ブラックリスト
1月6日・午前10時45分
意識が移動する。
気付けばそこは最初にヒカリと出会った時計塔ステージの広場だった。
正直、鉄の塊の情報なんてニューゲート内に存在していること以外は分からない。
しかし過去、ハッキングをしたある会社のデータに気になる情報が載っていた。
ニューゲートには数人しか到達したことのない裏のステージがあると。
そこはデータが混濁し、莫大な経験値を貰えるバグモンスターや最強の装備が売っている店があるという。
そしてそこに到達したプレイヤーで戻ってきた人間はただ一人、それ以外はすべて行方不明となっている。
たった一人の人間、確か名前は……。
ダンッ!!
銃声が後ろから聞こえた。
俺が振り向くと、二人組のガラの悪そうな男が俺に銃を向けていた。
「おい、まじで新藤成海だぞ!!」金髪の男が興奮したように言う。
「やった1000万貰い!!」横にいた小太りの男も同様だった。
「ログアウトする前に倒すぞ」
「だな」
そういうと二人組が俺に襲いかかってきた。
「はい?」
どういうことだ?
プレイヤー同士の戦闘はたしかニューゲート内ではできないはずだが。
金髪の男の手にはいつの間にか赤い刀身の剣が握られていた。
「しゃあああああ!!!!!!!!!!!!」
クンッ!
身体が背後から引っ張られる。
「走りながらログアウト準備を!!」聞き覚えのある声だった。
俺はその声に言われるがまま、男たちから逃走し、データベースのログアウトボタンをタップした。
「ここから1分。何とか逃げ切りますよ」
そこでやっとその声の正体が牧野だという事に気付いた。
牧野は路地裏にあったゴミ箱や建造物を地面に倒しながら、俺の背後から付いてきた。
「くそぉぉおおお、1000万!!!」
「まてぇぇえええ!!!!!」
「成海様、リアルにもバーチャルにももはや逃げ場はありません」牧野が走りながら、そう呟く。
「え?」
意識はそこで唐突に消えた。
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「ブラックリストプレイヤー!?」
旅館のログアウトした部屋で目の前にいる牧野に言った。
「はい。成海様は本日午前9時00分を持ちまして、ニューゲート内でブラックリストプレイヤーとして懸賞金がかけられました」
「懸賞金?」
「これをご覧ください」
牧野がノートパソコンを開き、動画投稿サイトの動画を映し出す。
ピッ!
<<2023年・大イベント情報!!>>
時計塔ステージの真っ暗に染まっている夜空が超大型のディスプレイのようになり、ゲーム内でのイベントを知らせる映像が流れる。
運営局の奇抜な柄のスーツを着た人間がマイクを持ってアナウンスのために映された。
<<2023年・最初のイベントはなんと通年イベント!!昨今、世間を騒がしている犯罪者がニューゲートにログインしているという情報を警視庁の方から運営局は受けました>>
ザワザワ……
『ええーーーーー!!??』
『怖いんだけど!?』
『いやいや、大丈夫でしょ。こっちVR空間だから、犯罪者にあっても何てことないべ』
ノイズ音がすごい。おそらく夜空に映し出された映像を見ている観衆がざわついているからだろう。
<<これを受け、今回のイベントは何と国との協力企画!その名も・ブラックリストプレイヤーを倒せ!!報奨金1000万円イベント!!>>
『うぉおおおおお!!!』
『マジ、これマジ!?熱いんだけど!!!』
『さすが世界一位のVRゲーム!!』
ピピピピピピッ!!
夜空の大画面に10人ほどの人間の顔写真と名前が表示された。
ザワザワ……
『あ、あれ!たしか麻薬密売容疑で逃走中の東條玲子じゃん!!』
『あの芸能人の!?そいつがブラックリストプレイヤーってこと?』
『まじか、東條玲子、ニューゲートやってんのか、うける!!』
『あの右から2番目の奴って、連続婦女暴行の男じゃない!?』
『大木純男?』
『そうそう!!』
『まじかよ、こわっ!!本物の犯罪者ばっかじゃん……!』
「おいおいおい……」
その10人の中にはもれなく俺の顔も表示されていた。
隣にいた牧野も神妙な顔つきで頷く。
『でもニューゲートの中で捕まえたとしても意味なくない?だってどこからログインしてるかなんて分からないんだし』
『あ、確かに!!どうやって逮捕すんだ?』
<<みなさん、データベースの装備ポケットを開いてみてください。気付きましたか?>>
『マーダー……ブレード。近接装備か?』
『もう一つあるよ。マーダーバレットだって』
<<その武器はこのブラックリストプレイヤーにのみ当てられるシークレット装備!!なんとこれを対象に当てると、その場で警視庁の特別対策課に位置情報が入り、逮捕に直結するという仕組みです!!>>
<<みなさん、是非犯罪者の逮捕・検挙のためにご協力お願いいたします!!それでは引き続き、ニューゲートをお楽しみください!!>>
プレイヤーたちの歓声冷めやらぬ中、プツリと映像は切れた。
「そうか…。あの二人組はそれで俺を追ってきたのか……」
「はい、昨今、麻薬密売や盗品の取引はリアルではなくAS内でなされることが増えています。運営は上手いこと、プレイヤーを味方にしてあなたを捕まえる口実を手に入れたということです」
ブラックリストプレイヤーは現実に出れば警察に、ニューゲート内ではプレイヤーに追われる立場ってことか。よくできた包囲網だ。
「成海様、どうなされます?リタイヤしても構いません。指示してくださればVRでは私があなた様の手足となり動きますが」牧野は表情を変えず、そう言った。
「いや、俺が行くよ」
「では、何か策が?」
「ああ、ある人に会おうと思う。その人間は唯一、裏のステージに到達して生還した人物って言われてる。俺はその裏のステージってのがターミナルブレインに繋がる鍵だと思うんだよ」
「その人物はどこに?」
「歓楽街ステージ、通称・ゴールデンタウン」




