片鱗 ~秘めし者~/1
――――いつもより早くに目が覚めた。
すっきりとした心地良い朝の目覚め。昨日の影響か、すごく良く眠れたみたいだ。
それでもカーテンを開けた先の空はどんよりとした生憎の曇り模様。それを少し、残念に思う。だって、これで快晴であったならとても穏やかな気分でいられたと思うから。
ここ数日で私の人生は劇的に変化した。人生なんて言葉が大袈裟で無いくらい、唐突に。
そして昨日、私と彼の関係にも変化があって。
だから、その始まりの一日目くらい、穏やかであってもいいと思ったのだ。
◇◇◇
空は今にも泣き出しそうに曇っている。灰色の雲が多く、その中に時折黒い雲が混じる。
こんな天気では外にいるだけで気持ちが沈んでしまう。そのせいか心なし学校へと向かう足取りも速くなってくる。
校門から眺める校舎も何処か沈んで見えた。
それでも、思った通り私たちの教室はそんな雰囲気とは無縁の様相らしい。入る前から廊下にまで賑やかな声が聞こえてきていた。
「よう、大神」
「おはよう、ケン」
一番で迎えてくれたのはケンだった。
相変わらずのムードメーカーっぷりでケンを中心に教室は賑やかな雰囲気をかもし出している。ミノリもそれに交じってバカ騒ぎをしているし、私はそんなクラスの様子を眺めながらいつものように席に着いた。
「おはよう、レイちゃん」
「おはよう。こんな天気だっていうのに、本当、相変わらずね、うちのクラスは」
「うん。でもわたしは好きだよ、こういうの。すごく楽しいもん」
「ええ、それは同感ね」
二人してバカ騒ぎっぷりを眺める。
他のみんなも気持ちは同じなのか、後から入って来るみんなも教室に入るとどこか安心したような表情を浮かべている。
こんな暗い空模様では明るい教室が嬉しいんだろう。
「おっはよー、レイコ」
「おはよう。あっちで騒いで来なくていいの?」
「いいのいいの。それよりどうしたのよ、レイコ。今日はやけに穏やかじゃん」
「穏やかってね、いつもこんなだと思うけど、どこか変かしら?」
「変だって。ねぇメグミ。メグミもそう思うよね」
同意を求めるようなミノリの声にメグミはただふるふると首を横に振っただけで答える。
「ほら、メグミも違うって言ってるじゃない。あなたの思い過ごしよ」
「えぇー、絶対変だってー。だって今日のレイコまだケンと言い争ってないもん」
「……いくら私でもそう毎日ケンと言い争うわけじゃないのよ?」
「うっそだー。あたしケンとレイコがケンカしてないとこ見たことないもんね」
「それは違うよ、ミノリちゃん」
と。ここでメグミが口をはさんでくれた。
「あのね、レイちゃんと犬養くんはいつももこんな感じだよ。ミノリちゃんが違った見方をしているだけで二人は仲良しだよ」
「仲良しって、まぁ悪いとは思ってないけど。でもなんていうかなー、二人がもめてくれないと盛り上がりに欠けるってやつ?」
「あのねぇ、私たちで盛り上がらないで貰いたいわ。それに仲が悪くないってあなたも認めたでしょ。だからこんなもんよ、私とケンは」
「マジ?」
「ええ。で、どうしてそんなに私たちを仲悪くさせたがるのよ、ミノリは」
「いやいや別にそんなつもりはないって。ただほら、二人が口喧嘩してると楽しなぁって思っただけで」
それに私は肩をすくめて男子と楽しそうにおしゃべりをしているケンを見る。
……確かにミノリの言う通りここのところ私はケンに結構突っかかっていたかもしれない。
「……」
「……」
ケンが不意に私の方を見た。
ほんの一瞬、視線が合わさる。
でもそれだけ。私たちはほんの少し笑みを浮かべあっただけで、ケンはすぐにまた話に戻っていく。
「なに!? 今のなに!?」
「別に、何でもないわよ」
