第4話 C17長距離輸送機/夫婦の諍い
人類序章の第4話 C17長距離輸送機
“さっちん”と“りっちゃん”の“シャラ”との出会いの場面をパネルを通して見ていた5人であったが、この5人の中での発言の割合が概ね決まっていた。誰もが無口というわけではないが、コウは興味あること以外は積極的に話さないし、りっちゃんも話すより身体を動かしている方が性に合っている。さっちんは、お告げ以外は思いに沈む方だし、ヘイは決まって最後に美味しいところを持っていく。すると、おしゃべりというわけではないがシンが進行役となる。
「こういうことかい?この“ノン”を操作するためには“さっちん”か“りっちゃん”が必要で、どちらかがいれば俺たちも操作できる。でも1人分枠が余るな」
「あいつしかいないだろ」
というヘイに皆が肯いた。
あいつとは、サクこと小田桐勇作のことであり、男性陣と高校の同級生で親友同士、そして高校時代“陣馬の4天王”と呼ばれた高校創設以来の傑物4人組の一人であった。
「でも、あいつ今ケンブリッジにいるだろ」
「ああ、俺が呼びだしてやるよ。あいつもこういうの好きだろ」
というヘイは、それぞれの割り振りを決めた。ヘイは最後に美味しいところを持って行くのだが、不思議と誰からも不満は漏れず、それが皆の総意という形になっていた。
「“さっちん”はここに残って。“りっちゃん”は俺を連れて戻って。コウはもう少しこのパネルを調べて見て。シンはどうしようかな?好きにしていいよ」
コウからは「取り敢えず、夏休みの間だけだな」と条件がついたが、他に異論はなかった。
やがて、ヘイは“りっちゃん”のパジェロエボを駆って自宅に戻り、サクに連絡をとったが、折よくサクはつかまった。事情を話すと、丁度サクは日本に帰るところだったらしい。サクが言うには、
「おい、日本というか福島が大変なことになっているそうじゃないか。でも、そっちも面白そうだな」
サクは、ハーバード大学を卒業してマサチューセッツ工科大学(MIT)に遊学であり、米国の上級階級の子息令嬢と親交を持っていたため、その一人であるペンタゴンの上層部の一人を父に持つ御子息様から情報を得たようで、ついでに三沢基地に向かうC17長距離輸送機に便乗させてもらうことになったようである。
ハッカーの巣窟として名高いMITであるが、そこでペンタゴンへハッキングに成功したサクは、一度ペンタゴンから事情聴取を受けて前出の子息の父親に揉み消して貰った経緯を持っている。「二度としません」と誓ったサクであったが「二度とへまはしない」が本音であった。そのことを知ってか知らずかその父親は、今度も便宜を図ってくれて、サクが日本に到着するのは今夜遅くになりそうらしい。
“ノン”のシステムがコンピュータの一種だと思っているヘイは、サクを最後の頼りとしていたが、サクはどうやらそうではないことを感じているらしい。
シンはというと“ノン”から離れて熊と遊んでいるようだ。シンは根っからの動物好きで自然の中にいれば何も文句がないという性分であった。
人類新生の第4話 夫婦の諍い
「紅天、ここに冬はいつくるの?」
「そうね、後3ヶ月で素振りを見せて、4ヶ月で雪が積もるかしら」
「じゃあ、春は?」
「冬が4か5ヶ月だから、その後ね」
「俺は明日にここを去るけど、3ヶ月くらいしたら、また来るね。紅天は頑張って畑を耕してね」
「そうか、行っちゃうのか。でも、また来るのを楽しみにしているわ」
サクは紅天の他にも人材を探さなければならなかったが、その人材はサクらが敵と見做している奴らの息がかかっていてはいけない。基本的には、サクがそれを見極めるのだが、最終的な判断はシラカミで行われることになっていた。サクは村の長老に暇乞いをしていたが、その時、村にざわめきが起こった。
「なんじゃ」
「と、隣の村の者たちが襲ってきます」
サクは(さては奴らか)と不安に襲われたが、どうやらそうではなく、ただの村同士の諍いらしい。(もしも奴らなら未だ準備ができていない)と思うサクであった。
「なに、嫁をよこせだと」
隣の村も過疎化が進んで、諍いの原因はそこにあるらしいのだが、そこに紅天が先頭を切ったのには驚いた。紅天は、雨雲を増大させて雷雲とし、雷撃を与えようとしていた。これに待ったをかけたのはサクで、サクにしてみれば、雷撃はいいが何処に雷が落ちるか心許ない。
「待て、紅天。早まるな」
「だって、獅牛が」
獅牛は隣村の紅天の喧嘩友達というか好敵手というか、同じ頃に産まれたもの同士で、同じく花の痣を3つ持っているらしい。
紅天が言うには「あいつ馬鹿だから、土砂降りにしてやると雨を避けて牛のように突進してくるのよ。そこをこの村の大人たちが罠にかけるの。大人たちでも獅牛とまともにやりあったら勝てないわ。身体だけは丈夫なんだもの。でも、今度は私が雷を落としてやるの」ということらしい。
「だから、待って」とサクは気が気ではない。
少しして獅牛が迫ってきた時、
『縛』
とサクの印によって獅牛は虜になってしまった。それを見た隣村の者たちは意気消沈となってしまったが、それを見たこの村の長老は、
「解き放してやってくださらんか」
と獅牛の解放を求めた。
よくよく聞くと両村の諍いの原因は紅天と獅牛にあって、両村の長老同士では、紅天と獅牛を一緒にさせることに異論はないが、どちらの村に住むかということが問題なのだそうな。




