願い
……5月6日の日曜に書いた世界一不謹慎なラブレター。
貴方の脳が何ものにも犯されていませんやうに。
夜半に目が醒めた時、肥えた白蛆が貴方の目鼻から、
米粒みたやうにぼろぼろこぼれるのを見ませんやうに。
貴方の身体が虹色に彩られていませんやうに。
がつしりした革の上着の襟元、ジインズのほつれ目から、
緑や黄色・紫の腐肉が見え隠れしませんやうに。
貴方の名前で便りが出ないで済みますやうに。
薄紫の葉書に描かれた白百合の花が、
私たちにさいごのお別れを伝えにきませんやうに。
貴方の御身が朽ち果てる運命を避けられないとして、
それが長い事雨に当たりすぎた所為としませう。
そんなら世界中の雨雲を私の上にください――
貴方の髪がいつまでも月夜の闇であるやうに。
濡れ羽色の闇に浮かぶ三日月のキユーテイクルには、
雨のしずくも落ちない、冷たい斑雪も降らないでせう。
そこで貴方と二人、月の皿で蜂蜜入りミルクを飲む。