確かにこうして穏やかなのは久々かもしれなかった。
「おはよー」と言って岡崎先生が入って来る。旧館の件は落ち着いたのか今日は普段通りだった。日直が号令をかける。
「はい、おはよー。……うーん、やっぱりうちのクラスにも風邪引きが増えてきたねぇ」
クラスを見渡して先生はまずそんな事を言った。
でも確かに昨日に比べるとまるで虫食いのように空いている席が目につく。マスクをつけている子も何人かいた。
「もう寒くなってきているからね、きちんと予防しとかないとすぐ風邪引いて寝込むことになっちゃうから気をつけてね。
じゃあ今日の連絡に移ります。まず今日の一時間目の数学なんだけど、昨日も言った通り佐々木先生がしばらくお休みするので先生が変わります。本当は佐々木先生が戻るまで別の数学の先生が代わりに着くんだけど、ちょっと急だってこともあってこのクラスだけ先生が受け持つことになりました。なので今日は一時間目から私がやるからよろしくね。一応数学の教員免許も持ってるから安心していいからね」
そういえば前に佐々木が岡崎先生は理数系のエキスパートだって言っていた。いなくなった佐々木の代役を任せられるくらいだから信頼されているんだろう。
教師になったばかりだと言うけどエキスパートと呼ばれる人は伊達ではないという事か。普段そうは見えないだけにそのギャップに驚いてしまう。
「えっと。それから女子に嬉しい(?)お知らせがあります。今日からしばらく都合により体育館が使えないので今日の女子体育は室内での自習になるそうです。私が学生の時は体育がないと嬉しかったんだけど今の子もそうなのかな?」
首を傾げる先生を余所に女子の何人かは歓声を上げて喜んでいた。
私やミノリのように運動が好きという子もいるけれどメグミみたいに運動は苦手という子も女子には多い。だからうちのクラスで体育はあまり好かれてはいなかった。
先生への返答は女子の態度で一目瞭然だろう。後ろでメグミがほっとしているのがわかる。
「詳しくは良くわからないけどなんでも体育館の点検とかでしばらくは使えないらしいから第一、第二両方とも封鎖することになったと荒巻先生がおっしゃっていました。きっと旧館崩落の影響で点検とかかな。なので体育館を使う部活も今日はお休みになるそうです。よかったね」
またもあちこちから歓声と嫉みの声が上がる。急にオフができると嬉しいものだ。
ミノリが期待を込めて私を見てくるがそれは無視する。というよりも私自身今日の部活をどうするかまだ決めていない。しばくは休もうとは思ってはいるけれど、それでもできる事ならやりたいと思うのが主将というものだ。
あとで旧館の様子を見てくるとしよう。
「はい、てな訳で朝の連絡はお終いにしまーす。さっき言った通り一時間目は私が数学の授業やるからねー」
ちょうど良くチャイムも鳴ってホームルーム終了。
数学の教科書を引っ張りだしていると先生が私を手招きしていた。
「はい、なんでしょうか、先生」
「うん。昨日はありがとね、大神さん。おかげで随分と助かっちゃった」
「いえ。あれはケンも手伝ってくれましたから、私だけの成果じゃないです」
「そうなの? じゃあ犬養くんにもお礼を言わないとね。でも本当にありがとうね」
それだけ言うと線背は教室を出ていく。おそらく一時間目の教材を取りに行ったんだろう。
入れ替わるようにケンが私のところに来た。
「ケン。先生がありがとう、だって」
「ん? 別にたいしたことしてないけどな」
「でも助かったらしいわよ。素直に受け取っとけば?」
「でもよー、俺が昨日作ったプリントの束って科学の問題集っぽかったぜ? あれでこっそり答え教えてくれたら嬉しいんだけどなぁ」
「そういうこと言わないの。ま、もしわからないようなら私が教えてあげるわよ」
