好きとキス
大変、申し訳ありません‼️
昨日、くっそ忙しくて夜にくたばりまして、
今日一日死んでました。
やっと復活しました。
ご迷惑かけました。
すみません。
京介はワタシの手を握ると椅子の傍まで付き添って座らせてくれた。
ワタシは椅子に腰掛けて、京介は床に胡座をかいて座った。
京介はワタシを見上げて言った。
「ごめんね
ずっと淋しい想いさせた」
「京介が怒ってるのかと思ってた
京介はワタシが嫌いになってしまったんだって」
「ミューズ…………………………」
京介はワタシの手を取って頬ずりした。
「逆だよ
ミューズを好きになればなるほど、ミューズの傍に居るのが辛かったんだ」
「どうして? 」
「こんなにも好きなのに、オレの想いは届かないんだって
こんなにも好きなのに、永遠に解り合える事はできないんだって
そう思うと辛かったんだ」
ワタシの手を握る京介の手にワタシのもう片方の手を載せた。
「ワタシも哀しかった
京介が大好きなのに、何も伝えられなくて、京介の為に何もできなくて」
「ミューズ…………………………」
京介は親指で器用にワタシの手を撫でた。
「ごめんね
自分だけ辛いんだって思ってた」
ワタシは微笑んだ。
そしてワタシと京介はいつまでも競い合う様に話した。
「ねえ、ねえ」
夢中で話すワタシに京介は言った。
「喉渇かない? 」
「喉が渇く? 」
「飲み物欲しくない? 」
ワタシは解らなくて首を傾げた。
「コーヒーでも淹れるよ」
「コーヒー? 」
京介はピカピカの台の処へ行って、へんてこりんな形の入れ物に水を入れて火の上に置いた。
「へんてこりんな形」
ワタシが言うと京介は声を上げて笑った。
「ケトルっていうんだよ」
「ケトル…………………………」
ワタシは珍しくて、京介の作業をワクワクして見守った。
カップを二つ置くと茶色い粉をスプーンですくって一杯ずついれた。
「そんな珍しい? 」
「え? 」
「だって凄くじーっと見てる」
「だって、初めて見るから」
「ああ、そうかあ
初めてなんだ」
へんてこりんな形のケトルはやがて、しゅんしゅん鳴いてほわほわの煙を出した。
京介はそれを持って煙が出る水をカップに注いでワタシに差し出した。
「はい、コーヒーだよ
熱いから気をつけて
こうするんだよ」
京介はカップにふうふう息を吹きかけた。
ワタシも真似してやってみた。
息を吸い込むと良い匂いがした。
息を吹きかけるとほわほわの煙が踊った。
それが面白くていっぱい息を吹きかけると京介が笑った。
「そんなに必死にならなくても冷めるよ」
京介が一口飲んで見せてくれた。
ワタシも真似して飲んでみた。
不思議な感じ。
でも沢山飲みたいとは思わなかった。
「どう?
美味しい? 」
ワタシは眉間に皺を寄せ、どう答えたらいいのか考えた。
「貸して
砂糖とミルクを入れたら飲みやすいかも」
京介はワタシのカップを取り上げると白い粉を二種類いれてから混ぜてワタシの手に戻した。
「飲んでみて」
一口、含むとさっきとは違って沢山飲みたくなって、ワタシは一気に飲み干して京介に笑いかけた。
見ると、京介は眼を丸くしてワタシを見詰めていた。
そして声を上げて笑った。
「ミューズは正直だね」
ワタシは訳が解らなくて小首を傾げた。
「もう一杯飲む? 」
ワタシは笑って頷いた。
京介はコーヒーを淹れながら言った。
「今思うと、オレはミューズに一目惚れだったのかも
他の人形たちよりミューズは一際綺麗で華やかだったから」
「ええ?
ここに来たばかりの時、京介ちっともワタシを見てくれなかったよ」
京介は必死になって言った。
「恥ずかしかったんだよ!
男が人形貰ってホクホクしてたら、明らかに変態じゃん」
「変態? 」
京介は困った顔をした。
「こんなことになるなら、最初から意思表示しておけば良かった」
京介はできあがったコーヒーを優しくワタシの手に握らせてくれた。
ワタシはコーヒーを見詰めて言った。
「そう言えば、身体洗われた時、とても恥ずかしかったな」
「え…………………………」
京介は一瞬身体を強張らせた。
「そ、そんな事もあったね」
京介の顔が明らかに赤い。
「どうしたの?
京介、顔赤いよ」
京介は何度か咳をして、在らぬ方を見た。
「ミューズの下着を買った時も恥ずかしかったよ
店員にそんな趣味あるの?
って顔されて、恋人のだって言っても信用されなくてさ」
ワタシは京介が何を言いたいのか解らなくて小首を傾げた。
それからずっと訊きたいと思ってた事を訊いてみた。
「ねえ、京介はワタシの気持ちがどうして解ったの? 」
「え? 」
京介は振り返った。
「ほら、コンクールに出展とかするって言った時」
「ああ」
京介は笑顔を取り戻した。
「なんて言うのかなあ
オーラが見えるって言うのかな
何となく解ったんだ
不思議だけど確信は在った」
「ふーん」
ワタシは不思議で京介の顔を見詰めた。
京介は、ワタシが持っていたカップを取り上げると、自分のカップを一緒に台の上に置いて、ワタシをそっと抱き締めた。
「ミューズ、好きだよ
ずっと伝えたかったんだ」
ワタシは京介の腰に腕を回して抱き締め言った。
「ワタシも京介が大好き
ワタシもずっと知って欲しかった」
京介は一層強く抱き締めて頬を摺り寄せた。
「ミューズ、キスしてもいい? 」
「キス? 」
「愛し合っている恋人同士はみんなこうして好きって事を伝え合うんだ」
京介はワタシの眼を見詰めてから、眼を閉じると口唇をワタシの口唇に押し付けた。
ワタシは京介の真似をして眼を閉じた。
胸の奥が熱を帯びて全身に広がって好きと云う気持ちでいっぱいになった。
キスはステキ……………………。
京介とワタシは寝台に並んで座って、手を繋いだまま話していた。
空が白んで来て月が薄れて行く。
ワタシはなんだか解った。
月が消えたらワタシは人形に戻ると云う事。
ワタシは笑って言った。
「京介、今夜また話そうね」
京介は淋しそうにワタシを見詰めた。
そして硬くなったワタシの手をいつまでも握り締めていた。
読んで戴き有り難うございました❗
ここから私は砂吐きました。
人間の醜い部分に触れていない純粋なミューズを
描くのは、醜さにまみれまくっている私には
とても苦行でした。(T△T)