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第254話 おまけのSS

本日二話投稿しております。

前話を読んでいらっしゃらない読者様は、まずそちらをご覧ください。

 






 SS1 『隣人の騒音』


 隣の部屋から女性の声が聞こえる。艶めかしい喘ぎ声だ。

 防音の魔道具を使用しているが、完璧ではない。完全に音を遮断してしまったら、来訪者の音も聞こえなくなってしまうからだ。

 ベッドで寝がえりを打つ彼女は、燃えるような赤い髪と紅榴石(ガーネット)の瞳の女性。メリアール・アルストリアだ。


「あぁもう……いい加減にしてよ……」


 ぬくぬくの布団の中で彼女は独り言ちた。

 夜の静寂にひと際大きく聞こえる気持ちよさそうなよがり声。

 気まずい。とても気まずい。どんな顔をして隣人と会えばいいのだろうか。

 女性だって性欲はある。彼女の声に当てられて悶々としてしまう。

 これじゃあ気になって寝られない。

 注意しに行こうか……。


「そう言えば隣って…………なるほど、シランが。納得」


 お隣に住む女性はシランの女だと聞いた。ならばこの止まらない喘ぎ声も納得だ。

 あの性欲の塊に一人で相手する女性の方は大変ね、ご愁傷様、とちょっとばかり同情する。

 そして、ちょっとだけ羨ましい。

 一瞬混ざりに行こうかと思ったが、すぐに頭を振って心を落ち着かせた。


「ふぁ~あ。寝よう……」


 大きな欠伸をしたアルストリアは紅榴石(ガーネット)の瞳をゆっくり閉じる。


 ―――しかし、彼女が眠れたのは太陽が昇りきった後のことだった。



 《SS1 完結》












 SS2 『目利きの鋭い子供たち』



 これは、ソノラが淫魔化して初めて孤児院を訪れた時のこと。


「みんなー! 良い子にしてるー?」


「「「 あぁー! ソノラ姉ちゃ…………誰っ!? 」」」


「ソノラだよ! ソノラお姉ちゃんで合ってるよ!」


 誰、と言われたソノラは少し涙目だ。確かに、淫魔化したことで見た瞬間はソノラと気づかないだろう。

 でも、前の面影は残っている。声はそのままだ。

 長年面倒を見てきた子供たちに疑われショックだった。結構ショックだった。


「いや、だってね……」

「そうだよな……」

「だよね……」

「だな……」

「うんうん」

「私、そんなに変わったかな?」


「「「 変わった! おっぱいが2カップも大きくなってる! 」」」


「なんで服を着てるのに詳細にわかるのっ!?」


 男子女子全員がソノラの胸を指差し、ソノラは自分の胸を両手で隠して後退った。

 もしかして、乙女の禁忌(たいじゅう)も暴露されるのではないかと戦々恐々。

 ちなみに、スタイル抜群になったせいで体重は増加している。

 スタイルが良いことを喜んでいいのか、見たこともない体重に絶望すればいいのか、複雑な心境である。


「「「 おっぱいが大きいソノラ姉ちゃんはソノラ姉ちゃんじゃない! 」」」


 声をそろえて子供たちが言った。


「パッドかな?」

「パッドだろうな」

「パットだ、絶対に」

「パッドね」

「パッドちょーだい!」

「パッドはどうかと思う」

「パッドまでする必要ある?」

「パッドまでしてお兄ちゃんを落としたいの?」


 一人だけおかしな少年もいたが、子供たちは口々に言いたい放題。

 パッドパッドと言われてソノラはもう心が砕けそう。泣きたい。


「そこまで言う!? あぁそうですか。ド平民の平凡な乙女には平凡で慎ましい胸が相応しいですか! 残念でしたー! これは自前でーす!」


「「「 なんだとっ!? とうとう豊胸手術に手を出したのか……!? 」」」


 いや、伝説の豊胸薬かもしれない、と子供たちは大きくなったソノラの胸を偽乳扱い。

 もうツッコミ返す元気も失せた。


「……はいはい。もうそれでいいです。ねえ、他に気になるところない? 例えは目とか……」


「「「 別に。ソノラ姉ちゃんはソノラ姉ちゃんじゃん! 」」」


 あまりにあっさりと即答されてソノラは呆然とした。


「そっか。そうだよね、私は私だよ」


 ふふっ、と微笑むソノラの笑みには安堵が滲んでいた。

 淫魔化して拒絶されるのではないか、と不安だったのだ。

 変わらず接してくれて薄っすらと涙が浮かぶほど嬉しかった。


「「「 ソノラ姉ちゃん。殿下の兄ちゃんと結ばれたんだって? おめでとー! 」」」


「はいはい。ありがと……って、何故知ってるのっ!?」


 シランと結ばれたことはまだ関係者以外誰も知らないはずなのに。

