祖父が遺したもの
「将来、お金に困った時は、これを使いなさい。」
生前、じいちゃんがそう言って、僕にくれた箱。
よくわからないけど、なんか高価そうな木製の箱で、掛け軸とかが入っていそうな感じのやつだ。
でも、掛け軸が入っているにしては軽すぎる。
まあ、掛け軸がどの程度の重さなのか知らないから何とも言えないし、なんとなく開けてみるのも気が引けて、結局、中は見ていない。
じいちゃんが亡くなり、20年以上経ったある日、ふと、その箱のことを思い出した。
特に、お金に困っていたわけじゃないけど、いざ、その時が来る前に、1度確認しておいたほうがいいような気がした。
押し入れから箱を取り出し、表面のホコリを払って、紫色の紐を解く。
ゆっくり蓋を開けると、まず目に入ったのは、古い新聞紙。
それを広げると、中からはらりと1枚の紙片が落ちた。
「!」
拾い上げた紙片と、新聞紙を交互に見る。
『将来、お金に困った時は、これを使いなさい。』
確かに、これだけあれば、一生お金には困らないね。
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ありがとう、じいちゃん。
でもね
払い戻し、1年以内なんだ……