「マジか。サンキュー」
そんな事を話しているうちにまたチャイムが鳴って岡崎先生が入って来る。手には問題らしきプリントを持って。この短時間で取りに戻ってこれるとは、案外先生の運動神経も伊達ではないのかもしれない。
「げ。マジかよ。昨日はあんなのなかったよな?」
「前から用意しあったんじゃない? まぁ観念することね。席が離れてるから授業中は助けられないわよ」
「じゃあ佐々木の時みたく携帯でってのは?」
「あれは例外。残念ね。私、そこまでやさしくないもの」
「ちぇー」
しぶしぶと言った風にケンは席に戻っていった。
「ふふ、やっぱり。今日のレイちゃんすごく嬉しそう」
「え? そう?」
「うん」
全てお見通しと言われてりるかのような微笑見せるメグミ。なんだか本当にそんな気がして、観念した私は小さな笑みを浮かべて見せた。
◇◇◇
「いや、無理だろこれ!」
授業終了のチャイムが鳴る。本日二度目の岡崎先生の授業は本業の科学だった。そして四限目の終了は同時に昼休みの始まりの合図でもある。
そんな幸福のベルをかき消すようにケンが叫んだ。手にはプリントの束。数学のプリント一枚でげんなりしていたケンはもはや泣きそうな顔で束を見る。
これは昨日ケンがつくったもので、朝の予想通り科学の問題集だったそれは儚い希望を裏切って宿題となったのだった。それも明日までの。
「鬼だろ!」
「まぁまぁ観念しなってケン。弥生ちゃんも忙しいんだよ、きっと」
「あら、珍しく余裕ね、ミノリ」
「まぁね。なんかあたし科学って好きなんだよね。だからよくわかるのさっ。なんならあたしが教えてあげようか、ケン?」
「絶ッ対、拒否ッ! お前に教わったら俺もう終わりじゃんかよ」
ぶんぶんと首を振ってケンはきっぱりと否定する。面白そうにミノリはからからと笑って、
「ふーん、じゃあどうすんの、ケンは? 諦める?」
「諦めるかっ! 大神! 助けてくれ!」
私は椅子からずり落ちそうになった。
「あのねぇ、そこで自力で解いてみせるとか男らしいこと言えないの?」
「おう。つーか無理だ」
「……ナオヤ、観点がずれてるぞ」
「あはは、でもある意味男らしいよね」
「でもそこを断言してほしくなかったわ。……はぁ。まぁいいわ、教えてあげる。そのかわり教えるのは解き方だけよ」
「おう! サンキュー大神!」
満面の笑みのケン。その顔に私はピッと人差し指を突き立てる。
「ただし、交換条件付きよ」
「お、おう。なんだよ」
「一個。あなたのおにぎりをくれないかしら。それで取引成立にしてあげる」
「…………なんか安くない、レイコ?」
「いいのよ。それに気にいっちゃたしね、ケンのおにぎり」
ほんの少し目が点になっていたケンは、すぐに「おう」と言ってにやりと笑った。
「そんなんでいいなら毎日お前の分も作って来るけどな」
「そうなの? ならお願いしようかしら。でも手助けはその日の気分次第って事で」
笑い返し言い返す。それにケンは「ちぇー」と残念そうなそぶりを見せるが顔は笑っていて、すぐにポーンとおにぎりが飛んできた。
「ありがと。じゃあこれで取引成立ね」
「えぇー、なんかレイコ甘すぎだってぇー。ってかなーんか今日のレイコやさしすぎじゃない?」
「そうかしら?」
「絶対そうだって!」
「まぁまぁ。ほら、みんなでお昼にしようよ」
なだめるようにメグミが言って無言で兎塚くんが机をくっつけ出す。
「んー、やっぱり何か変だって。メグミ何か知ってるでしょ?」
「ううん、知らないよ。それよりほら、今日はね、またお菓子作ってきたんだよ」
くっ付けられた机の上に綺麗にラッピングされたメグミ特製のお菓子が並ぶ。
