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妖物語 ~金色夜叉~  作者: 飯綱 華火
26/28

鬼と呼ばれし者/1

明けましておめでとうございます。


年明け早々ですが、宜しければ拙作をお楽しみください。


 ――――夢を見ていた。


 そこは見た事もない場所で、私はまるで知らない衣装を身に纏う。

 辺りは霧。霞みがかった白い世界。

 まるで景色の判別できないそこで、何かを追いかけている。

 見えない、けれど、問題ない。


 私は私自身の感覚が鋭敏化されている事を感じ取る。


 だから、見えなくても問題ない。聞こえなくても気にしない。

 ただ本能的に、いる、とわかる。

 それはまるで猟犬のようで、

 ただひたすらに追いかける。


 けれど、それがなんの為であるのかがわからない。

 どうしてそんな事をしているのかもわからない。


 理由が、まるでみえない。

 けれど、それがとても大切で重要な事なんだと私の中の何かが訴える。


 ――――でも、本当にそうなんだろうか?


 ふっと湧いた疑問に足が止まる。

 ぴたり、と。

 今まで休むことなく動き続けていた身体が制止し、私は漸く自分を顧みる。


 胸が苦しい。いや、息苦しい。


 何かで塞がれている様な、そんな感覚。

 おそるおそる手を顔に持ってくる。

 それが、手に触れた。

 靄と、そう思いこんでいた物は、そうではなかった。

 手に触れたそれを剥がす。

 いや、顔に嵌まっていたそれを外す。

 ゆっくりと外し、裏返す。


 それは、赤い四つの瞳を刻んだ金色の仮面だった。




 ――――――――目が、覚めた。



 ◇◇◇



「――――」


 …………今のは一体、なんだったんだろうか。


 目が覚めたのは、覚醒とも呼べるようなそんな反応だった。

 赤い、四つの瞳を描いた金色の仮面。それを手に取ったところで私の意識は覚醒し目覚めた。

 自然と状態を起こし、そのまま掌を見る。もちろんそこには何も無いのに、なぜか、手に持っていたかのようなリアルな感触が残っていた。

 本当に、いったいなんだったんだろうか。

 そっと頬に手を触れるもそこにあるのは私の肌の感触だけ。当然だ、あんな仮面知りもしないし被ってもいない。

 なのに、心に残るこの妙にリアルな感覚はなんなんだろう。


「…………」


 しばらくじっと掌を見つめる。

 けれど何かが現れるわけでもなく、答えがわかるはずもない。


「……起きよう」


 ようやく、私はベッドを出る事にした。



 ◇◇◇



 玄関を出て傘を差した。パッと、赤い花が咲く。

 鞄を片手に、肩に担いだ袋がずしりと重い。これは竹刀袋よりも短い『居合刀ケース』というものだ。

 中に入っているのは昨日ミナトさんから貰った降魔の利剣。曰く、私にはこの武器が一番合っているそうだ。

 居合刀ケースは傘に隠れるようにして周りからはよく見えない。

 大きく開いた赤い花はどんよりとした空の下できっと異彩を放っているだろう。ふぅっと吐きだした息が白く染まる。


 ざぁざぁとうち付ける音に耳を傾けながら陰鬱な空を見上げた。


