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prologue-2

 暫く二人して、何も喋らずに白や黄、緑、ピンクと様々に照らされた道を歩いた。少し目線を上げてみると、その光に照らされる、手をつないで歩く男女が幾組も見えた。それで少し落ち着いてきた。軽く息を吐いた。


「こんなに今日が楽しいなんて想像してなかった。あの日声をかけてくれた時も、一週間前に今日のことを誘われたときも、正直なところ、どんな感じなのか、全然想像つかなかった。でも、あの日から今日まで、それまでとは全然違う日々だったし、今日だって、こんなに遊んで、はしゃいで、疲れて、一緒にご飯食べて、手をつないで一緒に歩いて、『楽しい』って言葉に収まらないくらい、満たされる時間だった。」


 頭の中にイメージだけある伝えたい事を、言葉に整理する時間が必要になった。今度は私が彼女の右手を握りなおす。自分の中の言葉のイメージを見失わないために、彼女の顔は見ない。見ずとも、彼女が何も言わずに待っていてくれるだけで、今となっては何となくわかる。


「今、こうやって貴女が私の手を掴んでる。それだけで私は満足みたい」


 今度は、彼女の眼を見て云った。まだ云いたいことは残しているが、久しぶりに彼女の瞳をちゃんと見たような気がした。


「私が掴んだわけじゃありません。貴女が私の手を取ってくれたんです。だって、その手を握れるかどうかは、私が決められることじゃなかったですから」


「じゃあ、私が離さないようにしないといけないのね」


 いたずらっぽく笑いながら云えば、彼女の握る手にみるみる力が入ってきた。


「そんなことないですよ? 一度掴んだからには、もう逃がしません」


 彼女も、いたずらっぽく笑った。そして、その笑いを不敵なものに変えて云った。


「今度は、貴女に、あの言葉を言って欲しい。たまには私もわがままを言ってもいいですよね」


「あーあ、催促されちゃった。なかなか言い出せずにいたの」


「大丈夫です。わかってます。本当なら、応じてくれただけで満足すべきなんでしょうけど、やっぱり、あれですね、言われて安心したいみたいです」


「うん、言うよ。とは言っても、まだ、あれからひと月しかたってないんだけどね。――」


 私が伝えたかった気持ちを口にする瞬間は、もうほんのすぐそこに来ていた。


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