表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
乱界  作者: 酒井順
3/5

第3話 白神山地/4次の印士

人類序章の第3話 白神山地


 りっちゃんの駆るパジェロエボは猛爆進を続けた。いつものメンバーの中で桁外れの身体能力を持つりっちゃんは“でもメカより、身体を使った方がいいの”と言い、他の勧めを断ってA級ライセンスを取得しないのであった。


「あっちよ」というさっちんの言葉に従ってりっちゃんが目指すのは秋田県大館市の田代岳方向であった。やがて「あっちよ」という指図にもパジェロエボは応えられなくなり、搭載してある組立型オフロードバイクを取り出して「いくよ」というりっちゃんの声に後部座席のさっちんは頷いた。


 置き去りにされた男3人は、

「仕方ないよな。これがベストのチョイスだったんだ」と、言うヘイに対して、

「大丈夫だよ。僕たちも急いで向かおう」と、りっちゃんに絶大な信頼を寄せるコウが応えると、

「歩いてかい?何時間かかるんだろう」と、さほど不満そうでもないシンが先頭を切った。


 とっくに午後11時は過ぎたであろう時間帯に疾駆する“りっちゃん”であったが、ついに灌木の密生のためオフロードバイクも通れない険しさとなった。“さっちん”を着物の帯で自分に結わえつけた“りっちゃん”は、猿も顔負けの身のこなしを見せて自分の手足を総動員させて疾駆した。1時間近くも走った“りっちゃん”らが、目的地と思しき場所につくと、そこには長さ1mくらいの流線型の物体が地面に突き刺さっていた。


 その時“さっちん”と“りっちゃん”に話しかける言葉様の思念が響いた。これだけ近いと“りっちゃん”にも聞こえるらしく、

「よく来てくれました。私は1時間以内に“養生カプセル”に入らなければなりません。必要なことだけ、先に済ませましょう」

 二人の女性の脳裏には、身長30cmくらいの人型で、名前は“シャラ”という美しい女性の情報が、言葉と共に伝わってきていた。


「この移動艇の名は“ノン”。“ノン”を操作するために貴女方二人の精神情報を登録します」

「これで“ノン”の操作ができるのは、貴女方二人となりました。他の者は、なんびとと言えどもこの“ノン”を操作することはできません。そして、貴女方二人に“ノン”の守護者四人の任命権を与えます」

「これで選ばれた六人は、少なくとも私の眠りが覚めるまで不老となります。注意しなければならないのは、不死ではないことです。“ノン”の操作を試しにやってみましょう」

“シャラ”の指示する通りに“ノン”を操作すると、頭の中にパネルが現われた。どうやら、手で操作するのではなく思うことで操作するらしい。1つの選択を思うと“シャラ”との出会いの場面が映し出された。

「そんな感じです。私は最後にやっておかなければならないことがあります」

そう言うと“シャラ”は何やら手指を動かし始めて、何やら呟いているらしい。と同時に“さっちん”と“りっちゃん”を不思議な感覚が襲った。

「亜空間結界を張りました。この空間に出入りできるのは件の六人だけになります」


 やがて“シャラ”は眠りにつき、男どもは陽が昇る頃にこの場についたのだった。もちろんオフロードバイクを捨てた場所まで“りっちゃん”が迎えに行ったのは言うまでもない。


第3話 4次の印士


 この村で3次の印を扱えるのは、紅天だけで、2次の印者は数人いたが、ほとんど役に立たない。紅天に言わせれば邪魔ばかりしているそうである。

「雲を余計なところに動かしたり、消したりするのよ」

 それもそのはずで、雲⇒動けでは、どの雲を動かすのか特定できないし、印者の中には“減らせ”の印の型を所有している者もいるようである。もっとも、それを言えば紅天にしても雲を何処に動かすか特定できないのであるからサクからみれば、似たり寄ったりとなる。サクは、紅天のレベルアップに助力しようと思ったのだが、それは何かの期待感があったためかもしれない。4次の印士に昇格させたいのだが、サクには紅天の潜在能力がよく掴めていなく、取り敢えず、新しい印の型を教えることにした。


「紅天は、雲が無い時どうしているの?」

「そう、それが困るのよね」

「雲を作る方法を教えようか?」

「ほんと。でも、できるの?」

「できるさ。こうやるんだよ」

「ほんとだ。できた」


・新規発生…対象物の新規発生


 紅天の飲み込みは早く、ものの10分もすれば“新規発生”の印の型を会得できていた。

(早い、これはものになりそうだ)

そう感じたサクは、“減らせ”などの印の型を数個教えて、4次の印の習得にとりかかろうとしたその時、

「こうやればいいのよね」


あそこ⇒雲⇒増せ⇒加速


(そうか、紅天はもともと4次の印士で印の型を知らなかっただけなのかもしれない)


雲⇒増せ⇒加速


と、不特定の雲を増量させることをサクは教えただけだったが、紅天はその応用をすぐさまやって、これで4次の印士に昇格となった。紅天の所有する印の型は10個を少し越えたが、計算の簡単のために10個とすると、10の4乗=10,000通りの印の発動の可能性を持ったわけである。ここで、通りをパスと名称換えをすると10,000パスとなる。そのパスのほとんどが無意味であるが、可能性を持つということは、その者自体の可能性にも繋がる。即ち、後は習うか、本人が努力すればいいことになる。


あそこ⇒雲⇒増せ⇒加速

あそこ⇒雲⇒あそこ⇒動け


と、大幅に増量させた特定の雲を動かしたい位置に動かすことができた紅天であったが、20個くらいの印の型を教えた後、サクはここを去ることになる。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