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ニューゲート   作者: 佐倉蒔人
第1章
15/20

絢爛豪華

紺のストライプスーツはサイズもピッタリだった。

アルファゼロ本社はまわりを名だたるビル群にこそ囲まれているが、その中でも圧倒的な高さと面積を誇っていた。周りは木々が植林され、ここが東京湾の埋め立て地だとはまるで思えなかった。


本社正面の入口、近くの案内表示板にはイーストゲートと表記がある。

そこに入るとまるで電車の改札口のような場所から次々と指をかざし、社員が出てくる。

改札口は右側5つが出口専用となっており、左側の5つが入口となっていた。


俺は芳賀につけられた人差し指のシールを確認し、改札口の黒いパネルにかざした。

改札口は青いランプが点灯し、無事通過できた。


「第一関門、突破と…」


改札口を通り、10段ほどの階段を上がる。

「まじか…すげぇな」


エントランスに出るとそこは広大な広場のようだった。中央に特徴的な噴水が虹色の水を噴出している。5階ほどまでの天井が吹き抜けのようになっており、絢爛豪華なシャンデリアが吊り下がっている。空間上の巨大なスクリーンではニューゲート内の様子がリアルタイムで映されている。

このビルはニューゲートの世界を実際に模していたのだ。



「おかえりなさいませ、亮一様」


「うわっ、びっくりした!」俺のとなりにはオペレーターの女性が立っていた。よく見れば電子投影されたAIだった。人工知能をつかった案内用や秘書用のAIは大手の企業では当たり前になっていた。

だが、そこはAIでデータから俺を斉藤亮一と認識しているのだろう。


「本日はお休みになっていましたが、これからご予定が?」


「ちょっと忘れ物をね…」


「そうでしたか。では12階の営業部へのご連絡を?」


「いや、忘れ物をしたのは29階の休憩室なんだ。…えっと、エレベーターはどこだっけか?」


「29階への直通エレベーターはこちらになります」


オペレーターについて行くようにビル内を歩く。確かに案内用のAIがいなければ迷ってしまうような広さだった。


エレベータホールにつき、29階までのエレベーターに乗り込む。

エレベーターに乗り込み、29階を押す。“閉”のボタンを押そうとしたとき、慌ただしそうに二人組が乗り込んできた。


一人は凡庸な社員のように見えたが、もう一人は男性にしては妙に長い髪の毛を束ね、

スーツではなく医者が着る白衣のようなものを着ていた。かなり痩せ形で猫背の姿勢のせいか、随分弱々しい印象だった。


凡庸な男は俺に頭を下げ、21階のボタンを押した。


「30分の遅刻ですよ。ほんと頼みますよ、阿久津室長」凡庸な男がハンカチで額の汗を拭いながら言った。


「でもねー、君、今のご時世、会議なんてものVR上でやればいいだけの話だしね」阿久津と呼ばれた男はため息をついて言った。


「月一の定例会議はVR上じゃ駄目なんですって。一応、上級社員の成果報告の場でもあるので幹部の皆さんは基本毎回出席しているんですから」


「みんな偉いねー。私には無理だ」


二人は21階で降りていった。


29階に到着した。フロアはエントランスに比べると少し薄暗く、ほぼ無音の状態だった。

フロアを歩く自分の足音だけが聞こえる。

「えー、俺の部屋はどこだっけ?」うしろにいるオペレーターに聞く。


「その角を曲がったルーム・297でございます」


「ありがとう。ここまででいいよ」そう告げるとオペレーターはお辞儀をし、その場から消えた。


ルーム・297のドアにはふたたび黒いパネルがあり、そこに触れるとスライドするように扉が空いた。


ルームは4畳ほどでベッドと立派なチェアー、机、その上にはノートパソコン、BCブレインコントローラー、そして簡易クローゼットがある。斉藤亮一の私物と思われるものはなかった。


「いいご身分だな、斉藤さんよ」


「さて、本番だ」チェアーに腰掛け、パソコンを起動し、BCを耳に掛ける。


意識がVR内に引っ張られていく。


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