晩餐
楽しんで戴けたら嬉しいです。
京介は動けないワタシを窓の外の傍の椅子に座らせると笑って言った。
「今日はお客さんがくるんだ
絵の整理をしておこうって思って帰って来たんだけど帰って来て良かった。
こんな奇跡が起きるなんて思ってもみなかったから」
ワタシは窓の外に向かって座っているから京介が何をしているのか見えない。
後で文句言わなくちゃ。
京介が見えないって。
京介はがさごそと音を立てながら言った。
「絵が売れたら、ミューズにもっと沢山服を買ってあげるからね
そしたらいっぱいデートしよう」
デートよりキスがいいな。
デートって何か知らないけど。
やがてお客さんが来て、何だか小難しい話をぼそぼそと話していた。
暫くしてお客さんと一緒に京介は出掛けて行ったみたい。
日差しが弱る頃、帰って来た京介は直ぐワタシの処へ来て跪いて言った。
「絵が売れたんだ
今夜はお祝いのディナーしよう!
材料も買って来たんだ! 」
ワタシは笑い掛けたかったけど、月が出るまでおあずけ。
京介は夕べと同じようにワタシの膝に頭を載せて、色んな話をしてくれたけど、大きな欠伸をすると、いつの間にか眠ってしまった。
夕べは一晩中ワタシとお喋りをしていたし、朝からは部屋を片付けたり、お客さんが来たりと忙しくて眠る暇がなかったから、眠るの我慢できなくなったみたい。
陽の光が夜と溶け合う頃、月は光を増して大地を柔らかな藍色に照らした。
夕べと同じにドクンと胸が高鳴って身体が暖かくなった。
ワタシは眠る京介の顔を飽きもせず、ずっと見ていた。
京介が好き。
そう思うと胸がキュンと甘く痛んで、苦しいくらい。
京介は眼を覚ますと直ぐワタシの顔を見た。
ワタシはそれが嬉しくて微笑んだ。
「良かった
夢じゃ無かったんだ」
京介は辺りを見回すと言った。
「すっかり陽が落ちたんだね
起こしてくれれば良かったのに」
「とてもよく眠っていたから」
京介は笑顔を見せると立ち上がった。
「ディナーの用意しなきゃ
手伝ってくれる? 」
「うん! 」
ワタシも立ち上がった。
京介が赤や紫の野菜を薄く切って水につけたり、液や粉を混ぜたりしている間、ワタシはレタスと云う野菜を洗って破いた。
「美大に通ってた頃、レストランの皿洗いのバイトしてたんだ
何となく見てる内に自分でも見よう見まねで作るようになってね
最近は面倒くさくなってコンビニで済ませてたけど、
前は結構作ってたんだよ」
本当は京介が話してくれる事はワタシには、ちんぷんかんぷんなのだけど、京介が話してくれるのが嬉しいから一生懸命聞くの。
いつか全部解る様になりたいな。
用意が終わると京介はテーブルの傍の椅子を引いてくれてワタシを座らせてくれた。
ガラスのキレイなコップに、瓶に入った色の付いた水を注ぎながら京介は言った。
「果実酒だからミューズにも飲みやすいと思うよ」
椅子に座った京介はコップを持って手前に差し出した。
ワタシが真似をして差し出すとコップを軽くぶつけた。
「乾杯」
京介は笑って見せると一口含んだ。
ワタシも真似たのだけど、飲み込んだ途端胸がかーって熱くなって咳込んでしまった。
「大丈夫? 」
京介は慌ててワタシの傍に駆け寄って来て、ワタシの背中を撫でながらワタシの顔を覗き込んだ。
「ごめんなさい
大丈夫、びっくりしただけだから」
「そうだよね
コーヒーさえ初めてなのに、お酒はハードル上がり過ぎだよね」
ワタシは笑って言った。
「大丈夫
これ好き、いっぱい飲みたい」
そしてワタシはコップのお酒を一気に飲み干した。
京介は慌ててるようだった。
「あー、そんなに急に飲んだら……………………」
身体が熱くなって、何だかとてもいい気持ちになって来た。
「ミューズ、大丈夫? 」
ワタシはコップを掲げた。
「京介、もっと飲みたい! 」
読んで戴き有り難うございました❗
どなたかわかりませんが、評価ポイント有り難うございました。
嬉しかったです。
すこぶる眠いです。