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ニューゲート   作者: 佐倉蒔人
第1章
2/20

強者の素質

「ニューゲート」はVR空間ASアーススペースが発売された半年後にサービスを開始した。VRオンラインゲームランキングでは一位を何年も独走する、言わずと知れた大人気ゲームだった。ゲーム内容は自由度重視のオープンワールドシステム。

一番の売りはリアルの自分自身がプレイヤーとして設定できること。累計プレイヤーはVR内のゲームの中で断トツの2000万人。世界を含めると1億人を超えていた。


早めの夕食を済まし、ネット空間に視覚と触覚等の感覚をリンクさせることができる高機能ヘッドマウントディスプレイ・ブレイン・コントローラ(以下BC)を頭部につけた。BCを再生し、ASにログインした途端、意識は完全に別の空間に移動した。


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ーアクセス



目を開けた時、俺が立っていたのは真っ暗な空間で自分だけにライトが照らされていた。

「ユーザー名・シン様、ようこそニューゲートへ。あなたはLV1からのスタートとなります。」


その空間に女の声が聞こえた。続いてその声は言った。

「チュートリアルを開始しますか?」


「いや、いい」俺はきっぱり断った。


「それではシン様、ニューゲートの世界をお楽しみください」

俺の目的はゲームでノウノウと遊ぶことじゃない。あんなメールを送ってきた当事者に会うためだ。


真っ暗だった空間に道筋となる3つの輝いた階段が現れた。

真ん中の階段は大都市ステージ、俺から見て右の階段は近未来ステージ、そして左の階段は時計塔ステージだった。俺は言われた通り時計塔ステージに行く階段を選んだ。


階段を何段か登っていくと白い扉が見えた。



ニューゲートが不動の人気を誇っているのには、風景描写も大いに関係していた。扉を開けた時、そこは歴史の教科書で見たような中世のロンドンを思わせるような街並みが広がっていた。


時計塔の街は夜だった。霧がかかり、BCのせいで肌寒さまで感じた。

外灯が街を照らし、見る人が見れば幻想的な情景だろうと思った。

周りを見回すと目的地はすぐわかった。

この街のシンボルのように荘厳な時計塔は建っていた。


時計塔の下はまるで渋谷のハチ公前のような群衆の多さだった。

そこには腰から物騒な銃を下げてる中年がいれば、ナヨナヨの大学生が肩から身の丈ほどの大剣を携えていたり、女子高生がゲームそっちのけでベラベラ話していたりした。カップルの姿も多い、確かに考えてみれば今は12月、あと2週間もすれば時期的にクリスマスだ。


その後もどんどんプレイヤーがログインしてきた。

どうやらこの場所は時計塔ステージのログイン起点の一つのようだった。


群衆をかき分け、時計塔のレトロな扉を開けると、黒い喪服のような衣装をまとった初老の女性がこちらにゆっくり歩いてきた。


「新藤成海さまでしょうか?」初老の女性が言った言葉に思わず目を見開いた。サブアカウントの俺のプレイヤーとしての顔は色んな人間の顔を合成した、いわば存在しない人間だ。それが一発で見破られた。

情報は筒抜けらしい。マールス社のハッキングの件といい腹が立つ。


「あんたか?あんな薄気味悪いメールを送ったのは?」


すると初老の女性は穏やかな笑みを浮かべた。

「私はクライアントに頼まれて皆さんにご説明する為だけにここにいます」


皆さん?俺以外にも人間が?


俺の心を読んだように喪服の女性は首をゆっくり右側に動かした。


すると俺の他に6人の人間がいることに気づいた。


「それでは皆さん集まりましたのでご説明をさせて頂こうと思います」


喪服の女性は俺を含めた7人を時計塔の一階にある洋室に案内した。


「皆さんには初めに概要を説明させていただきます。皆さんがいるこのビックマークという建物は時計塔ステージのシンボルであり同時に最難関ダンジョンでもあるのはご存知だと思います」


周りの6人はそれを聞いて頷いた。この時計塔自体、腕を試されているということか。


「まずはこの時計塔の最上階にいるクライアントに会って頂く事が最低条件でございます。件名にもあった2億という話は最上階にいるクライアントからご説明するとのことです。それでは只今から開始とさせて頂きます」


喪服の女性がパチンと手を叩くと周りに座っていた6人は一斉に立ち上がり洋室から出て行った。


俺は一人、残されたように座っていた。


「行かなくてよろしいんですか、新藤さん?」

喪服の女性がニッコリと笑った。


「ほかの6人は金を餌に呼んだってわけか。俺だけ理由が違う気がするんだけど?」

俺は女性を皮肉るように言った。

「さて、クライアントは強者のみを求めると言っておりましたので、それ以上は知り得ません」

女性は笑顔を崩さない。たとえ知っていたとしてもここで話す気はないのだろう。


「続きはクライアントとやらに聞いてきますよ」

俺は洋室を後にした。

時計塔は階層形式になっているらしく全30階層。憎たらしいクライアントとやらはその最上階にいるという訳だ。


とりあえず俺は一旦ニューゲートからログアウトした。


自宅のクローゼットからもう一台のノートパソコンを取り出し、そこからニューゲートのシステムにハッキングを開始した。


「さあ、始めるか」


ニューゲートのみならずVR上のシステム全体は何層ものブロックで保護されている。

見た感じニューゲートはレベル10までブロックが掛かっていた。

どんな厳重なセキュリティでも普通はレベル8くらいまでだが10までとは、さすが世界最大規模のオンラインゲームだというところか。


ざっと二時間程度だろう、今破れたのは2ブロック目までだった。

正直3ブロック目からはパスワードの解析や特殊なソフトの操作など特定される危険性が多すぎた。


システムに侵入した足跡を消すための自作の特殊なソフトをインストールし、綺麗さっぱり痕跡を消した。



時刻は21時、俺はニューゲートにふたたびログインし、時計塔に入った。


喪服の女性は時計塔にはもういなかった。


1階層に上がるエレベーターに乗った。

モンスター・スケルトンが四方を囲まれた部屋に立っていた。

背後のエレベーターの扉が閉まったと同時にスケルトンは槍を持って突進してきた。


槍が俺の心臓あたりを貫いた。勿論バーチャルであるが。

俺の前方右上にあるヒットポイント(HP)から数字が減る。


ダメージは1、残りのHPは9998。


ズドン!!

初期装備、木の棒は驚くべき攻撃力を発揮し、スケルトンを一撃で葬り去った。


「そりゃあ、余裕だよな」

プレイヤー・シン

LV・99

HP9999 MP999 攻撃力999 防御力999 以下全て999


所持武器・木の棒


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