生涯キミを…………
大変、申し訳ありませんでした❗
m(_ _)m
涙、涙の謝罪です。
この頃、本当に眠くて。
更新がこんなに遅くなってしまいました。
眩暈止めの薬が身体から抜ければ
少しは改善されると思うのですが。
本当にすみませんでした。(T△T)
黒い車輪が付いた小さな動く部屋は自動車なのだと京介に教えて貰った。
京介とワタシが乗っている自動車はタクシーと呼ぶらしい。
京介とワタシはそのタクシーに乗った。
暫く暗闇が流れていたけど、角を曲がると街灯も増えて、直ぐに建物が立ち並び始め、自動車がいっぱい行き交っている端を人が歩いていた。
ランジェリーショップと云う処の前で降りた。
ランジェリーショップに入ると今まで嗅いだことの無い匂いがした。
京介は入口の処で立ち止まって、困った顔で言った。
「オレはここで待ってるから選んで
店員さんが来るから、その人に教えて貰うといいよ」
「京介はどうして来ないの? 」
京介は頭を掻きながら困ったような笑みを浮かべた。
「こう云う処は苦手なんだ」
「ふーん」
キレイな服を着た女の人が来ると京介は女の人に向かって言った。
「彼女は特殊な事情があって下着についての知識が無いんだ
色々教えてあげて欲しいんだけど」
「解りました」
女の人はそう答えると手で奥を指してワタシを見た。
「こちらへどうぞ」
ワタシは京介を振り返った。
京介は笑顔を浮かべると「行って」と云う顔をした。
ワタシは女の人に付いて行った。
女の人は文字と線がいっぱい付いた紐をワタシの胸と腰周りに巻き付けては離した。
壁を見上げると可愛いひらひらや花やリボンの付いた布切れが貼られていた。
ワタシと同じくらいの大きさの人形が布切れを身に着けて立っている。
なるほど、こんな風に着るんだ。
女の人が色々持って来て、それらがブラジャー、ショーツ、シミーズと呼ぶのだと云う事と、身体に着ける手順を教えてくれた。
淡いピンクやベージュ、紫に水色などの、ひらひらやリボンが付いた可愛いランジェリーを選ぶのは楽しかった。
京介はどんなのが好きなんだろう?
幾つか気に入った物を京介に見せに行った。
「京介、見て! 」
大きな窓から外を見ていた京介は振り返って、ワタシを見ると急に口を押さえて大きく眼を見開いて、また向こうを向いてしまった。
「京介、どうしたの?
こっち見て」
「ミューズ、それは……………」
「お客様! 」
店員さんが慌てて来て、何かを早口で言いながらワタシを奥へと引き摺って行った。
ワタシは何が何なのか解らなくて困っていると、店員さんが言った。
「ランジェリーを男性に見せるのはちょっと……………」
あれ?
いけない事だったの…………………かな?
ランジェリーショップを出ると高い建物が空に突き刺さる様にいっぱい立ち並んでいる事に気付いた。
空は黒くて、でも地上は輝く様に賑やかで明るい。
京介は紙バッグを持ってくれて言った。
「さっきはびっくりしたよ」
「どうして? 」
「急に下着いっぱい持って来るんだよ
どんな反応していいか解らなかったよ」
「京介、ランジェリー嫌い? 」
「そうじゃ無くて」
京介は困った様に頭を掻いた。
少し歩くと京介は言った。
「ここだよ、見て」
京介は柱が白い蔦でできたガラス張りの、向こう側に飾られた人形を眼で示した。
「可愛いだろ? 」
ワタシは悪戯心が湧いて言った。
「人形が? 」
京介は慌てて言った。
「違うよ!
着てる服!
