オタクの僕がクラス一の女子と話ができた理由
「え……」
同じクラスの女子がとても驚いた顔で僕のことを見ている。僕もその女子をみて驚いた。
皆見川さんだ。クラスでは常に上位にいて、学年でも30番からは外れたことのない頭の良さを持ち、さらには性格も良くクラスの子だけではなく先生からも慕われている。見た目も悪くないため告白を何回もされたと噂が流れている。
「どうしてここに……」
そんな女子がこんなところにいたら誰もが口にする言葉を僕も口にした。皆見川は下を向き逃げるように店外に出た。僕も店外に出て看板を確認する。
「アニメグッズ 春日」
やはりアニメショップだ。ということは……僕に疑問が残った。ちなみに皆見川さんは足も早いため僕は追いつくことができなかった。
翌日、昨日のことが気になり授業に集中することが出来ずにいた。クラスのオタク友達からも心配がられてしまった。
「まあ、この画像でも見て元気だしなよ。」
そう言い僕のスマホに画像が届いた。今期でかなり人気のある女の子が水着で可愛くポーズをとっていた。
「ありがと」
そう言い、僕はきちんと保存した。そんな感じで休み時間を過ごしていると急に皆見川さんに話しかけられ無人の教室に連れて行かれた。僕はリアルでもこんなことがあるんだなとバカのことを考えていた。きっと教室に残っている友達もそう思っただろう。後が面倒くさいな。
「え、えーと、昨日のことなんだけど……」
やはりか、僕は皆見川さんに呼ばれた時からそう気付いていた、まぁ、それしか皆見川さんとの接点がないと言えばないのだが。
「昨日、春日にいたのは……」
僕は皆見川さんが店名を「かすが」ではなく、某有名アニメキャラの読み方をしたことに疑問を持った。そう、一般人は「かすが」と呼ぶが、オタクならあの某有名キャラの呼び方をするのだ。僕は皆見川さんの秘密を本人に気づかれることなく知ってしまったのだ。
「妹のおもちゃを買いに行くためで」
もう、あの呼び方をしてしまった時点でどう理由を並べても無駄なのだ。僕はとても温かい目で目の前の闇に染まっているだろう悲しき女の子をみた。
「え、え、なんで、そんな顔するの。」
「大丈夫、誰にも言わないから安心して。」
僕はとても優しく、神父の様に告げた。皆見川さんは納得してない様だがこれ以上言うことがない様だった。
「わかりました、これからも友達でお願いしますね。」
なんかぼくが振られてしまった感じになってしまっている。外でこっそり友達が聞いてないのか心配になった。しかし残念なことにそういうときに限りいるのだ。
「元気だしな。」
扉を開けるとニヤニヤしている友達が予想通りいた。その表情を見て最後のところだけをピンポイントで聞いていたことも理解した。
「はいはい。」
ぼくは適当に受け流し教室に戻ることにした。教室に入ると驚くほど静かになったと思ったら急にまた騒がしくなった。こうもわかりやすいことはないだろう。おそらく、いや、間違いなく僕と皆見川さんについて憶測が飛び交っていたのだろう。とんでもない女子の秘密を知ってしまったことを僕は再認識した。
しかしその後、特に皆見川さんと話すことがなく皆見川さんとの噂はすぐになくなり、友達とも昔と変わらない会話をして毎日が過ぎていった。僕が何か皆見川さんにアクションを起こせばこの日常に戻ることはなかっただろう。それはそれで面白そうだが僕は、やはりこの日常が気にいってこの日々が変わらないことを望んでいた。