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第66話 誘い

昨日(2020/1/25)、第61話にプロローグみたいなものを加筆しました。

読んでいらっしゃらない方は、ぜひ読んでみてください! (2020/1/26)

 

 隠れ家レストラン『こもれびの森』に孤児院のちびっ子たちを連れて来た俺は、延々とジャスミン、リリアーネ、ソノラの愚痴を聞かされ続けていた。

 精神的に疲れ果てた俺をレナちゃんという天使が癒してくれ、その後リリアーネとイチャイチャして完全復活することができた。

 疲れた時はこうやって癒されるのが一番だな。


「女好き」

「女誑し」

「どーゆーいみ?」

「レナちゃんは知らなくていいからね」


 ジャスミンさん、ソノラさん。教育に悪いから、小さな子がいる前で暴言を吐かないでくださいね~!

 そういう俺は小さい子の前でイチャイチャしてたから人のことを言えない。だから心の中で二人に注意する。

 俺の愚痴もひとまず終わり、お菓子をもきゅもきゅと頬張るレナちゃんを可愛がりながら、普通に談笑する。


「あっ、そういえば、近々ローザ地方に旅行に行くんだが、ソノラも来るか?」

「ふぇっ!?」


 ソノラが目を見開いて固まり、ジャスミンとリリアーネのじっとりとしたジト目が突き刺さる。

 我が婚約者の二人は一体どうしたんだろう?


「……シラン、私聞いてない」

「シラン様、行ってらっしゃいませ」

「あれっ? 二人に言ってなかったっけ? というか、リリアーネも連れて行くからな。当然ジャスミンも。婚約記念旅行、みたいな感じ? 一週間以内に出発するから」


 ジト目だったジャスミンと、ほんのり寂しそうだったリリアーネの顔がパァッと明るく輝いた。頬を赤く染め、恥ずかしさと嬉しさが入り混じった可愛い顔をしている。

 そっか。二人に言っていなかったか。言ったつもりでした。


「それなら、私を誘ったらダメじゃないですか!」


 小さい子供を叱りつけるようにプンプンとソノラが怒っている。

 でも、心底残念そうで辛そうだ。


「普通に屋敷で働く人も慰安旅行を兼ねて連れて行くから大丈夫だぞ。ローザ地方は温泉も有名だし」

「殿下と温泉……うぅ~! もうちょっと早く誘ってくださいよ~! 私にだって予定があるんです!」

「ごめんごめん!」

「全くもう! 今回は行きませんけど、次回はちゃんとお願いしますね! それと、お土産をお願いします!」

「了解」


 しれっとお土産を要求してきたソノラは、ガックリと肩を落とし心底残念そうに落ち込んでいる。

 今回は俺のミスだな。もうちょっと早く言っておけばよかった。まあ、転移すれば一瞬で連れて行くことができるから、孤児院のちびっ子たちも連れて行くのもいいかもな。ちびっ子たちにはいろいろとバレているし。

 そして、俺たちの会話をこそっと聞いていたちびっ子たちが俺の身体をよじ登ってくる。

 俺は木登りの木かっ!? お前らは猿かっ!?


「兄ちゃん、旅行行くのか?」

「お土産! オミヤ~ゲ! プリ~ズ!」

「お土産くれなきゃ、社会的に抹殺するぞっ♪」

「誰だっ!? 最後に怖いこと言った奴は!」


 このちびっ子たちなら本当にしそうだから怖いんだよなぁ。

 あることないことを大声で叫んで王都中を練り歩きそうだ。

 ちゃんとお土産買うから、それだけは勘弁してください! お願いします!

 俺の身体をよじ登って暴れまわるから、ちびっ子たちが落ちそうで怖い。こそっと魔法で補助をしてあげる。落ちても怪我をしないよう風と重力の魔法を使って……よしオーケー!