袋から出されただけでたちまち教室はお菓子の甘くいい匂いで包まれて、それだけでもう机の上は輝きだしたみたいに明るくなる。
すでにミノリの意識は完全に私からお菓子に移り変わっていた。クラスのみんなも集まって来る。
「やった! またメグミのお菓子だなんて最高じゃん! あ、昨日の買い物ってこれかー。やけに買いこんでると思ったらこんな事を計画してたなんてメグミやるー! ってかさ、なんか今日はいつもより立派じゃない?」
「本当だ。すごく凝ってるわね、これ」
「うん。だってお祝いだもん。張り切っちゃった」
「お祝い? あれ、なにあったけ? 誰かの誕生日だとか?」
「さぁな、知るかよそんなん。まぁなんだっていいだろ。しっかしすげぇな、さすが鶴巻じゃん。なぁ、早く食べようぜ!」
「ナオヤに賛成だな。食指が動く」
「本当? よかった。あ、ちゃんとみんな用にいっぱい作ったからたくさんあるよ」
そう言ってメグミはまだ袋からラッピングされたお菓子をいくつか取り出す。全部で三種類くらいあって、いくつかに振り分けて配られる。
もはや昼食の時間ではなくメグミのお菓子の披露会だ。みんなお弁当には手を付けずお菓子を頬張っていく。
「本当にすげぇな。どうやったらこんなの作れんだよ?」
「うーん、小さいころからお菓子作るのは好きだったから、それでだと思うよ」
「しかしこれならもう普通に販売して売れるレベルだ。少なくとも俺は買う」
「あ、それあたしも同感。メグミのお菓子なら並んででも買うよ」
「ありがとう。でもレイちゃんだってお菓子作りは得意なんだよ。ね、レイちゃん」
「え、そうなのレイコ?」
「いや、無理だろ」
「……そこでなんで無理と思うのかしらね。一応作れるわよ。まぁメグミと比べたらだいぶ劣るけどね」
というかメグミを前にして得意だとか言えないし。
……でも今度ケンをあっと言わせてやろうかな。悔しいし。
「そんなことないよ。それにね、わたしにお菓子作りを教えてくれたのレイちゃんなんだよ。」
メグミはすごくうれしそうに笑った。でもそれは小さいころの話しだ。今じゃもう完全にメグミに抜かされている。むしろ私はメグミがお菓子を作ってくれるのを楽しみに待つ側になったのだ。
「私はお菓子を食べる側でいいのよ。ミノリじゃないけどメグミのお菓子ならそれこそ徹夜で並んだって買うもの。まぁ今度作ってきてもいいけどね。どっかのバカ犬が私には無理だと思ってるみたいだから」
「本当? じゃあ久しぶりにレイちゃんのお菓子食べられるね」
「それはそれで楽しみだな」
「マジ!? レイコのお菓子って何か楽しみかもっ。あ、でもケンにはあげないし」
「なんでだよ!? 俺も食うぞ!」
「はいはい、ちゃんと全員分作って来るわよ。それより今はメグミのお菓子なんだから」
サクッという歯ごたえとともにほんのりとした甘さが口の中に広がっていく。メグミのお菓子独特のやさしい甘さ。あぁ、幸せだ。
すぐにみんなもお菓子に手を伸ばしていく。もうみんな夢中になり過ぎて、しばらくはお菓子をむさぼり続ける有様だ。
クラスみんなが幸せの笑みで頬を蕩けさせている。
私ももう一つと手を伸ばそうとして、くいくい、と服の裾を引っ張られた。
「はい、これ」
机の下でこっそりと渡されるラッピングされた小さな袋。それは前と同じで、
「え、でも……。また私だけって悪いわよ」
「ううん、いいの。本当はね、今日のお菓子はレイちゃんにプレゼントするために作ったんだよ。だから、あとで二人で食べてね」
「え? 二人でって……」
「お祝い。二人っきりで、だよ」
まるでいたずらっ子のような笑顔で微笑んで、こっそりと視線を送りメグミが耳元で囁く。
「おめでとう、レイちゃん」
向けられた視線の先。
私は真っ赤になる頬を胡麻化しながら、力いっぱいメグミを抱きしめた。
