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文才無くても小説を書くスレ参加作品

打ち水と差し水

 文才なくても小説を書くスレで、お題を貰って書きました。 お題:水をまきにやって来た

 打ち水はアスファルトには適さない。

 熱々に熱されたアスファルトではすぐに蒸発して、より蒸し暑くなるだけだから。

 けれど土のあるところでは、少し坂道を登って広場の周りをぐるりと木々に取り囲まれた山の入り口ともいえるところでは、地面は無闇矢鱈に熱くなることもなく、吸われた水は少しずつ少しずつ蒸発しては気温を下げる役に立つ。

 そしてその冷えた空気は、打ち下ろすような山の風に乗って、私の家の周りを癒してくれる。

 だからいつしか、私はもう夏になるたびに我が物顔で、その神社に打ち水しに行くようになっていた。

 ついでに笑顔が優しい神主さんにも癒されに……。

 まだ私が幼い頃に、既に青年と言うには少し若いものの大人に近かった神主さんの、水を差すじゃなくて水を撒くだよと言って苦笑しながらも頭を撫でてくれた思い出は、今でも大事な宝物だ。

 もう私は大人になってて、気軽に頭を撫でてもらえる関係ではなくなったけど、それでも水を撒いていれば、今でも声は気軽に掛けてくれる。

 由緒は合ってもしっかりとした参拝客は少ない。むしろ、ピクニックや散歩の寄り道や休憩所としてよく使われている。

 そんな風でも人が来るのはいいことらしいので、軽く掃除も手伝ったりしていた。

 だからその日もそのつもりだった。

 早くに目が覚めたから、早くに神社に行ってみよう。

 そう思っただけだった。

 早朝の風は普段よりももっと涼しくて、普段よりももっと緩やかで。寝起きの頃の鳥の声も普段よりも高くて静かで。

 神社は自然の音に囲まれているのに静謐だった。

 その神聖さすら覚える風情の中で、向かう先の神社に見えるのはは、あいかわらず穏やかで優しい顔の神主さんという男が一人と……女も一人。

 誰?

 誰その女?

 ふ、ふーん、綺麗な人ですね。

 そうとっても”お化粧が”きれいな人。

 そりゃ、確かに私には色気なんてありませんよ。ないですよ。

 今だってスニーカーですよ。ホットパンツを履くだなんて恥ずかしいから、ジーパンはしっかり足首まで伸びてますよ。

 それでも毎日坂道を登ってるだけあるんですよ。そんな必死に見せなくても、きっちり無駄な肉なんてないんですから。ええ、無いんです。見せないだけで、私も足だってすらっとしてるんです。

 上はTシャツだけで悪かったですかね。憚りながら、これでも普通のTシャツならお臍がでちゃうくらいあるんですよ。

 ただ、ほら。それだと恥ずかしいじゃないですか。だからその、男の人のLLサイズを買って来て敢えて出さないようにしているだけなんです。お腹だってすっきりしているんです。出さないだけで出せないようなお腹じゃないんです。

 それにほら、こういう純和風のお社にそういう今風の髪の色もいかがなものかと思いますよ。

 私はもうこの自然との調和の中にしっかり溶け込めるように、いっつも髪の手入れは怠っていませんから。もうツバキですから。TUBAKI。

 緑の中。色とりどりの実や花の中、そして秋と冬の茶色や白の中でも目立ちつつ目立ちすぎない丁寧な黒色ですから。何もしてない黒髪じゃないですから。

 だからそう。一見、神主さん個人とは似合いの雰囲気を出していても、うちの神社の雰囲気とは合いませんから。

 いえ、まだ私の神社ではないんですけどね。でも雰囲気が違いすぎますから。綺麗なのは認めますけど、合いませんよね。

 大体、草木の近くで足を露出させるなんて虫刺されとか気にしていないんですかね。駄目ですよ、まだ若いからってそんなに油断しては。

 ……って、そうですよ。

 若いんですよ。私より。きっとまだ十代ですよ。年齢。

 神主さんがそんなに慌ててたのは、その子が若いからですか?

 神にお仕えする立場でも若さがいいんですか。そうですか。

 でも、私だって若いんですよ。大学を出たばっかりですからね。

 文化人類学のフィールドワークで一年使いましたけどね。まだクリスマスは迎えてませんから。半額値引きセール品じゃありませんから。

 むしろ、しっかり歩いて磨き上げた身体は今が最高ですから。無理なトレーニングでも不摂生な食事制限でもありませんから、そうそう衰えたりもしませんよ。

 若さでは負けても、身体の若々しさでは負けませんから。

 だからちょっと、私が近づいていこうとするだけで慌てないでくださいよ神主さん。

 なに余裕ぶった微笑を浮かべているんですかそこのお嬢さん。

 ええ、私は水を撒きにきましたから。水を撒くんです。

 いえ、むしろ初心に戻りましょうか。

 何をするのってその子に聞かれたらこう答えてあげます。

 今度は違うって言わせませんよ、神主さん。

 私は水を差しにきましたって言うんだから。




 いくつか貰ったお題の内の一つを、少し調理してみました。


 彼女の恋が実るかどうか。その先は、皆様の心の中に……。


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390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/18(日) 07:23:42.92 ID:2+dlzNWy0

もう少し、いくつかお題下さい

391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/18(日) 08:11:27.80 ID:cNUD/zxbo

>>390

穴ボコ

水をまきにやって来た

さようなら

399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/19(月) 00:55:01.78 ID:Oit7IsLn0

>>391-392

把握しました

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