 孤児院出身のお姉さんが栗色のポニーテールを揺らしながら子供たちを叱りつける。


「コラ! 殿下から降りなさい!」

「「「えぇー! ソノラ姉ちゃんも登る?」」」

「登りません!」

「「「じゃあ、抱きつく? それとも、抱かれる?」」」

「そ、それは…………コホン! いい加減にしなさい!」


 ソノラに叱られてもちびっ子たちは言うことを聞かない。

 俺から飛び降りてもゆっくりと地面に降りていくことに気づいたちびっ子たちは、俺の身体をよじ登って飛び降りるという遊びを始めた。

 本当は危険だから俺以外の時はするなよ?

 ちびっ子たちを何とかしようとするソノラに言葉をかけて制する。


「ソノラ、いいぞ」


 ソノラがビクゥっとして、顔を赤くしながら後退った。


「い、いいって何がですかっ!?」

「ちびっ子たちをそのままにしておいて」

「………そっちですか……はぁ…」


 あ、あれっ? ソノラがガックリと肩を落としてため息をついたんだけど、どうしたんだ? なんか恨みがましい視線で睨まれているんだけど!

 耳元でちびっ子たちが、バカだアホだ、と俺を罵倒してくるんですけど!

 俺、何かした!?


「………殿下って時々バカになりますよね。アホ!」

「バカなのかアホなのかはっきりさせてくれません!?」

「じゃあ、女泣かせの色欲魔! 淫魔です淫魔!」


 イーッと歯を見せて悪戯っぽく微笑んだソノラは、最後に可愛らしくあっかんべーと舌を出す。

 俺を揶揄ったみたいだけど、言葉を選びましょうね? ちびっ子たちが俺を淫魔って連呼してるから!


「………私の婚約者がバカでアホで女誑しだった件について」

「………今更気づいたのですか?」

「………改めて思っただけよ。はぁ…今夜もベッドに潜り込もう」

「………では、私も」


 我が婚約者の二人が、夫の愚痴を言いながら酒を飲んで愚痴を言い合う奥様、みたいに見えるんだけど!

 何その悟りと諦めの顔! ため息をついて乾杯しないでよ! なんか心に突き刺さるから!


「淫魔の兄ちゃん! オレたちと遊べ!」

「女誑し! いつものいつもの!」

「わかった! わかったから! 服引っ張るな! 痛い痛い! 髪を抜こうとするな! ハゲるだろうが!」

「きゃー! モンスター”女喰い”が暴れ出したぞ! 女子たちは逃げろー! 喰われるぞ! 性的に!」

「流石にちびっ子は喰わねえーよ!」


 頭の中に何人かのロリの使い魔が思い浮かんだが、頭の中から追い出していく。

 うん、俺知らない! 何も知らない! 時折、使い魔たち全員がロリになっていたりするけど、俺はそんなこと知らないんだ!


「じゃあ、こいつらが大きくなったら?」

「それは………ノーコメントで!」

「逃げろ逃げろー! 兄ちゃんが将来襲ってくるぞー!」


 きゃー、と子供たちが逃げていく。ドタバタと走り回っている。

 俺とちびっ子たちのいつものやり取りだ。普段はここから追いかけっこが始まるのだが、今日は店内なのでしません! また今度な!

 それに、将来はわからないだろ? 未来がわからないので、俺は否定することはできません!

 ノーコメントって便利だよなぁ。


「そこははっきり否定しなさいよ!」

「ぐほっ!?」


 空気の塊が俺の額にぶつかって弾けた。ジャスミンが放った魔法らしい。

 ()ったぁ~い! おでこが痛い! 絶対に真っ赤になったやつだ!

 俺はおでこを押さえて蹲る。その身体の上にちびっ子たちが飛び乗ってくる。

 痛い! 重い! ちょっ! ちょっと待て! 今は待って! マジでお願い!


「こらぁー! 殿下から離れなさぁーい!」


 ソノラの怒声が店内に響き渡り、きゃー、と子供たちが蜘蛛の子を散らして逃げていく。いつもの微笑ましい光景だ。

 というか、最後に俺を蹴り飛ばして逃げていった奴は誰だ! 捕まえてお仕置きしてやる!


お読みいただきありがとうございました。

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