 昨日とはうって変わって曇天の雨空は薄墨色をしていてまるでこの後に雷雨にでもなりそうな顔をしている。

 なんだかこの空模様に染められて、心までもが暗くなっていきそうだ。ブレザーの襟を僅かに寄せた。


 容赦なく振り付ける雨足に自然と私の歩調が早くなる。後ろを押されるように急いて、そんな私と同じように、町行く人波も早回しのように忙しない。

 雨、というだけでどんよりと気持ちが落ちる。どことなく町全体が沈んでいるかのようだ。


 だから余計に、学校に辿り着いた時に私はほっとした人心地つく。


 下駄箱で濡れたローファーを押し込み代わりに赤いスリットの入った上履きに履き替えて、空模様の所為でどこか薄暗い感じのする校内を教室に向かって足早に歩いていく。

 階段を上がり廊下を折れて通路のどんづまり。教室が連なるその一番奥が私のいる教室だ。

 がらり、と扉を開ければ天候などどこ吹く風とばかりの喧騒が教室を包み込んでいた。

 どんよりとした雰囲気はもとからこのクラスに似合わない。

 こんな重苦しい天候ではそれがありありと実感できほっとする。

 なんだかようやく、一心地付けた様な気がした。


「おはようレイコ」


 扉を開けるともう先に来ていたミノリと目が合った。そのまま挨拶を投げるミノリの視線は一点、私が下げた居合刀ケースに注がれる。

 竹刀袋を私が掲げているのならそれは日常の出来事だ。剣道部員として何らおかしな所は無い。

 けれどこれはそうではない。むしろ日常で目にする機会すら稀なもの。

 剣道部員だからこそ余計に抱くその違和感がミノリの眼から零れた光に現れていた。


「あれ、レイコそれ――」


 当然、こうなることは予測の範囲内。疑問を即座にぶつけようとしてくるミノリに用意してあった言い訳を出す準備をする。

 けれど、それは知られることなく消えていく。


「おう、おはようレイコ」


 言葉を返すよりも先に、ナオヤと視線が重なった。

 当然のように、告げられた言葉。

 それは当たり前の日常風景。

 けれどそれはほんの微かに、確かな違いが現れて。


「ええ、おはようナオヤ」


 思わず笑みを浮かべた。

 電話越しではない直接の声。ナオヤと直に会って、それだけで心がふわっと軽くなる。

 昨日でだいぶ回復したと思っていたダメージは、ここにきて漸く全快したようだ。

 でもどうやら私の回復とは正反対に、ミノリが多大なダメージを被ったようで、まるでハトが豆鉄砲を食らったかのような面白い表情を浮かべて凍りついていた。


「おはようレイちゃん」


 にこにこと、心なしかいつもより一層朗らかな笑顔を向けてくるメグミは何も言わなかった。けれどその微笑みだけで私は彼女が全てを悟った事を知る。

 これでも一応幼馴染だ、メグミがそうであるように、私だってメグミの感情くらい読みとれる。


「なんだか久々にレイちゃんのブレザー姿を見た気がするよ。やっぱりレイちゃん、きちんと制服着ていると格好良いね」

「え、そう?」

「うん」


 私たちの学校の制服はブレザーにネクタイの組み合わせが正装だ。普段の私はネクタイに紺色のセーターを着用しているけれど、今日は寒かったからブレザーまで羽織っていたのだ。

