第3話
「……なあ」
俺から取り上げた手帳を読み進めている様子に腰が引けているがガクの手は止まる事はない。
どうして良いかわからずに戸惑っているとガクの手が止まった。
「俺とお前を題材にしたものも書かれているな。俺が攻め、お前が受けだ」
「Noooooooo!?」
ようやく、身体が拒否感を示したと思い、胸をなで下ろすのだがガクの口から出てくるのは死刑宣告だった。
どこかで予想はしていたものいざ現実を突きつけられては心が折れてしまう物で崩れるように床に膝をついてしまう。
「……ガク、どうしてお前はそんなに冷静なんだ?」
「読み物としては問題ないだろ。多少、登場人物になんがあるけど、内容自体はただのホモおな恋愛小説。脳内で美少女同士の絡み合いに変換すれば問題ない」
……美少女同士に変換だと? それは頭になかったガクは天才か? 美少女の宇木と美少女なハルの絡み? お? なんかいけそうな気がするぞ?
天才的な発想だと思い、先ほど見た手帳の内容を脳内で変換しようと試みる。
「……無理だ」
「半裸で想像できないなら。胸はお前が好きな小さい感じで行けば良いだろ。2人とも特に胸板が厚いわけじゃないから行けるだろ」
しかし、そんな変換できるわけがなかった。考えても見て欲しい。半裸の友人2人が抱き合っている姿を美少女に変換できるわけがない。
床を叩く俺に向かって更なるアドバイスが向けられた。
ちっぱいに変換だと? それなら行けるか? ……いや、待って欲しい。男の半裸の変換をちっぱいにするだと?
そんな事が許されるのか? 否、許されるわけがない。
おっぱいは……そして、ちっぱいはもっと尊い存在だ。半裸の男に変換して良いはずなどない。例え、神が許してもこの俺が許さない!!
「ガク、お前はちっぱいをバカにするな!! おっぱいは神が女性に与えた奇跡だ。そんな尊いものをバカにするな!!」
「あの、失礼します。先ほどは……し、失礼しました!?」
おっぱいを陥れようとするガクに向かって、声をあげる。これだけは絶対に譲る事はできない。
ただ、タイミングが悪かった……先ほどの女生徒が再度、ドアを開いた。
当然、俺と女生徒の空気は一瞬に凍り付く。そして、女生徒はまたも勢いよくドアを閉めて逃げて行ってしまった。
「……なんてことだ?」
ホモ疑惑だけではなく、拳を握り締めておっぱいについて熱く語る男。
間違いなく、明日にはこんな不名誉な事が噂として広められるだろう。
涙しかでない……いや、涙すら枯れてしまいそうだ。
「別におっぱいをバカにする気なんてない。巨乳も貧乳も美乳も等しく尊いものだ。むしろ、お前のように貧乳のみを尊び、巨乳を蔑ろにすることを俺は許さない」
「お前はもっと動じろ!!」
膝をつき、立ち直れない俺に向かって原因を作ったガクはまったく動じることはない。それどころか奴は背景にキリッと浮かび上がるくらいに堂々とした様子でおっぱいについて語る。
さすがは魂の兄弟と言っても問題ないくらいの心友だ。奴の言い分は間違っていない。ただ、状況としては間違いだらけだ。
「動じるも何も男としては当然の主張だろ?」
「……確かにそうかも知れないけど、完全に勘違いされたぞ」
「気にするな。男はみんな変態と言う名の紳士だ。それより、この手帳はどうするつもりだ? さすがに落とし物として職員室や生徒会に届けるわけにもいかないだろう?」
広まるであろう噂に気が重くなっている俺の事など気にする事なく、ガクは手帳を読み終えたようで手帳を机の上に置く。
ガクもこの手帳を人目に触れさせたくないようであり、意見を求めてくる。