裏ギルド
翌日、ヒカリに頼まれ昨日のマーダードライブを引き起こした東京都練馬区にある丸井良夫の自宅に来ていた。丸井とは事前にVR上でアポをとり、あっさりと了承してくれた。
幸いマーダードライブの状態だった時、現実世界で丸井は自宅におり、ただその自宅で暴れていただけで済んだようだ。
「いやー、驚いたよ。寝ぼけてたのかな、起きたら部屋が滅茶苦茶なんだもんねー」随分と能天気な男だと思った。
「あの、本当に何も覚えてないんすか?」丸井と向き合うようにリビングにある机を挟み、俺は男に言った。
「うん、そうなんだよねー。近未来ステージのマグナポリスにある住宅に入ったところまでは覚えてるんだけど、気づいたらこの部屋で伸びてたんだよね。ゲームのやりすぎかな、はは」
「はは…」笑うしかない。
「あ、でもその住宅に入る前、その住宅から真っ黒なフードを被った男が出てきたなー。なんかニューゲートではあんまり顔を隠している人はいないから変だなとは思ったけど」
「真っ黒なフード・・」
それ以上の情報は聞き出せないと思ったので丸井の自宅をあとにして、とりあえず自分の自宅に戻った。
東京都新宿区のタワーマンションが周辺に乱立する中に紛れるように8階建てのマンションがあり、その1室が俺の部屋だった。
エレベーターで5階に上がりフロアに出て、503号室の鍵を開け、VR内にログインした。
15分ほどすると以前指定されたルームにヒカリがログインしてきたので、俺もそのルームに入った。
「待たせたわね」
「いやいいよ、別に」
「丸井はどんな様子だった?」
「どうもなにもまったく期待できるような情報はないって。なんか黒いフードの男とすれ違っただけだってさ」
「黒いフード・・・そう・・」
そう言うと彼女はしばらくその場で考え込み「またすぐ連絡する」と言ってルームからログアウトした。
「なんなんだ、あいつ」
そもそも御堂光という女は何者なのか、色んなことがありすぎて深く考えなかったが10代にも見えるそんな女がなぜ世界の上層部しか知りえないような情報を知ってる?
「・・・考えても意味ないわな」独り言のようにつぶやき俺はルームからログアウトしベットに横になった。
日付は変わり12月30日。
ヒカリからの連絡はこない。
12月31日、連絡はやはりない。毎日のように協力していたのでここ2日間なんの連絡もないのは妙だとも思ったが、おそらくは手がかりがないのだろうと思い、俺は家近くの漫画喫茶に言った。
「成海氏、成海氏ではないか!」
「よぉ、ちょっと聞きたいことがあんだけど」漫画喫茶の入口のカウンターには図体のデカいデブ・辰巳大輔がいた。
「何かな?何でも聞いてくれたまえよ」
「大輔、お前ニューゲート、プレイして結構長いよな」
「勿論だとも。ニューゲートのみならずVR系ゲームのことならこの情報屋・辰巳大輔にお任せあれの如き活躍を見せますぞ。成海氏、まさかついにニューゲートをやり始めたのかい?」
「あ、いや、まあね。お前さニューゲートで黒いフードのキャラクターって知ってる?」
「はて、黒いフード」
「知らないなら別にいいや。お前に対して期待はしてないから、うん」
「な、なんですと!心外ですな成海氏!僕の情報網を甘くみないでほしい!」大きく出たなデブよ。そしてデブは続けて熱く話し始めた。
「黒いフードというのは知らないけど、最近謎の覆面の集まりがあるギルドで夜な夜な行われているらしいですよ!しかも噂ではギルドにはギルドごとに定められた入会資格があるのですが、そのギルドの入会資格は世間に恨みを持っている人間なら誰でも入会可能というオカルトなギルドらしいのですよ!」
「そのオカルトギルドの名前、知ってるか?」俺は大輔に聞いた。
「”リレギオンバース”だったと思いますぞ」