 そういえば今年に入ってメグミがこの姿を見るのは始めてかもしれない。

 ほんの少しだけ廊下よりも室温の高い教室。私はブレザーを脱いで椅子の背もたれに掛ける。


「あ、そうだレイちゃんにお願いがあるんだけど」


 ぽふっと手を叩くメグミ。白色のセーターを着た彼女は袖が少し余り気味だ。袖ごと叩いた掌が可愛らしく音を立てた。


「宿題でわからいところがあってね」

「ああ、そういえばあったわねそんなもの……」


 自分の本分がなんだったのか思い出す。放課後の行動が学生と離れ過ぎていてすっかり忘れていた。


「お、なら俺も教えてくれよレイコ。俺なんかさっぱりわかんねぉえからよ」

「あら、珍しいわねナオヤ。あなたがまともに宿題してくるなんて」

「良いだろ別に。たまたま暇だったんだからよ」

「――――」


 なんで彼が時間をもてあましたのか、普段やらない事に手を出したのか、それまでの経緯が容易に想像できて言葉に詰まる。

 つまり昨夜のナオヤは普段とは違う行動で紛らわせる必要があるくらい他の事に気を取られていたという事。


「今回だけ、特別だからね」

「おう、助かるわー」


 プリント用紙をひらひらさせてさっそくやってくるナオヤに私は何も言えなかった。

 ちょっと前ならもうちょっと言葉を返しているのだろうけれど、今の私ではどうしても甘くなってしまうのは仕方ない。


「――――って、ちょっとまてぇぇぇぇい!」


 教室に突如響く大絶叫。

 漸くフリーズの溶けたミノリが思い出したように動きだした。


「どうしたのよミノリ、朝っぱら騒がしいわね」

「いやいやいや! どうかしたのってそれはあたしの台詞だ! レイコ、あんたケンの事なんて呼んだ!?」

「なんてって、ナオヤって呼んだのだけど?」


 さも当たり前のように、腕を組んで視線をミノリに流す。


「ちょ、なにその態度!? 昨日まで全然そんな呼び方してなかったじゃんレイコ! てかナオヤって、名前呼びってそれ……」

「そんなに驚く様な事かしら? 自分の恋人くらい名前で呼ぶでしょふつう」

「――――っ!!??」


 努めて平静に、当たり前を装って。

 ぐっと堪えた私とは反対に、ミノリは今度こそ盛大に目を剥いた。

 声なき声が上がっている。ついでに教室のあちこちで黄色い歓声。

 ミノリほどではないけれど皆気になっていたらしい。

 ま、誰も私とナオヤが付き合うだなんて思ってもみなかったに違いない。


「そのくらいでいい加減に落ちつけよ鷲崎」


 と。見かねたように兎塚くんがやってきた。そういえばナオヤとの一番の親友である彼はまるで動じていないようだ。

 ふむ、と腕を組んで周囲を見回す。自然な動作が一々様になるなこの男は。

 第一ボタンまできちんと止めネクタイを締め、黒いフルオープンタイプのセーターを着た彼はまるですご腕の執事のようだ。


「そこまで驚く事でもなかろうよ。むしろ皆薄々わかっていた事だぞこれは」


 ――――え?


「むしろ鷲崎がそこまで驚く方が逆に驚きだな。どうせ遅かれ早かれこうなるというのはクラス総意の見解だと思っていたのだが」

「はぁ!? いったい何時からそれが総意になったわけ!? つーかなに、気づいてなかったのあたしだけ?」

「少なくとも一昨日大神が教室を飛び出した時点で予想していたけどな、俺は」

「ちょ、どういう事よ兎塚くん!?」


 気がつけば私は綺麗さっぱりと仮面を剥ぎ取られていた。

 狼狽してしまった私にニヤリと意地の悪い笑みが向く。


「なに、今までの二人のやりとりを見ていればそう見えてもしかたがないさ。あれはどうみても互いが照れ隠しにじゃれあってる様にしか見えないからな」

「んな――!?」


 この男、今しれっととんでもない発言をしなかった?


