仮面舞踏会
ビービービービー!!!!!
意識が現実に戻ってきたとき、そこは斉藤亮一の部屋だった。
「くそ……!あいつ…」
BCを外した直後だったので、足元がふらつく。
しかしこのフロア中に鳴り響いている音は間違いなく侵入者への警告音に違いない。
阿久津という男が俺を見す見す逃がすということはないだろう。
部屋から出る。以外にもフロア内は警備の人間などは来ていないようだった。
「エレベーターはまずいか……」
ここは29階。フロアの案内図を見る。するとヒカリの言った通りアルファゼロ本社には別館があり、24階と9階に別館への連絡通路があることが分かった。
おそらくVIPの専用口は別館の1階付近にあるのだろう。
「賭けだな……」
俺は非常階段の扉を開け24階まで降りて行った。
24階の別館への道はガラス張りの通路になっていた。そこから地上を見てもこれといった変化は見えない。これだけビル内にブザーが鳴り響いているのだから警察の車両などが来てもおかしくないはずだった。
24階の別館フロアに出る。社員たちは避難でもしているのかフロアにはいない。地上2階まで行ける直通のエレベーターの前に行く。ボタンを押し、近くの物陰に隠れる。
何事もなく、エレベーターに乗り込んだ。
2階まで行き、扉が開くと、別館の大ロビーには小奇麗なドレスや仮面の装いをした男女が群れをつくるように集まっていた。それを取り囲むように警備員が立っている。
「ご来賓の皆さん、AIによる事前のセキュリティ検査はあったでしょうが、これから仮面を外して頂き、ふたたび顔の拝見をさせて頂きます」
警備員がVIPに言う。
「貴様、私を誰だと思っている!?三善財閥の次期社長だぞ。今日はアルファゼロのご令嬢を一目見れると聞いて…!!おいっ、何を勝手に仮面を外しているんだ!!誰の許可だ、これは!!」
「ちょっと仮面舞踏会が中止になったんだったら、早く返してよ。パパが待ってるんだけど!!あんま待たせると後でパパにチクるよ」
「どうなっているんだ。え、侵入者?…早く排除したまえ!!私に何かあったらそれは日本の経済界にとって大きな損失だぞ!!」
「この国のVIPをもてなす仮面舞踏会ってところか…」
VIP通用口に繋がっていそうな通路を2階から探してくると2階に痩せたスーツ姿の男性が上がってくる。
「君、トイレはどこにある?仮面をしてないってことはここの社員だろ?」
「……こちらです。ご案内します」
なるべく自然な立ち振る舞いで男を物陰に誘導した。男を思い切り殴ってもその声は
ロビーはVIPの怒鳴り声や警備員のそれを静止する声でかき消された。
男から仮面とVIPと書かれたネクタイピンを奪い、1階に降りて行った。
群衆に溶け込むように歩いて行くと、警備員が二人がかりで封鎖している通路があった。
「いたぞ!!侵入者は2階だ!!!」と大きな声で叫んでみる。
驚いたことにこんな古典的な方法でも俺の目の前にいた警備員は即座に2階の階段へ向かって行った。
俺は封鎖されていた通路を走っていくと、センサー付きの扉があった。
「あれが出口…!!」
扉の目の前に到着したとき、後頭部に衝撃が走った。
「きさまが侵入者か。阿久津様の言った通りだったな。事前に張り付いていて正解という訳だ」
消えそうになる意識の中で複数の黒服の男に身体が拘束されるのが分かった。
「ここで殺すか」
「駄目だ、付近に血痕が残っては後々阿久津様に面倒を掛けることになる」
「地下の駐車場でやるぞ」
連れて行かれたのはアルファゼロの地下の駐車場だった。
アスファルトの地面に投げ飛ばされ、黒服の男が拳銃を取り出す。
「死ね」
ダンッ。
意識がハッキリしてきた。
数秒前まで俺の目の前に立っていた二人の男は、俺と同じ目線に倒れていた。
奥からコツコツと子気味な足音が聞こえる。
「新藤様。近くに車を止めてあります。そこまで頑張ってください」
そういって俺を担いだのは芳賀だった。
「すみません。あいつのこと……助けられませんでした…」
「いえ、あなたのせいでは決してありません。恥じております、何の手助けもできない私自身に」
ビル中にサイレンが鳴っている。
俺は車の後部座席に乗り込んだ。ドアを閉める間もなく車は走り出した。
「牧野、なんとか振り切ってください」芳賀がそういうと運転席の牧野は頷いた。
バックミラーから後ろを覗くと、黒塗りのセダン車が二台、追ってきていた。




