プレゼント
次の話までアマアマですが楽しんで戴けたら嬉しいです。
氷で頬と親指を冷やした。
親指には湿布が貼られぐるぐる巻きに包帯が巻かれて、口の端には絆創膏が貼られた。
京介が言う処の、親指負傷の療養期間に付き外出禁止令が降りた。
と云う事でお出掛けは暫くの間禁止。
夜が来て、月明かりを浴びて動けるようになると京介はいつもの様にワタシを抱き締めた。
「毎日、夜が待ち遠しい…………………」
「ワタシも……………………」
京介はワタシに口付けた。
眼を閉じると全身が火照って身体の奥から京介に好かれているって云う喜びが迸る。
京介が大好き。
京介と晩御飯作り。
手に包帯巻かれているワタシは京介が作るのを見てお勉強。
今日の献立はワカメと長ネギのお味噌汁とイタリア風の野菜炒めとハンバーグ。
ワタシは実は凄く不安になる。
いつかワタシにもお料理を憶えて作れる日が来るのだろうか?
京介にそれを言うと、京介は笑って言った。
「お料理ができても、できなくてもミューズはミューズだから関係無いよ」
それって嬉しい様な、がっかりの様な…………………。
食事が終わるとワタシはモデルに早変わり。
色んなポーズをとるワタシを瞬時に捉えて、京介が素早く描き取
る。
クロッキーと云う写生法らしいけど、真剣な顔で描き続ける京介はとっても素敵。
ワタシが大きな窓の前の椅子に座ると京介は哀しそうに見詰める。
「また、今夜ね」
ワタシが言うと京介は淋しそうに笑う。
京介はワタシの頬に手を当てて硬く戻って行くワタシの頬を親指でいつまでも撫でた。
いつもお昼まで寝ていた京介だけど、最近は忙しそう。
ワタシが人形に戻ると寝台で眠るのだけど、お昼になるずっと前に起きて絵を描き始める。
今日はお昼過ぎにお客さんが来て、ずっと京介の絵を沢山見て行った。
京介はお客さんと出掛けた。
月が出ても京介は帰って来なくてワタシは暇をもて余した。
キッチンに立って夕食の支度でも、って思ったけど何をどうすればいいのか解らなくて、途方に暮れた。
部屋を振り返ると京介が描いた沢山の絵が眼に入って、ワタシはずっとしたかった事を始めた。
それは京介の絵を見て回ること。
ワタシは部屋の端から床に座り込んで京介の絵を見て行った。
京介の絵はどれも、綺麗で美しくて、特にワタシを描いた絵は温かくて涙が零れた。
京介は本当に心からワタシを大切に思ってくれてるんだ。
ワタシは涙を拭いながら京介の絵を見て回った。
「ミューズ………………………?」
振り返ると京介が心配そうにワタシを見ていた。
「大丈夫? 」
「京介………………………」
「何かあった? 」
「ううん、何でも無い
ただ、京介がワタシを本当に綺麗に描いてくれたから嬉しくて」
京介は微笑んで屈むとワタシを背中から抱き締めた。
「当たり前だよ
ミューズはインスピレーションをくれる女神で、専属モデルで、最愛の恋人だから」
ワタシは涙を拭うと笑った。
「そうそう、忘れる処だった
これをプレゼントしようって思ったんだ」
京介はズボンのポケットから小さな包みを出してワタシの前に差し出した。
ワタシは京介の顔を見た。
京介はニッコリ微笑んで言った。
「開けてみて」
包みを開くと小さな箱が出て来た。
京介を見ると笑ってる。
箱を開けるとキレイな装飾の小瓶が入っていた。
「香水だよ
匂い、気に入って貰えるといいけど」
「香水?
ステキ! 」
そっと蓋をあけ息を吸い込むと不思議な香りがした。
「神秘の月って名前の香水なんだ
ミューズにピッタリだろ? 」
ワタシは笑顔で京介を見た。
「有り難う、京介
とっても嬉しい」
ワタシは小瓶を胸に抱えた。
「着けてみて
香水って着けると人によって表情を変えるんだ」
「どうやって着けるの? 」
京介は蓋の内側の棒の方をワタシの耳朶の後ろに軽く着けた。
不思議な香りがワタシを包んだ。
「普段は着けないでね
オレはミューズの匂いが好きだから」
読んで下さり有り難うございます❗
今日、二度目の投稿です。
なかなか、思うように投稿できなかったので、
少しでも予定に追い付けたらなあ、と思いまして。
投稿が遅れがちになって落ち込んでいたら、
水渕成分さんに元気の出るコメント戴きまして、
またも水渕成分さんに助けて戴きました。
水渕成分様、毎度お世話かけます。
m(_ _)m
本当に毎回、嬉しい感想有り難うございます❗