「ま、そういう事だ。だがまぁとりあえずはおめでとう、と言っておくか。ああそうだ、ナオヤ、お前は何も口を挟まないのか?」

「俺が口で京介に敵うわけねぇって。てかレイコが言いくるめられてる時点で俺白旗上げるしかねぇから」

「それもそうか」


 くくくっ、と楽しそうに意地悪く笑う兎塚くん。なんだろう、今すぐにでもあの眼鏡を叩き割りたくなってきた。


「はーい、みんなおっはよー」


 ちょっとした破壊衝動に心が揺れ掛かった矢先、明るく朗らかな声が教室に木霊した。


「あれ、弥生ちゃん」

「はいはーい、おはよう鷲崎さん」


 ミノリの声ににこやかに手を振る岡崎先生。そのまま教壇に立つとパンパン、と手を叩いて注目を集める。


「はーい、ちょっと聞いてくれるかな。まだ予鈴前なのにごめんね、ちょっと緊急の伝達事項があるので早めにやってきました。なのでみんな席についてくれるかなー?」


 唐突な登場に毒気を抜かれてしまった。とりあえず兎塚くんへの対応は保留としよう。

 訝しげに席に着き始める皆を見ながら先生はぐるりと教室を見渡した。


「本当なら全校集会を開く所なんだけど、実は今体育館が使えません。だからこうして早めに先生がやってきました」


 ざわめきが一層大きく広がる。

 体育館が使えない。その言葉に思わず心臓がドクンと跳ね上がる。

 席に着いた私たちを、先生は教卓からぐるりと見回した。


「はい、ありがとう。じゃあ単刀直入に本題から入ります。

 実はこの間の旧館の崩落を受けてこの学校の建物の耐震性の見直しがこっそりとされていました。で、その結果として実は体育館もちょっと古くなってきている、という結論が出たのね。

 なのでその確認と補修を行うために体育館の使用が全面的に禁止される事になりました。

 そんな訳で当面の間は体育館を使用する部活動はその活動を自粛、あるいは他での代理対応、という形になります。あと建物自体は大丈夫なんだけど、武道場は崩落した旧館の傍にあるから撤去が終わるまではやっぱり使用禁止となります」

「え、ちょっと待ってよ弥生ちゃん! 使えるのに使っちゃダメってこと!?」

「うん、その通り。可哀相だなって先生も思うんだけど、こればっかりは安全第一だからごめんね鷲崎さん。という事で剣道部部長の大神さんには後で個別でお呼び出しがあるからよろしくね」

「わかりました。当面の活動に対する打ち合わせ、ということですね」

「はい大正解。やっぱり大神さんは話しが早くて助かるよー」


 ニコニコと手を合わせる先生の笑顔を見ながら心の中だけで謝る。

 どう考えても今回のこの措置は昨日私たちが戦った事に影響がある。

 そして、昨夜の後の今朝。この対応の早さにはやはり、と言わざるを得ない。


 どこの誰だかは知らないけれど、私たちの敵はこの学校の中にいる。


 今までの状況と、佐々木先生が事件に一役買っていたことから薄々感づいてはいたけれど、ここまでくれば確信を持って良いだろう。

 こっそりと携帯を開く。

 ただ簡潔に、今ある事実だけをミナトさんに送った。


「それから、今後の授業にもちょっとだけ影響が出ます。具体的に言うと体育館を使用した体育の授業がしばらくできません。なので当面の間女子の体育は自習扱いになります。うちのクラスはさっそく今日の体育が自習ね。あ、男子は外でやるみたいだから安心して暴れておいで」


 先程の通達の混乱とは変わって、今回はどこかほっとした空気が流れた。女子の体育中止はみんなにとって嬉しい事なのだろう。ミノリのようなタイプにとっては自習の方が辛いだろうけれど。


