人だった。


「・・・なにこれ、何の話? 可哀そう・・・」

深夜0時 助手席に座る女は身を小さくして、ラジオに向かってそう呟いた。


「これ、この辺りの交差点じゃない?なんか結構前だけど、大きな事故があったって・・・」

男は少し強張って、そう言った。


ラジオがさらに続く、淡々とした声が車内に響く。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


田舎の道で交通量が少なかった事が災いし、

事故発見まで3時間、車が1台も通らなかった。


そのトラックに跳ねられた女性は運転手の急ハンドルによって下半身のみ巻き込まれた形となった。

その出血多量によって死亡が確認された遺体は交差点のど真ん中にあった。


現場には這って進んだと思われる血の跡が20mに渡って残っており、被害者の女性が移動を試みていた事が伺えた。


血に染まった交差点の中心で被害者の女性は笑顔で亡くなっていた。


ひき逃げの犯人は未だ不明となっている。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「え・・・ヤバ・・・何・・何この話、気味が悪いんだけど?ごめん、音楽に戻そう?」

女性は慌ててボタンを押す、カツン、カツンと爪があたる音か鳴る、少し震えた指先では上手く押せない。


「なぁ、さっきからさ・・・・車動かないんだけど」

男は怯えた声でそういった。 シフトレバーが動かないようだ。 ガタガタと小刻みに動かす。

サイドブレーキも掛けたまま、力いっぱい踏めども戻せない。


「もういいかーい?」

ラジオが続いている。か細く、擦れ切れそうな女性の声が微かに聞こえた。


「え?何? まだ続いてる? あれ? ヤダ、切れない、変えれない!」

女性はガタガタ震えながら、ボタンを何度も叩く。


「もういいかーい?」

また同じ声がする、さっきよりも声が少し大きい。


「なんだよ、これ!? 故障か? っくそ! おい、動けよ!」

男はチカラいっぱいレバーを動かそうとする。 


「もういいかーい?」

また同じ声が暗闇に響く、カーステレオからではなく、今度は外から声が響いてくる


男は恐る恐る声のする方に目をやった。

運転席から右側へ、そして車の右斜め後ろへ、そして交差点の真ん中辺りが視界に入る。

人気のない交差点、辺りには建物もない、畑か原っぱか、そして信号機の色が黄、赤の点滅。

交差点横の街灯下に微かに花が照らされているのが見えた。


「うわ・・・・ヤバイ・・・ここ・・・ここ」

男は恐怖で言葉を失いつつある


「もう何?何?ヤダ!怖い!もういいよ!帰りたい!帰りたい!」

様子を悟って女性は顔を青ざめ、髪を振り乱しうずくまった。 そのまま耳を塞ぎ、震えている。


「もういいかーい?」

今度は車の真後ろから声がかすかに聞こえた。 男はとっさに反応してバックミラーで後ろを見てしまったが、

男の視界には何も見えなかった、ただ暗闇がそこにあるだけだった。


「もう!早く! 早く動けよ!」

今一度体を前に向き直り、再びシフトレバーを握った。

すると今度は不思議とすんなりレバーが動いた。 サイドブレーキも外す事ができた。 お陰で車を発進させる事に成功した。


男は決死の思いで、車を走らせた。

アクセルを強く踏み、ハンドルは10時10分で強く握る。 来た道を明かりが多い街の方向に向かって。

まったく後ろは振り返らず、横を見ず、前だけに集中してただ走り続けた。

あまりの怖さにもう見れなかったからだ。

そしてその時ラジオから音はまったく聞こえてこなかった。


闇から聞こえてきた女の声が耳から離れない。

20分程走っただろうか、街の外れまでようやくたどり着き、街灯や住宅、コンビニの明かりがある道路だった。

男は明かりに安心して、車を横に寄せた。

車通りは多く、人通りも見える。 その状況に男は安心し、ようやく力が抜けた。



「っふぅーーーヤバかったぁ、ヤバかったなーおい、もういいよ?! だいぶ離れたから、ここは明るいし!」

男は心なしか大きな声で助手席の女性の背中にそう話しかけた。


「もういや・・・・帰りたい・・・」

女性は体を丸めて屈み、まだガタガタ震えていた。


「もういいよ!大丈夫だよ! 外見てごらんよ! とりあえず帰るから!」


そう言いながら男が前方に目をやると




「あ・・・見ぃーつけた!」


か細い女性の声と共に二人は正面からの大きな光に包まれた。







○○町交差点 大型トラックによる追突事故 ワンボックスカーに乗った二人の男女が死亡




・・・あの事故知ってる?

うん、また・・・だね。


あれから何件目? あの交差点はヤバイって。


もういいかい?って聞かれたら逃げなきゃいけないんだって。


それだけ?


ううん・・・その声を聞いた人は「もういいよ」って言ったら見つけに来るらしいよ?


え?誰が?


上半身だけの女の霊だってーーー


やめてやめて、怖い怖い、もういいもういいよ・・・その話


描写で恐怖を与える事は非常に難しいですね。

妄想しているだけで、自分だけ怖くなっていました。

ご感想いただけると幸いです。

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― 新着の感想 ―
[一言] やっぱり、ホラー描写を言葉だけで表すのって難しいですよね~。 私が住んでいるところは蒸し暑いので、ちょっと涼しくなりました。
2021/09/16 18:22 退会済み
管理
[良い点] (((((((( ;゜Д゜)))))))ガクガクブルブルガタガタブルガタガク お祓いーっっっっ 十字架にすがれっっっ [気になる点] く、車に乗ったらラジオ付けないんだからねっっっ 付け…
2021/07/21 16:07 退会済み
管理
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