第31話 デートの誘い
お城でディセントラ母上が主催した極秘お茶会が行われた次の日、俺はいつも住んでいる王都の屋敷で朝食を取っていた。
そして、目の前には、もはや屋敷に馴染みつつあるリリアーネ嬢とジャスミンが座っていた。
そのリリアーネ嬢が何やら言い出しそうにしつつも、シュンとして言うのを止めて、また覚悟を決めて言いかけるが、やっぱり止める、という動作を繰り返している。
一体どうしたのだろう?
「リリアーネ嬢? どうしたんだ?」
俺は堪らず声をかけた。
ビクッと震えたリリアーネ嬢は、一瞬怯えた様子を見せたけど、覚悟を決めて、サファイアのように綺麗な青い瞳で俺をじっと見つめてきた。
「シラン様」
「なんだ?」
「………王都を案内してください!」
ほえっ? 王都を案内? 俺がリリアーネ嬢を?
どうして? 何故? ホワ~イ?
そして、ジャスミンさん? 俺を睨まないでくれません? 怖いです。
リリアーネ嬢が恥ずかしがって真っ赤になり、もじもじしている。
「シ~ラ~ン~? これは一体どういうこと~? いつデートに誘ったのよ!」
「いやいや、ジャスミンさん! この場合は、俺が誘われてるんだけど!」
「あ、あの……シラン様が以前、王都の街を案内してくれると誘ってくださったので…いつかなぁと思っていたのですが…」
「シラン!?」
う~ん? 俺が誘ったねぇ………あっ!
そう言えば、ヴェリタス公爵領に行って、初めてリリアーネ嬢に出会った帰り際に言ってたわ。王都を案内するって言ったわ。
そうだったそうだった! すっかり忘れてた。
「あぁー。ごめん、すっかり忘れてた。じゃあ、今日行くか。何も予定無いし」
「はいっ!」
リリアーネ嬢がニッコリと嬉しそうに微笑んだ。
隣に座ったジャスミンがいきなり立ち上がる。
「ちょっと待って!」
「どうしたんだ、ジャスミン?」
「どうして、リリアーネは誘って私には誘わないの!」
おっ? ジャスミンはリリアーネ嬢と仲良くなったようだ。
リリアーネ嬢のことを名前で呼んでいる。
ジャスミンは純真天然なリリアーネ嬢に、年上のお姉さんとしていろいろと教えてあげているらしい。
「いや、何も言わなくても付いて来るだろ? リリアーネ嬢もジャスミンが一緒でいいよな?」
「はい、もちろんです! というか、ジャスミン様と一緒に回る前提だったのですが……」
「だそうだぞ、ジャスミン」
「ああ、うん。わかったわ………って、そうじゃなくて! 普段から私を誘いなさいよ!」
あぁー。ジャスミンは普段誘ってくれないことに怒っているのか。
でも、誘わないのは理由があるんですよ。
「だって、いつもジャスミンは怒るじゃん」
「それはシランが誰の許可も得ずにフラフラと出て行くからでしょ!」
「お忍びが楽しいんじゃないか! それに、ジャスミンは近衛騎士の制服と鎧をガッチガチに着込んでついて来るつもりだろ?」
「当たり前じゃない! 私はシランの護衛よ!」
「だからだよ………護衛じゃなくて、同伴者、パートナーとしてだったら普通に誘うのに。町娘や商家の娘に変装してもらうことになるけど」
ジャスミンって頭が固いところがあるんだよなぁ。
いつもいつも護衛護衛って。
頑固って言うか、不器用って言うか……インピュアみたいなツンデレさんだ。
『誰がツンデレよ! 私はデレたりなんかしないんだからね!』
おっと。意外と近くに座っていたインピュアが、念話を飛ばしてキッと睨んできた。
何故俺の考えていることがわかったのだろう?
ごめんごめん、と目で謝って、ジャスミンに視線を向けた。
あれっ? ジャスミンが目を見開いて固まっている。どうしたんだ?
「………えっ? 護衛じゃなければよかったの? 私がパ、パートナーとして、変装すればいつでも誘ってくれたの?」
「えっ? 普通に誘ったけど。ジャスミンを連れて行きたいお店とかたくさん知ってるし」
「なんでもっと早く言わないのよ!」
「誘おうと思ったら、いつも一方的にお説教してくるじゃないか!」
ガックリと項垂れて椅子に座り込み、私の馬鹿、と呟いているジャスミン。
まあ、気づいていましたけど、俺は敢えて放っておきました。
お忍びの時はお仕事もしているんですよ。
街のおば様たちは情報通だから、そういう所から情報を得たり、孤児院を回って国からの資金がちゃんと届いているか確認したり、物価からもたくさんの情報を得ることができる。
それらをまとめて国王である父上や宰相に届けているのだ。
でも、ジャスミンには俺は無能のフリをしている、と明かしたから、ジャスミンの前でも多少は動くことができる。
ただ、俺と一緒にいることでジャスミンの悪い噂が出てしまうけれど……。
というか、俺の家に泊まった時点で、どこかの性癖異常者のおかげで噂が広まってるんだよなぁ。
絶対二人の実家の両公爵家も自ら噂を流してるんだよなぁ。
うぅ…どんどん外堀が埋まっていく。
もう俺の家に泊まった時点で、ジャスミンとリリアーネ嬢を娶らないといけないんだよなぁ…。
はぁ…貴族の世界って面倒くさい。
現実逃避としてデートを楽しもう。
「二人とも、変装してもらうけど、それでもいいなら行くか?」
「はい!」
「もちろん行くわ!」
「じゃあ、決定! 服は後で届けさせるから、気に入らなかったらメイドに言ってくれ」
「「はーい!」」
うむ。良い返事だ。
さてさて、二人が楽しんでくれるお店はどこかなぁー?
俺は二人のためにデートプランを考えるのだった。
お読みいただきありがとうございました。
《人物紹介 使い魔編》
名前 緋彩 (ヒイロ)
種族 不死鳥
設定
・赤い羽根、黄色い瞳
・炎と再生を司る
・伝説上の存在
・涙には癒しの力がある
名前 ファナ
種族 吸血鬼の真祖
設定
・長い金髪、紅い瞳
・大商会であるファタール商会のトップ
・裏ギルドや暗殺ギルドなど、王国の裏組織を取りまとめている
名前 ケレナ
種族 雌ブタ……ではなく、世界樹
設定
・緑色の髪、黄緑色の瞳
・伝説上の存在
・メガネ、白衣、胸は大きい
・王立学園の保健室の先生
・高度な治癒術師
・樹液や果実には癒しや解呪の力がある
・超絶のドМ ←ここ大事!
名前 ピュア
種族 一角獣 ユニコーン
設定
・純白
・純潔を司るはずなのにエロエロ
・インピュアとは双子の姉妹
名前 インピュア
種族 二角獣 バイコーン
設定
・漆黒
・不純を司るはずなのに純真
・ツンデレ
・ピュアとは双子の姉妹
名前 ビュティ
種族 スライム
設定
・紫色の髪、紫色の瞳
・眠そうで気怠さを放つ不思議ちゃん
・普段はロリっ子。気分で大人の美女になる
・医学や薬学に精通している
今のところこんな感じです。
まだまだ出てくる予定ですよー!
お楽しみにー!