服見てよ! 」
ワタシは声を上げて笑った。
「そんなに慌てなくてもいいのに」
「ミューズ、ガチで焦ったんだけど」
「ごめんなさい」
ワタシは肩を竦めた。
店に入るとランジェリーショップと少し似た匂いがした。
「いらっしゃいませ」
お洒落な素敵な女の人が近付いて来ると柔らかな匂いがした。
「ディスプレイの服で彼女に合うサイズはある? 」
京介が言うと
「少々お待ち下さい」
女の人が奥へ行ってしまうとワタシは言った。
「あの匂い…………」
「香水着けてるんだね」
「香水? 」
「香りを着けるお洒落だよ」
「何だかステキ」
ワタシは笑った。
女の人が戻ると言った。
「試着なさいますか? 」
京介がワタシを見て言った。
「着てるとこ見たいな」
「こちらへどうぞ」
女の人はワタシを奥の鏡の付いた小部屋に案内してくれた。
今度は京介も一緒。
ワタシが四角い襟元で胸の直ぐ下に黒いリボンが付いた、淡い紫のふんわりしたスカートのワンピースに着替えて出て来ると、京介は満面の笑みを浮かべた。
「やっぱり似合うと思ったんだ
うん、可愛い」
「そちらのワンピースでしたら、こちらの靴とバッグが合うと思いますが」
女の人はワンピースと同じ黒いリボンが付いた白い布のバッグと足首の横に紫のリボンが付いた足先が出る靴を持って来て履かせてくれた。
ワタシは京介の前でトコトコ一回転して見せた。
京介は満足そうに笑った。
「お客様には、こういったものも合うと思いますが」
女の人は、襟とボタンが付いた袖無しで腰に大きな黒いリボンが付いた白いワンピースをワタシの身体に合わせて見せた。
「うん、いいね
ミューズ、着て見せて」
ワタシは服を受け取るとまた小部屋に入って着替えた。
着替える度に、鏡に映る自分を見て嬉しくなる。
何よりも京介が喜んでくれる。
それがとても嬉しい。
女の人は、キラキラした小さな石を花の様に固めた装飾が付いた黒いバッグとつやつやの黒い飾りの無い靴を持って来て合わせてくれた。
「とても、お似合いですよ」
女の人は言った。
「京介、あれも着たい! 」
京介は最初はニコニコして着た服の感想を言ってくれたけど、後の方になると時々溜め息をついて「似合うよ」としか言わなくなった。
どうして?
沢山の紙袋を手に京介とワタシはタクシーで帰った。
アトリエに入るとワタシは寝台に座り込んだ。
「疲れたろ」
京介は荷物を床に下ろすと隣に腰を下ろした。
「身体が重い」
ワタシは寝台に深く座って壁に凭れた。
「それを疲れたって言うんだよ」
「京介も疲れた? 」
「ちょっとね」
京介も深く座って笑顔をこちらに向けた。
「ミューズのチェストが要るね」
「チェスト? 」
「服を入れる家具
置くとしたら、この部屋だけど何処に置こうか」
「えーと………………
解んない」
ワタシは部屋を見回して苦笑いした。
京介は笑って言った。
「いいよ
後で適当にさがすから」
ワタシは正面に置かれた細い本棚の本に眼を留めた。
「何の本? 」
「美術の本だよ」
ワタシは大きな本を一冊取り出した。
表紙に、緑を基調とした裸の女性が背中をこちらに向けて立っていた。
「キレイ………………」
京介がすかさず言った。
「ボナールの『逆光の裸婦』だよ」
「でも裸………………
恥ずかしかったろうな」
「この女性はボナールの奥さんなんだ」
「奥さん……………」
「ボナールは生涯、奥さんをモデルに絵を描いたんだけど、ステキなのは何年経っても、ボナールの描く奥さんは若くて美しいままなんだ。
ボナールの絵の中の奥さんは老いないんだよ」
「どうして? 」
「どうしてかなあ?
ボナールに聞いた訳じゃ無いけど、オレは愛する女性には、いつまでも恋をしていたい」
ワタシは京介を見詰めた。
京介はワタシを見詰めて言った。
「ミューズ、オレは生涯キミを描き続けていたい」
ワタシは微笑んだ。
読んで下さり有り難うございます❗
更新が、でたらめ状態でも、見捨てず読んで下さった皆様の寛大なお心に、感謝です。(T-T)
ちょっと、単調になったかなあと心配ではあったのですが、少しシンデレラストーリー的な処入れたくて。
お洒落に煩い方には、賛否両論おありでしょうが大きな娘が居る、おばさんのセンスなので、多めにみてやって下さい。