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10 盗神の迂闊







 竜騎士は踵を返して、人ごみから離れていく。

 どうにも盗神には女をみた竜騎士の表情が気になった。


 後を追う。


 急ぎではなかったようで、簡単に追いつくことができた。


「お前、すごい顔をしてたが、何かあるのか」


 竜騎士の背中に向けて、疑問をぶつける。

 竜騎士は振り向くと、少し困ったような顔をした。


「見ていたのか、少し趣味が悪いな」


 恥ずかしさを抑えるように、はにかみながらそんなことを言う。


 予想外の反応だ。


 ここ数日で見たことがないものだった。


「実はな、あの娘が眼に止まり、少し気にかけていたのだ」


 竜騎兵はぽつりぽつりと言葉を紡ぐ。


 遠まわしではあるがあの眷属の女に惚れているという事だろ。


「お前が興味を見せるとは珍しい、俺のプレゼントには興味を示さなかったのに」


 皮肉と共に言っておく。

 そんなものがあるならば早く言ってくれればよかったのだ。

 おかげで友達だの、盗品だの無駄なことをしてしまった。


 皮肉はその仕返しのようなものだ。


「勘弁しろ。あれは潔癖のせいだといっただろう。娘に興味を持ったのは、昔の知り合いに似ていたからだ」


 こいつの知り合いといえば、知ってる範囲で言えば、昔パーティを組んでいた面子だろう。

 今の状況からして、そいつとは上手くいかなかったと想像できた。

 そいつに似せれば、高貴神でも代用できないだろうか。


「あの娘とどこが似ていたんだ?」

「光の奔流と、ポニーテイルだ」


 結構具体的だ。そういう場合、普通は雰囲気がなんたらかんたらとか言って抽象的な感じで応えるんじゃないだろうか。

 だが、具体像は手に入れた。

 高貴神でも代用できないこともないだろう。

 ポニーテイルは髪を結ぶだけだし、高貴のスキルなら光がほとばしるような派手なスキルがありそうな気がする。


「なるほど、結構簡単だな」

「簡単?」


 訝し気な目で竜騎士に向けられる。


 しまった、口を滑らせた。


「単純てことだよ。そんな人間巷にあふれかえっているだろうに」

「む。そうか、だがあの娘はほとんど瓜二つだぞ」


 高貴神は候補から完全に外れた。

 竜騎士は、まだ高貴神と何やら、やっている眷属を見つめる。


 好きなものを見る目だったものが、みるみるうちに邪険になっていく。


 「いや、性格があれか、どうやら気のせいだったらしい。我は寝る」


 竜騎士は落胆したらしく、アッという間に疾走し向こうに消えてしまった。


 何かしら糸口が見つかりそうになったところで、無に帰した。

 盗神の中で振り出しに戻った怒りと、自分の不運さによる悲しみがないまぜになる。

 幽鬼じみた眼で高貴神とその眷属を見る。

 竜騎士が見ている間にあいつらは何をやらかしてくれたのだろうか。



 

 高貴神は眷属をほめるが、眷属が否定し続けていた。


 しかもそれをお互いにやめようとしない。


 その様子からは眷属の卑屈さも露になるし、わかててやっている高貴神のめんどくささも良くうかがえる。

 これを見られたのだろう。


 あの反応からして、竜騎士は卑屈な人間を嫌っているのかもしれない。


 奴らの間に入っていて、高貴神の頭をたたく。


 「イタ!何すんの先輩!?」

 「神さまになんてことを!?」


 高貴神と眷属が吃驚する。

 赤の他人のくせに反応が似ている。


 「お前らのおかげで竜騎士の糸口が消えただろうが、ふざけるな」


  高貴神は嫌な顔をしたが、眷属は困ったような顔をしている。


 「なんのことかわけわかんないからまず説明してよ」


 高貴神に竜騎士とのやり取りを説明する。


 「そんなこと言われても、竜騎士に見られてるなんて知らないし、あっちが勝手に失望しただけじゃん。あたしたちまったく悪くないと思うけど」

 「あれだけ、騒ぎが大きけりゃ、竜騎士も見に来てるて考えるだろう普通。そこで一番目立てる紅一点にちょっかいを掛ける、お前が悪い」


 はああと高貴神はわざとらしくため息を吐き、呆れたといった具合に、手を挙げ、首を振る。


 「まず誰かが悪いかとか言ってもしょうがないでしょ。もう過ぎちゃたことなんだから。

大事なのはこれから。この子の自信がないことがダメだていうなら、自信をつければいいだけじゃん」


 高貴神が自分のことを棚に上げたのは気に入らないが、確かにそうである。

 今の状況で、責任を追及しても時間の無駄だ。


 竜騎士からの糸口がなくなったという結果だけに目を奪われて、冷静な判断力を失っていた。


 「ああ、悪い。俺が悪かった、許してくれ」


 本心で言ったが、無愛想な言い方になってしまった。

 あまりに上手くいかない竜騎士攻略の苛立ちが邪魔したのかもしれない。


 「許さないけど、謝ったのは評価しとく」


 高貴神には珍しく、鷹揚だ。


 自分の眷属がいいところを見せたので機嫌がいいのかもしれない。


 「そんな事よりも、この子をどうにかすることから始めないと」


 高貴神と盗神が眷属を見つめた。


 「え、よくわからないんですけど」


 見つめられた当人である眷属は困惑した表情で、二神を見つめ返した。





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