表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

黄金色の森

作者:

東の方の島国に小さな森がありました。そこにはきつねの家族が楽しく暮らしていました。一人っ子のこぎつねは、いつもみんなに優しいけれど、少し弱虫でした。



「弱虫コンはあっち行け!」

コンは、友達のたぬきちにいじめられて、シクシクコンコンと泣いていました。すると、コンは美味しそうな匂いに出会いました。

「コンくん、こっちだよ。さあ、おいで。」

コンはくんくん匂いを追う。待って待って、と匂いを追う。木漏れ日が一匹のこぎつねを照らし、虫たちは、どうしたの?とざわめきました。コンは美味しそうな匂いに連れられて、いつのまにか森を抜けていました。ここは人間が住む村でした。コンは匂いに夢中で、周りのことを見ていなかったので、ここが人間の村なんてちっとも気づきませんでした。ひとつの家の小さな窓から匂いがコンを呼びました。


「3日後に都会の人たちが来るって本当かい?」

人間たちが鍋を囲んで話していた。

「本当さ、本当。」

「大きな機械を持ってきて、木を全部なぎ倒すって話さね。」

「なんでも、そこの森をゴルフ場にするんだと。」

コンはビビビッとしっぽが立ちました。

「はやくみんなに知らせなきゃ。」

コンは匂いさんにお礼を言って、森に入りました。木漏れ日は全速力で森を駆け抜けるこぎつねを照らし、なんだなんだと虫たちがざわめきました。


「みんな、聞いて!この森が危ないんだ!」

コンは森の住人にさっき人間が言っていたことを話しました。みんなは、どうしようとあたふたしました。みんなは、一緒に頭を捻りました。

「私にいい考えがあるよ!」

森で二番目にかしこいアライグマのお姉さんが言いました。

「神様にこの森に住んでもらうんだ。昔、人間が捨てた絵本を読んだんだ。そこには神様を奉る人間の姿が描かれていたんだよ。」

「でも、どうやって?」

みんな、また頭を捻りました。

「それなら僕の出番だ!」

森で一番かしこいチンパンジーのお兄さんが言いました。

「でも、ひとつ問題があるんだ。一番重要な役をコンにしてもらわなくちゃいけないんだ…。」

みんなが一斉にコンの方を見ました。コンの胸が騒ぐと同時に、森がざわめいたように感じました。コンが無理だよと言おうとしたとき、どこからか、弱虫コンには無理だよ、という声が聞こえました。コンは、言いかけた言葉を飲み込み、すっと森の空気を吸いました。

「ぼく、やるよ!」

コンの声が森に響き渡り、ざわめきもいつのまにか消えていました。高らかなその声には、みんなを、この森を、救いたいという想いが込められていました。チンパンジーのお兄さんは、コンを見てうなづき、作戦をみんなに伝えて、準備をし始めました。



人間たちが森を壊す日がやって来ました。森の住人は準備万端です。ガタガタ、ゴトゴトと森が揺れました。人間たちが大きな鉄の塊に乗ってやってきたのです。

「さぁ、作戦開始だ!」

コンは声高々に言い放ちました。みんながそれに応えて頷いて、持ち場にぴょんと駆けていきました。


「あれはなんだ?人影か?俺たちは外に出ていないはずだぞ?」

一人の男が草の上に映し出された人影を指差しました。他の男が目を光らせて言いました。

「きっと、村の誰かが邪魔しに来たんだ。おい、追いかけるぞ。部長、少し見てきますね。」

二人の男は人影を追いました。森の住人たちは、ガラスと人形を抱えて一生懸命走りました。うまく太陽の光を反射させて人形に当てるのは難しいけれど、必至にみんなはがんばりました。そして、人影は草原を駆け抜けて、小さな森の象徴である大きな岩のてっぺんに辿り着きました。すると、人影がいなくなるのと同時に、黄金色に輝くきつねが一匹、ふっと現れました。その姿は凛々しく、天から舞い降りて来たようでした。黄金色のきつねは、ひょいと岩から向こう側に飛び降りました。二人の男は、慌ててその姿を追いかけて岩をよじ登りました。岩のてっぺんに着いたとき、言葉もなく、ただ目の前の光景を見つめることしかできませんでした。夕陽に照らされた小麦畑がきつねを隠し、より一層輝いていました。その光は世界を照らしているようでした。



「ほら、早く行かないと太陽沈んじまうぞ。」

美味しそうな匂いが漂う庭で、少年が妹を呼びながら走ります。少女は、待ってと兄の後を追います。

「こら、琥珀(こはく)山吹(やまぶき)を連れてどこ行くの!」

少女は振り返ってにっこりと笑います。頬は夕陽に照らされて、キラキラと輝いて見えます。

「黄金色の森に神様を探しに行くのよ、お母さん。」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点]  とても可愛い感じが伝わってきて良かったです。 [気になる点]  続きがあるように感じました。 [一言]  シクシクコンコンといった表現がとても可愛かったです。私も童話を書きたくなりました…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