「急な事で本当にみんなにはごめんなさいというしかありません。でもどうしようもない事だからわかってもらえると先生は嬉しいかな。

 それから今後の部活動に関しては室内系の活動に関わらずグラウンドなどを使用する部活にも影響が出ます。みんなで練習できる環境を作らないといけないからね。

 そんなわけで各部の代表者の人たちは後で集まってもらうのでそのつもりでいてね。練習についてはその後でそれぞれの部長さんから聞くようにしてください」


 確認をするように、ぐるっと見渡した先生に誰からも言葉が出なかった。

 唐突な出来事を皆それぞれで整理しているのだろう。そんな様子を見てパンパンパンともう一度先生が手を叩く。


「さて――じゃあこれからいつも通りのホームルームに移りまーす」


 いつもよりほんのりと高い声音。切り替えるように、岡崎先生は形式だけの出席を取り始めた。



 ◇◇◇



 ミナトさんから返信が届いたのは、丁度授業が終わった時だった。

 私の確信に対しミナトさんは待機を命じた。それもだいぶ強く。

 どうやら私が一人で動くと思われたみたいだけれど、私は私自身の実力を把握している。

 一人で動いた結果、碌な結末にならないだろうというのは想像できていた。だからミナトさんがいないところで事を荒立てるつもりは毛頭ない。

 また高見さんについてはまだ昏睡状態という事らしい。

 昨日だいぶミナトさんに痛めつけられていたからきっとそれが原因だろうと、あえて楽観視する事にした。


「レイコー、どうかした?」


 自席から動かずにずっと携帯と睨めっこしているとミノリがやってきた。

 朝の騒動はなんだかんだと引っ掛かる様だが、まだ問いただすべき時でないと判断を下したのか態度はいつも通りだ。


「ちょっとメールをね。大事な連絡が届いたから確認していただけよ」

「なになに大事な連絡って。ケン意外に大事な連絡とかあっちゃうわけ?」


 訂正。ニヤリと笑ったミノリは隙あらばいくらでも噛みついてくる雌豹だった。


「そりゃああるわよもちろん。例えば家族とか友達とか。それに、ミノリの事だってとても大切なんだから」

「うっわ。ちょっとレイコその返しはひどいなぁ。それじゃああたしが悪者みたいじゃん」

「あらどうしてかしら? 私は正直な気持ちを伝えただけなのに、悪者と思うようなやましい事でもあった?」

「ないないありませーん。てかあたしが悪かったからこれ以上は勘弁!」


 耳を塞いで勢い良く首を振るミノリ。それを見ていたメグミがくすりと笑った。


「あ、メグミまで! 笑ってないで助けてよー」

「あはは、そんなんじゃダメだよミノリちゃん。レイちゃんって結構な恥ずかしがり屋さんなんだから、からかうといじめられちゃうよ」

「ほんと、レイコってばだいぶ加虐趣味だよね、まったく」

「でもそれは照れ隠しなだけだから、いじめっ子じゃないからね?」

「それは知ってるよメグミ。でもあたしにとってはいじめっ子みたいだけどね」

「あらミノリ、なら今度公的にいじめ抜いてあげるわ。具体的には稽古で、ね」

「や、それだけはマジで勘弁してください大神主将!」


 さっとミノリが顔を青ざめさせて、やっぱりそれを見てメグミが笑う。

 ちらりと視線を投げればナオヤが男子に囲まれて何やら質問攻めに合っている。

 外は相変わらずの雨模様。どんよりとした黒い雲に覆われて陽の光は欠片も射し込まない。

 けれど、この教室の中はそんな外の世界などお構いなしに朗らかで温かな笑みに満ちている。


「――――」


 今朝の夢の影響かもしれない。

 この幸せの時を無くしたくないと、強く思った。


「レイちゃん」

「――――え?」

「大丈夫、レイちゃん? なんだかぼんやりしてたけど」

「え、ああ、ごめんメグミ。ちょっと考え事してて」


 すっと、澄んだ瞳が向けられる。真っ直ぐな視線に、私は無言でメグミを抱きしめた。


「うわぁっ?」


 びっくりして胸の中でもがくメグミをそのまま抱きしめる。じたばたと暴れたメグミはすぐに大人しくなって、むしろ身体を寄せてきた。


「うん? なになにレイコ、急にどうした?」

「なんでもないわよ。ただ急にメグミを抱きしめたくなっただけ。あ、なんだったらミノリも抱きしめてあげようか?」

「やー、あたしは大丈夫かな。メグミと違ってあたしはそのまま技とか掛けられそうだし?」

「しないわよ、そんなこと」

「ほんと?」


 もちろん、と頷いて、つでにパッと腕を開いて見せる。

 ちょっとだけ迷うようなそぶりを見せて、そのままミノリは私の腕の中にトンとやってくる。


「…………なんか、あったかい、かも」

「でしょ?」


 同じようにぎゅっと抱きしめてミノリの温かさを存分に確かめる。

 そんな事をしているうちに、休み時間が過ぎていった。



~次回~

第八話 鬼と呼ばれし者/2

01/02(月) 18:00更新

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