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第四十三話 『(まも)れ、しんぴのミスティックストーン!』

 古代遺跡より見つかった秘宝ミスティックストーンには、人の心を支配する力があった。秘宝の力に目をつけた悪の組織は、その奪取を試みるも、正義の戦隊に阻まれ撤退を余儀なくされる。ここは日本のどこかにある秘密のアジト。逃げ戻った戦闘員達は、組織の幹部より叱責を受けていた。


「愚か者!」

 厳しい叱責の声と共に鞭が振り下ろされ、アジトの暗闇に鋭い音が響き渡る。黒光りするボンテージスーツに身を包み、軍帽を被った美女は、蝶を模したマスクの奥から苛立たしげに配下の者達を睨みつける。秘密結社『ファウスト』の女幹部クイーン・イリーヤは、部下の不甲斐なさに不満も露わだった。

「それで貴様等は、バスターレンジャー共からミスティックストーンを奪えず、おめおめ戻ってきたというのか!」

「キキー!」

 再び鞭が鳴り、怪しげな衣装をまとった集団から怯えたような奇声が漏れる。黒いレザースーツで全身を覆い、般若を思わせる白い面を被るのは『ファウスト』の戦闘員、デビルハンター達だ。

「キキッ、キキー」

 戦闘員の一人が何やら言い訳がましい身ぶりをするが、それはクイーン・イリーヤの怒りを増長させたに過ぎない。三度振り下ろされた鞭が、危険な音を響かせる。

「言い訳など聞かぬ、これでミスティックストーンの神秘の力で日本の政治家どもを操る計画が、失敗に終わってしまったではないか!」

 いささか迫力に欠ける可愛らしい声ではあるが、部下の戦闘員達は恐縮したようにひれ伏してしまう。苛立たしげにヒールの音を響かせ、セクシーな美女(クイーン・イリーヤ)は平伏する戦闘員達の前を行ったり来たりするが、突然、壁にかかっていた大鏡が揺らめき、髑髏(どくろ)仮面を被った男を映し出す。

「フハハ‥、イリーヤよ、そう怒らずとも良い。この国を侵略する作戦は他にもあるのだ」

「こ、これは、アスタロテ総統閣下(フューラー)‥」

 組織のボスの登場に、慌てて女幹部も膝をつく。それは映像なのか、それとも魔法の力なのか。水の様に揺らめく鏡の奥から、重々しい声が響く。

「イリーヤよ、次なる作戦を言い渡す。バイオエネルギー研究所を襲撃し、新エネルギーを奪うのだ」

「新エネルギーですと!政府はそのようなものを開発していたのですか」

「そうだ、そのエネルギーを奪い取り、我等のさらなる力とするのだ」

「畏まりてございます。総統閣下の期待に応えるべく、必ずやそのエネルギ―を奪って参りましょう」

「フフフ‥、そちの働きに期待しておるぞ‥」

 髑髏仮面の顔が揺らめいて消えると、アジトは元の静けさを取り戻す。新たな命令を受け取った女幹部は、勇ましくマントを翻して立ち上がり、忠実な部下達に檄を飛ばす。

「聞いたであろう、お前達。総統閣下のご期待に応えるべく、全力を尽くすのだ!」

「キキッー!」

 お決まりのパターンでの次回指令に、立ちあがった戦闘員達は一糸乱れぬ動きで敬礼を返す。いつもならここでクイーン・イリーヤの高笑いが響くのだが、彼女は思いなおしたかのように戦闘員達を見渡す。

「‥待て、貴様。そう、貴様だ!」

「キキッ?」

 突然指を差された戦闘員は、明らかに驚いた素振りを見せ、確認するかのように自らを差す。

「貴様、今日の戦いぶりはなんだ?バスターレンジャー共に後れを取ったのは貴様の不甲斐なさが原因だぞ」

 思わず隣の戦闘員と顔を見合わせるも、女幹部は一切の拒否を許さぬ口調で、厳しい処置を下す。

「我が組織に無能はいらん、足手まといは作戦の邪魔だ。よって次の作戦に貴様の出番はない、待機しておれ!」

 予想外の事態らしく戦闘員達の間に動揺が走るが、それを鞭の一振りで静かにさせると、いよいよクイーン・イリーヤは決め台詞を放つ。

「ホーホッホッホッ、見ておれバスターレンジャー共、いずれ世界は我がファウストの前に跪くであろう。ファウスト万歳(ハイル・ファウスト)!」

「キッー!」

 右手を掲げ、敬礼する戦闘員達の姿がフェードアウトし、アジトは暗闇に包まれて行く。かくして悪の組織は、次なる作戦に備えるのであった。

短編小説でよかったんですが、章分けしたかったので連載で投稿しています。

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