◇◇◇
五限目の終わり、チャイムが鳴るよりも早くに私たち女子組は視聴覚教室を後にした。
本当なら体育館でバレーかバスケの授業でもやっていたんだろうけど、今日は朝に言われた通り体育館が使えないため体育とは全く関係のないビデオを見て授業は終わった。
急遽自習になったせいか授業自体は早めに終了し、私たちはまだ授業中のため静まり返っている廊下で声を潜めて歩いていく。
けれどそれも教室に入ってしまえば途端に騒がしいものになり、私もミノリとメグミとおしゃべりに興じる。
そんな中、何ともなしに教室の窓側の席から外を覗けば校庭では男子がサッカーの試合をやっていた。
最後の授業が体育だと運動部は部活に響くから嫌がる人も結構いるみたいだけど、どうやらそれはうちのクラスには当てはまらないみたいだ。
もはや取っ組み合いのような試合が敵味方入り乱れて行われていて、なんだかサッカーというよりはラグビーを見ているような気分。
「――って、あのばか。あんなラフプレーじゃ怪我するじゃない」
お世辞にも華麗とは言えないドリブルを駆使して、それでもケンが敵陣中央を切り開いていく。それは先陣を切るというよりはカミカゼ特攻に近い野性的な猛攻で。
「あっ……。もうっ、ケンの奴自分の運動神経を過信しすぎだっての」
兎塚くんの華麗なカッティングによって地面に倒れるもケンはそれを見事な前転で最小限に回避する。兎塚くんの運動神経にも驚いたけど、ケンの反射神経にはもっと驚いた。
でも動きは凄いけれど見ている私としてはとてもじゃないが落ちつけない。
ほんと、怪我でもしたらどうするんだあのバカ犬は。
「んー? どうしたレイコー、彼氏が心配かい?」
「――――っ。ミノリ! 何よ急に!?」
「えー、だってさぁ、レイコが全然話に入ってこないでずっと外ばっか気にしてるからさぁ。なーんかすっごい熱入って見てるみたいだったし、やっぱケンが気になるのかなぁって」
「ミノリ。それを邪推って言うのよ」
まぁ当たってるけど、とは言わないでおく。
自覚をしてみれば驚くほど簡単なことだった。
私がケンに突っかかるのは、単に彼が気になって常にその姿を追いかけていたから。
だから今だって話しもそっちのけでサッカーの試合を見ていたのは、つまりそういう事。
「ミノリちゃん、レイちゃんと犬養くんはいつも仲良しだよ」
「でもさぁ、なーんか急接近って感じじゃん、ケンとレイコ。なんか本当に付き合っててもおかしくないかなぁって思ったんだけど?」
「ふーん。それじゃあミノリ、もし付き合ってたとしたらどうする? お祝いでもしてくれるのかしら」
「…………へ?」
「ふふ、なんてね。まだ付き合ってないわ、一応ね」
それだけ言って私は席を立った。
ケンの事をこのまま見ていたくもあるけれど、時間は有限だ、ならば有効に活用しないといけない。
「どこか行くの、レイちゃん?」
「ええ。旧館の様子を見てくるわ。昼休みに行くの忘れちゃったし、時間も空いてるからちょうどいいもの。メグミ、ミノリをよろしくね」
私の返答がよほどショックだったのかポカーンとしているミノリを任せて教室を出る。
メグミには完璧にばれちゃっていたけれどミノリは半信半疑だったみたいだ。戻ったら何か言われそうだけど、まぁいいかな。ケンはどうだか知らないけど、私としてはちょっぴり嬉しいから。
なんとなくこの後起こるであろうことを想像しながら廊下を歩いて旧館に向かった。
驚いているクラスのみんなを余所に私とケンをからかうミノリ。それをメグミと兎塚くんが微笑みながら眺めている。
それはちょっぴり照れくさいけどすごくうれしい、平穏な日々。
~次回~
第七話 片鱗 ~秘めし者~/2
12/24(土)18:0更新