 この子たち、ただ者ではない。なんという鋭さ。


「やっぱりおっぱいか。おっぱいなのか」

「殿下の兄ちゃんはおっぱい好きー」

「おっぱい兄ちゃんだな!」

「いや、おっぱい殿下!」

「巨乳兄ちゃんもあり!」

「じゃあ、巨乳殿下は?」

「それだと兄ちゃんが巨乳みたいじゃん!」

「うげー想像しちゃったじゃん。気持ちわるぅー」

「お兄ちゃんサイテー。お姉ちゃんおめでとー!」

「どうだった? 兄ちゃんとはどうだった!?」


 いつもと変わらず言いたい放題で飛び掛かってくる子供たちを上手く抱き留める。


「あはは……殿下の前では言っちゃダメだからね」


 胸が本物かどうかセクハラされるが、まあいつものことだ。男子の手や頭を叩き、女子は自由にさせる。

 揉みしだくテクニックが熟練しているのは何故か。後で詳しくお話する必要があるだろう。


「お姉ちゃん! 詳しく教えて!」

「もう。ちょっとだけだからね」


 満更でもなさそうにソノラは座り、子供たちも周囲に座った。

 そして、恋する乙女の止まらない惚気話が始まるのだった。

 子供たちは甘ったるそうに顔をしかめ、ソノラに話を振ったことを後悔したのは言うまでもない。



 《SS2 完結》










==========================

作「はい、というわけで第七章ソノラヒロイン章が完結です。調子に乗って予定にないSSを二つも書いてしまいました」


紫「ソノラ? 本当にこれで良かったの?」


蒼「読者の皆様も賛否両論あり、作者さんもずっと悩んでいたそうですが」


黄「はい! 私は殿下のお傍に居られるだけで十分満足です!」


作「ソノラはただの平凡な普通の少女でしたからね。女性陣の美しさに劣等感を抱き、自分を卑下して自信を無くす。王族との結婚の重圧に耐えられない。そんなキャラでした」


黄「もう少しそういう描写を書いてくれた方が読者様に伝わったと思いますけど?」


作「そこは申し訳ございません。作者の力不足です。このまま人間ルートで言った場合の結末は三つです。


・想いを伝えず、今までの関係を続ける友達ノーマルエンド

・想いを伝え、シランと結ばれるが結婚しない愛人グッドエンド

・シランと結婚するが、他の女性と比べ、重圧に耐えられない鬱病妻バッドエンド

 

です。人間ルートのハッピーエンドはありえません。読者の皆さま、よく考えてください。王族との結婚ですよ。現実の皇室やどこかの王室もごたごたしているのに、そんなにすんなりと幸せになれると思います?」


紫「ご都合主義作品だけど、作者って考えて無いようで考えているようないないような……」


蒼「それってどっちなんですかね、ジャスミンさん……?」


黄「それで作者さんが考えたハッピーエンドが、平凡な少女が魅了チートを得て使い魔となり、今までの生活を送りつつ殿下に愛されるって結末なわけです」


蒼「使い魔になっても結婚式を執り行ってくれそうですよね、シラン様なら」


紫「結婚式の花嫁衣装で汚されるのが好きそうな変態もいるし……」


変態「おほぉぉおおおおおおお! 聖なる誓いの前に汚される花嫁! 想像しただけで樹液がぁ~……!」


皆『…………』


作「えーっと、コホン。ま、まあ、読者様にもいろいろあるでしょう。作者はこれで満足です! 伏線とかも大変でした」


赤「ちなみに、第189話で私、アルスが魅了されたときも地味に伏線だったり。インキュバスの動く屍(リビングデッド)の魅了。目が黄金なの。読者様は誰も気づかなかったみたいだけど!」


作「何かご質問があればお気軽に感想欄へどうぞ! 答えられる範囲で答えます。そして、次回から第八章開始です! とうとう親龍祭の後半戦! とうとう奴らが動き出します! ……たぶん」


メイド「では、章タイトルは僭越ながら私が。コホン。『第八章 極光(オーロラ)の眠り姫 編』です」


虹「はいはーい! とうとう私の回でしょ! オーロラも虹に似ているし、眠り姫って私のことじゃん!」


???「そぉ~ですねぇ~。羨ましいですぅ~」


皆『えっ? 誰っ!?』


???「……?」


皆『いや、だから誰なのっ!?』


作「新章もお楽しみに~!」




お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] "マリアさんを兄上がつきっきりで看病した"というところも書いたらいいのにと思いました。面白そう。 次章を楽しみにしてます。
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